軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

自覚のなさ

それまでほとんど黙って話を聞いていたレオンだったが、話の区切りがついたと見たのか、皆を現実に引き戻した。

「ええと、サイラス。俺はレオン。ファルコと組んで深森の北の町でハンターをしてる」

「ファルコと組んでいるのか。世話になっているな。サイラスだ。平原のカナンで荒れ地の開拓をしている」

二人はがっちりと握手をした。

「こっちが俺の養い子。ハルだ」

「改めて、ハルです。ファルコとショウにはお世話になっています」

ハルも挨拶をした。

「おお、落ち着いて見るとなんだかリクに似ているな」

「そうですか」

ハルは両手で頬を押さえて、リクを見た。ショウもリクを見た。

「な、なんだよ。俺だって似てるかどうかなんてわからないぞ」

それもそうだ。

「そうだ、俺もちゃんとショウを紹介しないと。父さん、いや、サイラスと呼んだ方がいいか?」

「いや、かまわなければ父さんと呼んでくれ」

「そうか。父さん、こっちが俺の養い子のショウだ」

「ショウです。ファルコにはお世話になってます」

ショウも改めてあいさつした。

「本当に君たち三人はなんとなく似ているな」

深森の中で、平原らしい黒髪のショウとハルはそれだけで目立ち、よく似ていると思われていたが、平原の人にまで言われるとそれはそれでなんだか不思議な気持ちになる三人である。

「俺も最初は双子か年の近い姉妹だと思ったくらいだったが、確かにそっちの兄ちゃんもよく似た雰囲気だなあ」

宿の親父さんも感心したようにそう言うのだった。まあ、似ているというよりも、そもそもが違う世界の人間なんだから、補正がかかっていても元々の雰囲気が残ったのではないかと思われる。

「それから、この町の薬師、ロビン、は自己紹介済みだね。あと宿の親父さん」

ショウが空気になっていたロビンと宿の親父に注目を集めた。

「そうそう、そもそも宿をとるって話だったよな。二人で一部屋でいいね。空いてるよ」

「ありがとう」

これで一件落着という空気が一瞬流れたが、そんなわけはない。ショウはパン、と手を叩いて気合を入れた。

「さ、それじゃ、それぞれやるべきことをやらなきゃ」

「じゃあ、俺、帰ってポーション作るよ」

ロビンがさわやかに帰ろうと、ドアのほうに歩きだした。

「ロビン」

「……はい」

ショウの声に、ロビンはぎくりとして止まった。悪いことをしているわけではないのに、ショウの声になんとなく弱いロビンだった。

「明日からはどうするつもりなの」

「ああ、幸いあんたたちが薬草の場所を見つけてくれたからさ、薬草を採ってポーションを作る、この繰り返しだな」

ロビンは明るい顔で言った。さっきまではうんざりしていたようだが、元々薬師としてポーションを作ることが嫌いなわけではない。材料が不足せずに作れる見通しが立ったので、ロビンは満足していた。

「それじゃ駄目だよ」

「なんでだよ」

さすがにむっとしたロビンはショウをにらんだ。

「確かに、薬草を見つけてくれたのには礼を言うし、スライムの倒し方についても教えてもらえて助かった。けど、あんたは元々薬師ではないし、そもそもこの町の人間ですらない。なんで俺にいちいち指図をするんだよ」

「必要だからでしょ」

ショウは引かなかった。普段なら、こんな嫌なことを言われたらさっさと見捨ててしまっていただろう。そもそもおせっかいなどしない。しかも、本来の依頼はカナンから受けた物だけで、この町でやっていることはいわば善意だけだ。町長から受けた、スライムの怪我を治す依頼だけを受けて、さっさとカナンに行けばいい。

「必要って、どういうことだ」

「前に話したでしょう。ポーションが足りないっていう話。自分一人で、あるいは見習いと二人で、薬草を採ってポーションを作る。それだけで本当に、この町で必要な分のポーションができるかっていうことだよ」

「それは」

ロビンは頭の中で素早く計算した。確かにショウの言う通り、やっぱりポーションは足りない。だが、当座はしのげる。それでさえできなかったロビンにとって、まずはそれだけで十分だった。

「じゃあどうすればいいっていうんだよ」

「薬草は別の人に集めさせる。ロビンと見習いは、ポーションを作る作業だけをする。さらに、薬師の見習いを増やす」

ショウの言葉は的確だった。ロビンがそうなればいいなあと思っていて、でもできなかったことだった。

「そんなこと、できっこないんだよ」

「できるよ。いや、しなくちゃいけないんだよ」

「どうやってだよ……」

「それを理解するために、帰るなって言ってるの」

ショウには経験があった。最初に岩洞に行った時だって、怪我が多くても食べ物が足りなくても町の人は楽観視していた。それを変えさせたのは、導師と自分たちだったはずだ。

そして、今回も、町にとってまずい報告が着々と集まりつつある。

「だから今日は、最後まで私たちと一緒にいて。今日一日で状況が変わるから」

「……わかったよ」

ロビンは少しふてくされた顔で戻ってきた。

それをサイラスとリクは驚きの目で見ていた。

「ショウ、ハル、あんたたち、まだ年少組だろ? なんだかもう成人した人みたいだな」

「リク、あのね」

ショウはちょっとうんざりした。男の子だから、幼いの? リクとサイラスは、問題が大きいからここに来たんじゃなかったの? そう思いながら。

「深森の女は、こんな感じだろう。ライラもそうだった。自分でどんどん先に進んでいく」

ライラに似ていると言われてもあまり嬉しくはなかったが、ぼんやりしていると思われるよりはましだ。それでもそんなことを言うリクとサイラスを見て、深森の年少の友だちと比べた時、男の子だからと思ったことをちょっと反省した。

深森の子は男も女も、魔物に対して真剣だ。それに対して魔物が多めの岩洞の子どもたちだって、私が教えるまで薬草だって採ってはいなかったし、ましてスライムを倒すなど考えもしなかったではないか。

狩人ではない、魔物が身近でないというのは、つまりこういうことなのだ。

「リク、サイラスも、ロビンに話していることをよく聞いて」

ショウは二人のほうを向いた。

「今この町で起きていることは、魔物の増加に伴う怪我の増加。治癒師の不足。同じく薬師と薬草の不足による、ポーションの不足」

「カナンと、同じか」

サイラスの理解は早かった。ショウはうなずいた。

「そしてカナンの依頼は、治癒師を少しでも増やすこと。でもね、治癒師を増やしただけでは、魔物は減らないし、ポーションが増えることもないの」

その言葉がしみ込むように、ショウはゆっくりと話した。

「だから、治癒師を増やすことと同時に、魔物を減らすこと、薬草を採ること、ポーションを作ることを、ちゃんとやって行かなくてはいけないの。自分たちの町だけの力で」

ショウ以外誰もしゃべらない宿屋の食堂に、少しして椅子を引き、ドスンと座り込む音が響いた。

わかったとも何も言わなかったけれど、ロビンがショウたちと行動を共にするという意思の表れだとショウは理解した。まったく、自覚がなさすぎるんだから。