軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第2次領有宣言 ⑥

「ははぁ。荷馬車ごと建物内に乗り入れるわけですか。王城の騎士団区画みたいですね」

「・・・へぇ。騎士団区画って?」

「訓練場ですよ。ほら。アンリカさんとアリアナが決闘した」

王城なんて1度しか行ったことがないし聞き覚えのない名前だと思って訊いてみたら、普通に知ってる場所だった。

脳筋姉妹のケンカで騎士団にご迷惑をお掛けしたときだけでなく、お母様と私が魔法道具の起動実験をした訓練場のことらしい。

「・・・ああ。あそこって荷馬車ごと入れるんだ?」

「厩舎の一部も王城の建物内に有りますよ。臭いが籠もって凄いことになってますけど」

「・・・厩舎の臭いかあ。換気できないと籠もっちゃうよね」

苦笑しながら言っているけど、これはエレーナさんからの「同じようになるぞ」という指摘だな。

馬というものは生き物なのだから、食事もすれば排泄もする。

当然、換気できないと臭いで大変なことになるだろう。

その大変になった実例を王城で示してくれていたんだね。

「かなり広い空間が必要になるだろうが、そんな構造で建てることは可能か? 作業場も、となると倒した魔獣も屋内に搬入することになりそうだが」

「・・・梁と柱で天井を支えればイケると思うよ」

2重に設置された防壁と防壁の距離は、たかが20メートルしかない。

日本では日常的に見掛ける建設工事現場の風景を思い浮かべれば、専門家でもない私でもどんな構造なのかの想像ぐらいは付く。

柱と柱を横に繋ぐ梁の上に天井板を乗っければ、撓みを抑えて落ちてこないようにできるという基本だけ押さえて、不安を覚えるなら梁と柱の数を増やせば良いだけだ。

「しかし、魔獣を搬入するということは建物の中までラクネの襲撃対象になりそうだな。侵入をどう防ぐ?」

「・・・ 篩(ふるい) に掛けるように格子の目を小さくすれば、侵入してくるラクネの大きさを制限できそうだけど」

サメ撮影の檻だと格子の目が大きいからラクネが通り抜けることもできてしまうけど、ラクネの体格よりも格子の目が小さければ大人サイズの成虫は通り抜けられない。

卵から孵ったばかりのラクネの大きさがどのくらいかは分からないけど、通常サイズの蜘蛛なら、そこまでの脅威にはならないんじゃないかな。

手のひらサイズ程度に集られたぐらいなら簡単に払い落とすことができるだろう。

トリアさんも考えは同じようで、私の推考に頷き返してきた。

「踏み潰せる程度の大きさなら焼く必要も無いですね」

「それならラクネの襲来にも対応できるか」

トリアさんの意見にお母様も納得を示す。

人間と魔獣では何を防げば良いかのポイントがまるで違うからね。

でも、想定される複数種の魔獣に対策することは1つの建物でも十分に可能だろう。

何となく形が見えてきたよね。

私の頭の中で像を結び始めたイメージを形にしてみるか。

「・・・ちょっとテーブルの上を空けてくれる?」

当然の私の要求に、みんなの視線が私に集まる。

当然のことながら、意味が分からなくて首を傾げられている。

「何をする気だ?」

「・・・模型を作ってみようかと思って」

「模型だと?」

お母様も何のことかパッと思い当たらなかったみたいだね。

「・・・みんなと認識を共有するには目に見えた方が良いよね?」

「採掘場で馬を上げ下げする櫓を建てたときに作ったアレね?」

ルナリアが真っ先に理解を示してくれた。

採掘場の馬用リフトを計画したときにも作ったモックアップを、ノーアと2人で玩具にしてたものね。

「・・・そそ。あんなヤツ」

「ああ。アレか」

ルナリアのアシストでお母様も気付いてくれた。

あのモックアップは今もお父様が領主執務室に飾っているから、みんなが存在を知っている。

「テーブルの片付けを」

「はい」

ミセラさんの指示でサーシャさんたちが片付けに取り掛かってくれる。

テーブルの上には、晩ご飯を食べ終わった葉っぱと串と、個々で携行しているマグカップが載っている。

葉っぱと串は廃棄するのだろうから回収するだけだし、マグカップは手に持ってくれれば良い。

先ずは、現況の一部を縮小サイズで再現してみようか。

全体を作ると面倒だから簡素化デフォルメした断面で良いかな。

「・・・現状は、こう壁が建ってるじゃない?」

形状をイメージして土のテーブルの一部をコピペすれば、タケノコが地面から生えてくるように、防壁に見立てた2枚の板がズズズとテーブルの上面に生えてくる。

平行した板の間隔は50センチメートルで高さは10センチメートルほどだ。

「・・・ドラゴンフライに備えて内側の防壁は分厚くするでしょ」

片側の板をコピペして3倍の厚さに太らせる。外壁に1メートルも厚みが有れば、体当たりされても少しは耐えてくれるんじゃないかな。

防壁を破られたとしても、身を隠す障害物がたくさん有れば逃げる時間は稼げるはずだ。