軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

毒にも薬にもならないが薬草は取る

そうしてファルコとショウの共同生活が始まった。

「やっぱり剣はやらなくちゃいけないの?」

「あきらめが悪いな、導師を見ただろう」

「見たけど」

「大きいだけじゃねえ、あの人も立派な剣士なんだよ」

「確かにたくましかった!」

立派な体をしていた。

「あのな、治癒師は教会にいるだけじゃないんだ。むしろ教会にいるのは見習いレベルで、力のあるものは狩りについていくことも多い。レオンを見ただろ。ポーションじゃ間に合わないこともある。できるだけすぐ治してもらいたいだろ」

「でも戦いたくないよ」

「うん、わかってる。それでもな、身を守るだけの力はつけておいて損はないだろ?」

「料理人とかになろうかな」

「それでもだ。治癒師は兼業でも駆り出されることも多い」

そういうわけで、ショウは結局剣の訓練をすることになった。と言っても素振りが中心で、時々ファルコが相手をしてくれる。

朝起きてファルコが狩りに行ったら剣の自主訓練、スライム狩り、お昼ご飯、休んで夕食の用意。

スライムのノルマは一日30匹。500ギルだから、一日15000ギル。6日で9万ギル。1日休んで、ひと月4週で36万ギル。大人でも2人で暮らせる額だ。レオンに頼んで換金してもらって、ファルコがこっそり管理していた。春になったらショウをギルドに登録させて、そこに預けるまでの一時預かりだ。

そうして7日目になると、レオンがたいてい導師を連れてやってくる。

導師とレオンの組み合わせでやってきたときは、足が治癒していることを隠さなくてもいいので、ファルコと剣の訓練をしていることがほとんどだ。ショウと導師はそれを眺めながら、けがをしたほうをすかさず治療する。レオンはブランクがあっても相当強かったのだろう、ファルコと互角の戦いをするので見ていて面白い。

ショウは導師に治癒のし方をゆっくり教わりながら、導師にレオンの治癒の話をしたりもした。

「ショウには特別な治癒の力があるのだと思っていたのだが」

「違いますよ、セイン様。考え方だと思う。レオンの時は、左足が体の記憶を忘れているのならば、右足の記憶をまねすればいいと思って。だからえっと、厳密にはレオンの左足は今、右足を反転したものなので、本当の左足じゃないんです。それでも、訓練次第では左足っぽくなるかなって」

「なるほど」

「左右対称の物ならこの考え方でなんとかなるけど、顔だってよく見ると左右対称じゃないでしょ?たとえば、目とかは機能は戻る可能性はあるけれど、前と同じではないというか。それに、ほら、心臓とか1つの物はどうしようもないし」

「それでももしこの考え方を治癒師が獲得すれば、治癒のできる範囲が一気に広がるかもしれないんだよ、ショウ」

「役に立つならこの考え方はいくらでも使ってください。専門の人が研究したらよい結果が出るかもしれないし。でも、すごく魔力を使った感じがしました」

「そこも研究だな。私の元気なうち、あと30年くらいのうちには結果を出したいものだが」

ちなみに、この話は導師の膝の上に座りながらしている。

「訓練をだまって見ているだけでは寒かろう」

と言って膝に乗せられ、ローブの中にくるみこまれているのだ。標準か。また、導師とレオンは薬草の採取も教えてくれた。

「せっかく北の森にいるんだから、薬草をとっておいてほしいといつも思ってたんだよ、ファルコ」

「ギルドはいつもそうだな。けど、同じ時間を使うなら、俺は薬草をとるより魔物を狩るほうが役に立つしな」

「確かに。だからショウに覚えてもらおうな、な、ショウ」

「うん!」

やっと覚えられる。剣と魔法の世界と言ったら、薬草でしょう。ショウはゲームでは、畑を作って薬草や木の実を育てるのが好きだった。それを99個ためる喜びと言ったらなかった。

この世界の薬草は、日本で言うヨモギに似ていた。ギザギザした葉は、やわらかく小さく、うらに白い毛が生えていて地面に這っていた。

「冬だからな、小さいし地面に這ってる。けど、冬でも魔物は発生するし、ポーションの需要は変わらない。街のそばで子どもたちも一生懸命とってくれてるんだが、いっつも不足気味でな。北の森は薬草が豊富だが、危険だから子どもは近づけないし、大人にとっては割のいい仕事じゃないし。ショウが少しでもとってくれると助かる」

「やる!」

「この小さい袋にな、いっぱいに詰めて500ギル。お前のスライム狩りに比べたら、よほど効率は悪いが。多少鮮度が落ちても構わない。一週間に一袋でもいいからやってくれるか」

「うん!」

片手に乗るサイズの巾着袋だ。それでもこれを小さな葉でいっぱいにするのは大変そうだ。それを10袋預かった。楽しみができた!

次の日から、剣の訓練をしてスライムを減らした後、お昼御飯の前後や余った時間を使って薬草取りが始まった。小屋の結界はかなり広い。温かくて体に合った黄緑色の上着を羽織ると、ショウはざるを持って外に出た。上着はきれいな色とフードがお気に入りだ。

「農家の人みたい」

とウキウキしながら薬草を探し始めた。地面に這っているからしゃがみこむ。ぐるりと見渡すと、あった!というか、地面が薬草だらけだった。冬で丈の高い草ははえていないのだが、それでも生えている草の下は、一面薬草で覆われていた。

「もしかして……」

歩いてきたところも薬草でした。踏んでた。ショウは何となくため息をつきながら、無心で薬草をむしり始めた。根は抜かない。葉の先をちぎり取ってざるに入れて行く。あっという間に山盛りになり、ざる一つで2袋分がいっぱいになった。洗うと傷むので、そのままだ。

「半径1メートルくらいしか動いてないのに……」

週末、10袋分を手渡されたレオンも遠い目をして、

「うん、ショウ、毎週10袋、ノルマな」

と言ってどっさり袋を渡していった。あれ、転生してもノルマが増えて行く。おかしいなあとショウは思うのだった。