軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

精霊魔法というもの ㉒

ドネルクさんがテツさんたちに仕事を振った本人なのだろうし、仕事内容を知っていて当然か。

冒険者ギルド内の仕事内容や業務の流れにも興味は有るけど、私はもっと興味の有るものがある。

メイラー子爵領追って、ウォーレス領から西へ行った辺りの領地だったよね。

確か、ウォーレス領へ来たテレサが王都への帰還ルートとして予定していたけど、旧コーニッツ・旧ムーア領をウォーレス家が陥落させたことで、“遠回りする必要はなくなったよね”と帰還ルートから外された“保守派”の領地のはず。

ウォーレス領内西部の鉄鉱山が有る山々と連なった山地の麓にある領地で、牧畜が主産業なんだっけ。

「・・・獣害って?」

「放牧地を荒らす牛と家畜を襲う鳥だったか」

私の質問に答えたテツさんが首を傾げる。

自分で請けた仕事なのに、よく覚えて無いんかい。

この人、大雑把そうだものなぁ。

まあ良いや。私が興味あるのは、どんな生物が山で獲れるのかだし。

「・・・それって魔獣?」

「いいや。普通の野生動物だ」

「・・・あ~。コウモリみたいな感じかぁ」

私、森の外の動物って、まだ獲っていないんだよね。

地球の動物とこっちの世界の動物の違いも把握していないし。

こっちの世界オリジナルの野生動物が居るなら、どんな味のお肉なのか味見してみたい気持ちも有る。

私の想像にテツさんが嫌そうに顔を顰めた。

「まさか、・・・あんな仕事じゃねえだろうな?」

「違う違う。高く売れる肉が採れるから普段なら引き受ける冒険者が居るんだがな。コウモリほど臭いの酷い野生動物なんて、そうは居ないから心配するな」

嫌悪感を顕わにしたテツさんに、ドネルクさんも嫌そうにパタパタと手のひらを振る。

ほほう。美味しいお肉なんだ?

牛肉と鳥肉かぁ。

飼えないのかな?

他所様の領地だから勝手に狩猟は出来ないだろうけど、興味あるなぁ。

「あれは本当に酷い臭いでした」

テツさんにコウモリ駆除の経験が有るってことは相棒のケイナちゃんも経験が有るってことらしく、ケイナちゃんも嫌そうな顔で首を振る。

こっちの世界のコウモリって、そこまで臭いのか。

私も一度ニオイを嗅いでみたく・・・、は無いな。

何かを思い出した様子でテツさんがドネルクさんに目を向ける。

「そういや、クランの件ってどうなってんだ?」

「今のこの件で保留になっていた。俺から陛下へ報告を上げての判断だな」

ほう? クラン?

ゲームとかファンタジーもので聞くようなアレかな?

聞き覚えが有るだけで、それがどういうものなのか私はよく分かっていないけど。

ドネルクさんの答えから察するに、テツさんが結成を希望して王様が判断保留にしてる?

私が質問を口にする前に、私と同じ疑問を抱いたらしいルナリアが口を開く。

「“くらん”って、何?」

「冒険者パーティーの集合体だ。効率良く多くの依頼をこなせる仕組みでは有るんだが、過去に色々と問題を起こした連中がいて王国では結成を禁止されていた」

「「へぇー」」

ルナリアと一緒に私も声を上げた。

国家権力の行使で強制的に解散させられたのかな?

国家的に禁止されるような問題って、一体、何をやらかしたんだろうね。

小グループの集合体ってことは、仕事に合わせてメンバーを入れ替えるとか、そんな互助システムっぽい?

組合(ギルド) 自体が互助システムでも有るのだから、大グループの中の小グループで互助機能に違いが有るのかも。

そんなものをテツさんは復活させようとしている?

元特務魔法術師としては問題を起こしたシステムの復活に無関心では居られなかったのか、お母様がテツさんに厳しい目を向ける。

「何の目的で結成するつもりだ?」

「人員の育成だよ。いちいち逃げ出されちゃ、この国も困るだろ。俺たちも身を守る戦力が必要だしな」

「ふむ。一理あるな」

テツさんの言い分にお母様も思案顔になる。

大事なときに逃げ出すのでは、短期出稼ぎの外国人労働者と変わらないものね。

テツさんたちは、きな臭くなっても逃げ出すつもりがなかったわけだ。

いや。簡単に身を寄せられる逃亡先が無いからこそ、有事にも戦力に数えられる人員を自前で育てようってことかな。

逃げ場が無いエルフ族の立場ならではの事情だね。

「ああ~。肩の荷が1つ下りてホッとしたぞ。フィオレの嬢ちゃんに頼んで正解だった」

業務の進捗確認で全ての仕事が終わったのか、ドネルクさんが脱力して首を回す。

フィジカル最強って言われていたぐらいだし、ドネルクさん自身も脳筋のはずだものね。

頭も使える脳筋かぁ。

お父様と仲が良いのも、”同類相哀れむ”ってヤツ?

頭脳労働も出来る処理能力が有るから重席に就いていたのだろうけど、デキる人に仕事が集中するのは世界が違っても同じなんだなぁ。

立場が変わっても心労がのし掛かっているらしいドネルクさんを気遣うように、お母様が声を掛ける。

「メシは食っていくだろう?」

「そうだな。昼食後に出発しても、今日中にサボット領には入れるだろう」

「直ぐに用意させよう」

お母様の合図で厨房へ向かうのだろうミセラさんたちが退室して行って、お母様も肩の力を抜いている。

「・・・んー」

まだ何か話しておかないといけないことが無かったっけ?

記憶を探れば、すぐに答えを思い出した。