軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第2次領有宣言 ⑲

「ヨシ。急ぐわけではないが、報告書にまとめてくれ」

「・・・分かりました」

お父様の指示に諒解を返す。

私も記憶が薄れない内に書類にまとめておかないと忘れちゃいそうだしね。

ルナリアとピーシーズにも部隊指揮で感じた問題点や改善計画を提出させるかな。

お父様だけでなくドネルクさんやバルトロイさんでも苦労しているのだから、今のうちから書類に慣れさせておかないと将来的に苦労するだろう。

戦闘状況や推移をまとめた戦闘報告書は私が書くとして、領有宣言関係の書類はお母様がまとめるつもりみたいだし、砦からどのぐらいまでが領有を主張できる適切な範囲なのかが私では判断が付かない。

魔獣に関する考察は、私の見解をメモりまくっていたアスクレーくんにまとめて貰えば良いや。

区切りを付けるようにシェリアお婆様がポンと両手のひらを打ち合わせた。

「一先ずの話し合いは、これで終わりですね」

「ルナリア。フィオレ。アスクレー。軍衣が届いているから着替えてきなさい」

シェリアお婆様から後を引き継いだセリーナお婆様からご指名が掛かる。

おっ。私たちの軍服も作ってくれたんだ?

内戦前にお母様から地球の軍服デザインを訊かれて落書きを渡したことが有ったっけ。

何枚か描いて渡したと思うけど、その後、何も聞いていなかったから忘れてたよ。

戦争から帰還したお母様も乗馬服を着ていたしね。

「ぐんい?」

ピンと来なかったらしいルナリアはアスクレーくんと一緒に首を傾げている。

軍衣といわれて最初は私もピンと来なかったからね。

「・・・軍服だよ。軍服。お母様が着ているような軍人が着る服」

「軍人の服! わたしたちの!?」

理解に至ってルナリアのテンションが爆上げする。

新しいドレスを与えられるよりもテンションが高くなっているのが、格好良いお母様に憧れを抱いていたルナリアらしい。

王様からのご褒美もルナリアが希望したのは王家が秘蔵していた剣だったからね。

厳しく接しながらも直孫のルナリアに深い愛情を注いでいるセリーナお婆様が目を細める。

「正式な任務に就くことも増えたのだから、いつまでも乗馬服では示しが付かないわ」

「「おお~!!」」

これって、領軍の一員だと認めて貰ったってことだよね!

一人前に数えて貰えるようになるのは、中身が何歳になっても嬉しいよ!

私たちのテンションに付いて来られず置いてけぼりになっていたアスクレーくんが、遠慮がちに口を開く。

「僕―――、私もですか?」

「ピーシスの男になるのだから当然でしょう。あなたの将来にも期待していますよ」

シェリアお婆様が目を細めてアスクレーくんの背中を押す。

ミリア叔母様は実家へ戻すのを長男でも次男でも構わないと言っていたそうだけど、外孫とはいえ、シェリアお婆様がアスクレーくんに期待を掛けていることは、私も普段から感じ取れている。

フリーダムなミリア叔母様たちの放任主義が原因で、寄せられている期待が本人に伝わりにくいだけなんじゃないかな。

「はい!」

パッと表情を輝かせたアスクレーくんが元気に応える。

明確な言葉で伝えるからこそ実感が得られるものも有るんだろう。

可愛がってきた甥っ子の前向きな変化に目を細めていたお母様が、お婆様たちに目を向ける。

「私の分も届いているのか?」

「ええ。子供たちとお揃いの意匠のものよ」

「折角、みんな揃っているのですから、お披露目にしましょう」

おおっ。お母様もお揃いなの!?

私のテンションも爆上がりする!

いやあ。楽しみだなあ。

どのデザインになったんだろ?

「ヨシ。着替えに行くぞ」

「「は~い!」」

イタズラ小僧のような笑みを浮かべているお母様の号令に、アスクレーくんの手を引っ摑んで答える。

こういうのは、頭を空っぽにして乗っかっときゃ良いんだよ。ウエ~イ。

丸洗いまでされると髪を乾かすのに時間が掛かるってことで、髪にだけ櫛を通して整えられた後、真新しい衣服に袖を通す運びになった。

「ヘンな形のパンツね」

丸襟の白いシャツにズロース丸出しのルナリアが、軍服のパンツを広げて首を傾げる。

お尻部分が大きくて“ニッカーボッカーズ”みたいに裾がキュッと絞られた形状で、パンツの裾は乗馬パンツと同じくブーツの中に入れて捲れ上がりを防ぐ形みたい。

パンツの前は線ジッパーではなくボタンダウンで閉めるようになっている。

ちなみに、パンツの前―――、いわゆる“社会の窓”、あるいは“理科の窓”とも呼ばれる開閉部がボタンダウンなのは現代地球の野戦服も80年以上前の大戦期から変わっていなくって、強度が低くて壊れやすい線ジッパーが使われることは少ないらしい。

ネット掲示板で軍事オタクから教えて貰ったウンチクだけど、心底どうでも良い無駄な雑学だよね。

「お尻の周りに余裕が有ると、しゃがんだりするときに動きやすいんだよ」

「ふぅん? そういうことなのね」

ルナリアはスリムパンツの恐ろしさを知らないだろうけど、伸縮性のない生地だとお尻周りの余裕って大事なんだよ?

パツパツだとしゃがんだ拍子にお尻部分がバリッと裂けたりするからね。

そうなると純潔な乙女のズロースが裂け目からコンニチワしてしまう。

ピチッとしたパンツスーツが流行った頃に、男女を問わず悲劇に見舞われた人の話は何度も聞いたからね。

パンツを穿いてボタンを閉め、革ベルトで腰を締める。

編み上げブーツの中にパンツの裾を入れて靴紐を結ぶ。