軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

エンカウント! ㉞

100人からなる魔獣討伐部隊は、制圧戦と前領主家断絶の粛清で人員が減って閉鎖されていた兵舎を使用することで野営を免れた。

ついでに言えば、私たちも悪趣味な上に縁起が悪い領主館で宿泊するよりもマシという理由で兵舎に泊まった。

兵舎の方が領主館よりも森に近かったしね。

そうして一夜明けた早朝、準備を整えた私たちはワナを設置するために森へ突入する。

まだ3の鐘が鳴る前だから、1日で一番冷える時間帯だね。

いくら暖かい王国の気候でもこの時間帯は外套を羽織っていないと肌寒い。

ジアンさん率いるアスクレーくんの小隊が後で合流する予定になってるんだけど、丁度レティアの町を出た頃かな。

2時間後ぐらいに新領地へ到着するとして、そこから私たちを追って森へ入るなら、合流できるのは4の鐘を過ぎた頃だろう。

ビシッと整列しているピーシスガードとわらわらと集まっている猟師さんたちの前で訓示を行う。

「・・・先ずはワナに使う蔓を確保しに崖を目指すよ! そこから崖上へ上がってワナの設置に取り掛かるからね!」

「「「「「おう!!」」」」」

気合い一杯な返事を聞き届けて部隊長にバトンタッチする。

「ルナリア」

「じゃあ、出動!!」

「「「「「おう!!」」」」」

先頭を切って踏み込むのは、ビシッと森の入口を指したルナリアと私だ。

昨日もだけど部隊指揮の訓練も兼ねているからルナリアが部隊長で私が参謀役。

お母様たちやドネルクさんも居るけど監督役と補佐役がメインで私たちが部隊を率いなきゃいけない。

この辺りは次世代育成の面だけでなく、魔獣討伐に関してはワナ猟も含めて私がエキスパート扱いされているせいかな。

少しずつ部隊指揮に慣れて領軍の信頼を積み上げ、お母様たちの信頼も積み上げていく。

いつの日か私たちがバトンタッチして領地警衛と国境防衛の責務を引き継ぐことになるからね。

それを理解しているからこそルナリアも気合いが入っている。

「フィオレ! 索敵よろしく!」

「・・・りょうかーい」

ルナリアからの丸投げに承諾を返す。

まあ、索敵は町を出る前から始めてるんだけどね。

南下してきたバイコーンとバンダースナッチとイエーティの気配を察知してか、昨日から触角ヘビは1匹も索敵に引っ掛からない。

採掘場サイズのバイコーンも索敵に引っ掛からないけど、採掘場周辺の森は迷宮化している疑惑が有るから、新領地周辺の森にも出没するのか定かじゃないんだよ。

お母様たちの認識では採掘場サイズのバイコーンは“亜種”らしくて、普通よりも小さいらしいし採掘場にしか出ない可能性も有る。

採掘場で獲れるバンダースナッチも、どこから来ているか不明なままコンスタントにワナに掛かってるしね。

極論すれば、採掘場で獲れるバンダースナッチも迷宮産の可能性が有る。

というのも、袋小路の狭い迷宮でも、本当に魔物は無限に“湧き続ける”ものらしいんだよ。

いつか行きたいと考えていた死霊系の迷宮がその典型例なんだってさ。

迷宮がどんなもので、迷宮の魔物がどんなメカニズムで発生するものなのかが分かっていないから、「迷宮化」という仮説が一人歩きしている可能性も有るんだし、結論は出せないんだけどね。

迷宮で熊が無限に湧き続けるなんて事態は、この世から熊を絶滅させたい私にとっては悪夢でしかない。

永久に奴らを滅ぼせなくなるじゃん。

新領地周辺の森まで迷宮化していないことを心の底から祈るよ。

索敵を続けながら時折雑談しつつ1時間も進んだ頃に、前方を指したルナリアが声を上げる。

「崖が見えてきたわ!」

「・・・今のところ新たな痕跡はなかったね」

昨日も崖下でバイコーンの足跡を見付けるまでは、何も見付けられていなかったっけ。

もしかしたら、と私も考えた仮説をルナリアが口にする。

「崖が有るせいかしら」

「・・・多少は有るのかもね」

高さ10メートルの崖を犬型の魔獣がポンポンと行き来できるのかと言えば、甚だ疑問を抱かざるを得ない。

山岳地帯に棲むオオカミや野犬が居ないわけじゃないけど、シカや山羊のようにピョンピョンと断崖を行き来することはないものね。

体格が大きな魔獣でも、その辺りに野生動物との違いがないから下りられる場所を探して崖上でウロウロしていたのだろうし。

「どう?」

「・・・無いね。昨日は来なかったのかな?」

昨日残して帰った階段を下りきった付近にバンダースナッチが下りてきた形跡はなかった。

最上段から数段分の踏み板を撤去した甲斐が有ったのか、それとも昨日は崖上まで来なかったのか。

崩落跡まで迂回すれば通れなくはないと思うけど。

それとも崖の段差がなくなる街道近くまで迂回したのか。

ルナリアに答えながら崖上を見上げる。