軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

動き始めた

「町の中の人は正直に言うと困っていないの」

ほら見ろという農場の子たちの冷たい視線を、デリラは気にせず続けた。

「でも、カナンの町の外の農場のほうは、スライムが多くて困っている。ポーションも足りない、ってことが大きいのよね?」

デリラがショウとハルに目で確認したので、二人は頷いた。

「そんな困ってるって知らなかったんだ。俺、時々でいいなら手伝える」

「俺、スライムの倒し方知りたい」

「私も薬草採取ならやってみたい。お花摘みみたいなものでしょ」

かなりの数の子が手伝いに手を上げている。

「でも、それがずーっと続くのはちょっと嫌だな」

「薬草採取したくない人はどうしたらいいの?」

それでも、乗り気でない人もいる。

「農場を回って、ポーションを届ける係、とか、いてもいいんじゃないのか。馬なら乗れる子も多いだろ。馬車がいいなら、父さんに頼んで、使ってない馬車を出してもらってもいいし」

意外なことに、そう発言したのはガーシュだった。確かおうちが運送会社だったと昨日聞いたような気がした。

「実際ポーションはどのくらい足りないのかしらね。とりあえず一つの家に一つずつ配るとして、いくつ必要かしら」

その時、パンパンと手を叩く音が響いた。若い治癒師の先生だ。

「みんな積極的で僕は嬉しい。けど、薬草採取を子どもがやるときは、確か三人組くらいがいいんじゃなかったかな、ショウ、ハル」

「無理にではないけれど、そのほうが安全です。あと、スライムが怖いけれど薬草採取は大丈夫という子も、スライムを狩ってくれる子と一緒だと活動できるし」

スライムがいなければ手伝えるという顔をした子も何人もいる。

「それなら、女子組のデリラだけでなく、男子組も代表を出してほしい。ガーシュ、今日はどうしたんだい。いつもなら真っ先に発言するのに」

薬草採取に来ている子どもたちがちらりとガーシュを見た。リクやショウの邪魔をしているのを見ていたからだろう。

「俺は今、自分がやるべきだと思う活動をしています。だから、薬草採取の指揮は取れないんだ。リク」

「え、俺?」

リクが急に指名されて焦っている。

「俺の代わりに、リクが代表になって決めてくれ。俺についてくる必要はないよ。少なくとも、これだけ参加人数が増えたら、その、深森の女子が、その」

ガーシュが言いにくそうにしていて、教室のみんなは自分のことのようにハラハラしているようだ。

「ショウとハルだけだと、教えるのが大変だと思うから」

「ガーシュ、お前」

二日前に、威張っていたお坊ちゃまはどこかに消えてしまったかのようだった。

「わかった。ショウ、ハル、俺、導師に話してみるよ」

「うん。お願い」

リクはショウとハルに確認を取ると、立ち上がった。

「俺、あんまりこういうことしたことないけど、少なくとも皆よりは薬草採取に詳しいし、あと、農場の知り合いも多いから。デリラに頭を使ってもらって、俺は体を使って頑張るよ」

「あら、リクもちゃんと頭を使ってね」

デリラにからかうように言われて、リクはちょっと赤くなり、教室はまた笑いに包まれた。

その日、三人の女の子と一緒に見習いに向かうガーシュを、ショウは呼び止めた。

「なんだよ」

ガーシュは目を合わせずに返事だけした。いろいろ気まずいのだろう。

「あのね、ガーシュ」

ガーシュは驚いて思わず落としていた視線を上げた。ショウから名前を呼んだのは初めてだ。

「あの時、叩いて転ばせてごめんね」

いくら怒っていたからと言って、手を出していいということにはならない。ショウはずっと自分の振る舞いを後悔していた。

「うん、いや、もういいんだ。俺も、言い方が悪かったと思う」

ガーシュが、まだ固い表情のまま、それでもちゃんと返事をしてくれた。

「けど、剣士だったんだな。どうりで力が強いと思ったよ」

「まあ、鍛えてるからね」

ショウはふんと力こぶを作って見せた。今だって毎日素振りはしているのだ。

隣でハルも力こぶを作って見せている。力こぶはできていないけれど。

「ちょっとハル、かわいいんだけど」

「私だって鍛えてるから」

「ぷっ、ハハハ」

硬い表情だったガーシュが思わず噴き出した。

「自慢するとこが違うだろ、君は魔術師なのに」

「魔法もね、魔物と戦うとき、一回で終わるわけじゃないの。だから、筋力と持久力は大切なの」

ふんと腕に力を入れるハルはかわいらしかったが、魔物と戦うというハルの真意に気づいた人がいたかどうか。

「いろいろ落ち着いたらさ、魔法、見せてくれよ」

「うん」

ほんの少し、仲直りできたような気がする。それからガーシュは、急いで女の子たち三人の後を追った。

「さあ、スライム狩り行こうぜー」

男子の声がし、

「準備不足だ。小さいナイフと、できればこのくらいの長さの棒を持って町はずれに集合だぞ」

と答えるリクの声がする。

「私たちは、今日は親の許可を取ることにする。明日から手伝うわ。外で遊ぶ格好じゃないし」

デリラたち女子組は慎重だ。薬草採取に行くのなら、そのくらい慎重なほうがいい。

外で遊ぶと言われて、ハルがはっと何かに気づいたような顔をした。

「そういえば、深森の服を頼まれていたけど、いい加減お店に卸しに行かないとね。どのお店だったかな」

ハルはアウラに、カナンの町の服屋にいろいろ卸してきてくれと言われていた。ザーウィンのお店だったら嫌だなと、改めて思うハルだった。

「なんですって」

デリラの首がぐるりと動いた。

「怖いよ」

ショウは思わず一歩下がった。

「それどころじゃないでしょ、まったく。どこなの、その店は」

ハルはポーチを探ろうとして、衣類のポーチは宿に置いてあったことを思い出した。ハルの初心者のポーチにはそんなたくさんの荷物は入りきらない。

「ええと、確かお店の名前は短かったの。ベラ、ベル……」

「うちじゃないの! ベル商会よ! 最近安く服を出す店が出てきて、うちも大変なのよ。早く届けに来てちょうだい」

「でも、あくまでついでのお使いだから。まずやるべきことをやってからだから」

ハルは流されない。

「もう。じゃあ、こちらから宿に取りに行くわよ。その深森の短いチュニックとズボンなら、草むらに入っても大丈夫って言う子が出るかもしれないわよ」

そう言うデリラの笑顔はさわやかだった。

「アウラ系だ」

「そうだね」

どこの町も女子はたくましいのかもしれない。