軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

この世界で生きていく

レオンと導師を見送った後、ショウとファルコは持ってきてもらった荷物の整理をして、夕ご飯を食べた。今日はレオンがスープを持って来てくれたので、ショウのやることはあまりなかった。スープは鍋ごと町の食堂で作ってもらうらしい。

日本式にいえば源泉かけ流しのお風呂に入り、ついでにしっかりパンツを洗い、新しい少し大きめのサイズの寝間着を着た。すぐに大きくなるからと、レオンが大きめのものを買ってくれたのだ。もうファルコのシャツは卒業だ。

先に上がっていたファルコに頭を拭いてもらう。いい感じに温まって程よく乾いたショウを、ファルコはベッドの上に座り後ろから抱え込んだ。少し苦しいな、とショウは思う。

いつもはこんなことはない。一緒のお布団であまり話もせず、ただぬくぬくと共に過ごし、いつの間にか朝になる。

ずいぶん説教されてたもんな、とショウは苦笑し、自分を抱えこんでいる手をポンポンとたたいた。

それにしても、とショウは思う。女神に狩られて、転生して、10歳に戻って、知らない人に拾われて、スライム狩りをしている自分。癒しの技が使えた自分。

説教されてたファルコより、自分の方がよほど大変な状況にあるのではないのか。

本当は残してきた家族も心配なのだ。いずれ狩られると言っても、それで家族をなくした痛みが消えるわけではない。きっと悲しんでるんだろうな、母さん、父さん、沙耶子。母さん……大事に大事に育ててくれた。おもしろくて父と仲のいい母さん。来世まで共に生きる勢いなのに、

「とんでもない。来世は別の人を探すの。せっかく生まれ変わるなら、毎回違うことをしたいもの。あなたもそうしてね」

と言って父さんをへこませていた母さん。今の私の状況を見たら、きっと楽しみなさいと、お前が楽しければいいのよと言うだろう。のこされた自分については?

「私だって楽しく暮らすから心配しないで」

って言う、きっと。そうだ。生きて行かなければならない。そうしなければならないのなら、できるだけ楽しく。ショウはクスッと笑った。

「どうした、ショウ」

「ファルコ、鏡ってある?」

「あるぞ、洗面所に。ああ、高いとこにあるから見えなかったのか」

「あるって知らなかった。見てくる」

「待て待て、俺が連れてくから」

「いいよ、椅子があれば」

「いいから」

ファルコはショウを抱き上げると、洗面所まで移動した。灯りをつけてくれる。

「ほら、見えるか」

「わあ」

そこには確かに10歳の頃の自分がいた。ふわふわの真っ黒なくせ毛が、幼い顔のまわりに踊っている。手入れが面倒でストレートパーマをかけていたはずだが、元に戻っている。

目の色は明るい茶色。元の焦げ茶からずいぶんと明るい色になっている。顔も元はショウだが、この世界に合わせたのだろう。若干西洋顔になっているが違和感はない。

そのまま上を見ると、鏡の中にファルコがいる。私と同じだけど硬いくせ毛に、明るい茶色の瞳が不安に揺れていた。お兄さんみたい? お父さんみたい?

元の世界のショウと同じ年くらいに見える。同期の佐伯くんに少し雰囲気が似てる。自信のないところが。

どうして自信がないの? どうして不安なの?

ファルコの頬にそっと小さな手を伸ばす。ファルコはその手に頬をよせた。

女神が用意してくれた世話人? 違う。たまたま倒れてた子どもを拾っただけの他人なのだ。世話をする義務などない。

それなのに、離れたくないと、一緒にいたいのだと言う。ショウが離れるかもしれない、離した方がショウのためかもしれないと、不安になっている、優しい人。

ショウはもう一方の手もファルコに伸ばすと、ファルコの顔を自分に引き寄せた。

コツン、と額が合わさる。

「ショウ?」

合わせた額も、支えてくれている手も暖かい。この世界で生きていく。私を拾ってくれたこの人と。

合わせた額を離し、ファルコと目を合わせる。

「ファルコ、大人になるまで、よろしくお願いします」

不安に揺れていた茶色の目が、喜びと優しさにあふれる。

「任せておけ。ずっと一緒だ」

いやいや、大人になるまでだよ。