軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第2次領有宣言 ⑦

板と板の間の空間に柱に見立てた細い円柱をニョキッと立ててみる。

鉛筆みたいな円柱形をイメージしてコピペすれば、下から押し上げられてズズズと生えてくるんだよ。

実際には縦横の比率でもっと短いものになるんだろうけど、構造を示す模型なんてものは分かりやすくたって良い。

円柱を複製して縦横を一定間隔に並べて生やしまくる。

「・・・この防壁の間に、こう、柱をたくさん建てれば、上から乗っかられても少々のことでは壊れないと思うんだよね」

私が示したかったのは荷重の分散で、重たいビルの地下にも同じように何十本もの柱が建てられている。

生け花に使う剣山のように林立した柱の上に天井に見立てた板を作って水平に置き、多数の柱を内包する箱状になった模型を指し示す。

「・・・壊してみて」

「えっ? 壊すんですか?」

エレーナさんが目を丸くする。たった今、完成したばかりの模型を壊せと言われれば、そりゃあ驚くよね。

「・・・うん。強さを確かめてみて欲しいだけだから」

「じゃ、私が」

エレーナさんが戸惑っているうちに別の人が挙手した。

壊させるのが目的で作った模型だと聞いて名乗りを上げたのは、力自慢のディーナさんだ。

「・・・どうぞ」

「ふんっ! ―――、おお?」

猫パンチのように上からベシッと叩き掛けたディーナさんの平手に、模型はビクともしない。

この構造はダンボールと同じで縦方向の荷重には滅法強いからだ。

まあ、ここまでは予想が付く人の方が多いだろう。

「・・・今度は横から行ってみて」

「分かりました。―――、ふんっ!」

今度は掌底―――、相撲取りのような突っ張りで押しに行ったディーナさんのパワーに、壁と柱がベキボキと薙ぎ倒される。

ただ、半分を超えた辺りで、倒れ込んだ瓦礫に滑らされてディーナさんの突っ張りが上方向へ逸れた。

戦国武将の”3本の矢”じゃないけど、本数が有って荷重が分散すれば細い柱でもそこそこ耐える。

ディーナさんの腕力は誰もが認めるところで、この結果にはお母様も目を丸くした。

「ほう。意外と耐えたな」

「・・・この2重防壁の内側ってぐるっと1周できるよね? だったら、一部が破られても回り込んで逃げられる。一度に倒壊せず逃げる時間を稼げれば良いんじゃないかな」

消極策に見えるかも知れないけど、絶対に破られたくない河岸の防壁と違って、ダンジョンを取り囲むこっちの防壁は目的が違う。

「魔獣だけを相手にする砦だからか?」

「・・・うん」

意図を問うお母様に頷いて返す。

極論すれば、こっちの防壁は破られたって構わない。

中に居る人たちが無事ならそれで良いんだよ。

「・・・ガルダもドラゴンフライも空を飛ぶ魔獣だし、半壊した建物の中へ首を突っ込んでまで追い掛けてくることはないと思うよ」

「確かに、そうだな」

私の予測に頷いたお母様がエレーナさんたちに目を向ける。

「どう思う?」

「有りですね。柱だけなら手間が掛かりません」

「数は多くても手分けすれば早く簡単に作れます」

「箱だけ作ってしまえば、後は駐留部隊が使い勝手の良いように手を加えるでしょう」

エレーナさんとノイエラさんが意見を返して、イディアさんも頷いている。

「わたしも手伝うわ!」

「決まりだな。サッサと終わらせてレティアへ帰るとしよう」

ルナリアの参戦表明に目を細めたお母様の決断で進む方向は決まった。

単純で分かりやすい形状の物を作るなら、ルナリアに土魔法の訓練をさせる練習台にも最適だろう。

ついでだから、ピーシーズにも訓練させるかな。

土魔法が“紅蓮”のベースになっている可能性を思えば、無駄な訓練にはならないはずだ。

そうして、一夜明けた早朝からアスクレーくんを含めた新人さんたちは蜻蛉の体液と魔石の採取に駆り出され、お母様を筆頭とした魔法術師は柱を建てまくって天井を乗っける作業に勤しんだ。

高々、外周400メートルしかない建物だ。

建てる柱は縦横5メートル間隔でも200本に満たない。

お母様たち9人に私たちとピーシーズで7人。

バルトロイさんまで動員されれば魔法術師17人体制だよ。

午前中には作業が終わってしまってレティアへ向けて帰途に就くことになった。

蜻蛉やラクネの死骸?

そのまま放置して帰って虫が湧いたら大変だから、ダンジョンの大穴に放り込んだよ。

ラクネがダンジョンの中にまで死体を食べに入ると言うのなら、もうどうしようも無いでしょ。

乱暴な処理方法だとは思ったけど、ファーレンガルド領が最寄りの死霊系ダンジョンに入ったことが有るドネルクさんとバルトロイさんによると、ダンジョン内に死体を置いておくとほんの数日間で吸収―――、というか、分解されて無くなってしまうものらしい。

ホントにぃ?

ちょっと眉唾ものだと思うんだけどなあ。

ファーレンガルド家の次男坊であるアスクレーくんも、そう聞いているそうだ。

だったら、ということで、魔力の手で片っ端から素材回収済みの死骸を“処理”した。

「各小隊、出発準備を完了しました!」

「じゃあ、帰るわよ!」

「「「「「おうっ!!」」」」」

昼食を摂って時刻はお昼過ぎ。

数日前にレティアを出発したときよりも自信に満ちて図太くなった新人さんたちが、総大将ルナリアの号令に応える。

個々の背嚢の上に体液が詰まった壺を括り付けられた隊列の先頭に立つのは私だ。

問題なく荷馬車が通れる道幅4メートルで、ガチガチに地面を固めながらレティアを目指す。

出来るだけ真っ直ぐに、どうしても邪魔になる木は引っこ抜いて横に退けながら、ひたすら街道を敷設していく。

復路も“焼却炉”で一夜を過ごしてラクネの魔石を回収し、私たちがレティアの町へ帰り着いたのは、渡河地点の新砦を発った2日後のことだった。