軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

歩みは遅い

「あの、俺、正直なところ、小遣いを稼げるなら薬草採取をしたい」

最初にやってきた男の子はそう言った。リクは嬉しそうに頷いた。

「できれば二人か三人組になったほうがいいんだけど、あてはあるかい?」

「ない」

「うん。じゃあ、一人でできるように、スライム狩りと薬草採取、セットで教えるよ。ナイフは?」

「持ってきた」

小さいナイフは、子どもたちはたいてい持っているので、新たに買わなければならないということはない。

リクはポーチから棒を何本も取り出した。

「昨日、うちの近くの丘の木立で作った」

感心するショウとハルにそのうちの何本かを渡し、それから、男の子が三人ほど集まったところで、彼らを連れて薬草採りに出発していった。

「やるね!」

「さすが!」

残ったのは女の子が三人だ。どうやら仲良しらしく、三人組になることは喜んで了承してくれた。

「ナイフはある?」

「ええ。長い棒もいるって聞いて、いくつか木の枝を拾ってきてみたの」

中の一人が長さの違う木の枝をポーチから出して見せた。

「すごいや。棒の長さはこれより長ければまあ、大丈夫だから、こっちの二本は使えるよ。こっちの短いのは危ないからダメね」

ショウは自分の棒を出して見せた。女の子はそれと自分の棒を真剣に見比べている。

「持ちやすいように、何かを巻いてもいいわね」

「いいと思う!」

工夫する気はあるようだ。

一人は怖がってできなかったものの、スライムを倒しつつ、薬草を採っていく。薬師ギルドから預かった袋を渡して、説明した。

「これいっぱいで五〇〇ギル。安いけど、一か月に一袋か二袋でも、ちょっとしたお小遣いにはなるからね」

「そのくらいでも、自分の小物が買えるもの。大助かりよ!」

ショウがちらりと見ると、薬草を採ってお小遣いを稼ぎたいと言っている子どもたちの服や小物は、やっぱり少しばかり古かったりつくろったりした跡がある。

北の町は小さかったせいか、貧富の差などなかった。あえて言うなら衣料品店の娘のアウラなどはよい服を着ていて、家にも家事を手伝う人がいたなとショウは頭に思い浮かべた。

しかし、アウラがお嬢様なのは主に本人の積極的な気質によるものであって、お金持ちだからではないし、服は店の宣伝でもある。現に年少の活動は他の子どもと同じことをしていたし、時間が余ったら薬草採りの他に、家業の手伝いとして染色に使う草花などを採っていたりもした。

誰もが動きやすい清潔な服を着て、お小遣いを貯めてお祭りの日には着飾ってお金を使う。

必要に迫られて、お金が欲しいという子どもはいなかった気がするのだ。

大きい町と言うのは難しいとショウは思う。

そして、それから数日しても、薬草採取にくる子たちは、一〇人以上には増えなかったのだった。ガーシュが来るとは思わなかったが、あてになりそうだった女の子たちでさえ、顔すらも出さなかった。

「ショウ、例の作戦はいつ実行するつもり?」

夜、ショウに話しかけてきたのはハルだ。

「女の子たちの、薬草採取した人だけに服や小物を分けようって言ってた作戦だよね。実は悩んでて」

宿の部屋で寝る準備をしながら、ショウはため息をついた。

「やっぱり? 私もショウがやろうってもう一度言ったら、止めようと思ってたんだ」

「ハルもそう思う?」

「うん」

最初に掲げた、一人でも薬草採取に参加してくれる人がいればいいというのは達成できた。何しろ毎日一〇人近くは参加してくれているし、意外とみんな慎重なので、けがをする子どももいない。

でも、深森の服や小物で気を引いて、もっとたくさんの子どもに薬草採取をさせても、それは本当に一時的なものになるような気がしたのだ。

「スライムやトカゲがいるとはいえ、深森よりは少ないし、大きな魔物本体もいない。こんな中でずっと暮らしていたら、なぜポーションが必要なのかなんて、実感はわかないよね」

「うん。なんだか星迎えの祭りまで、ここにいる必要があるのかなあって思っちゃう。エドガーのほうは、調子がいいみたいだし」

薬師のほうは、あの日がきっかけで、ポーションづくりがうまく回り始めたのだ。子どもたちが採っている薬草はもちろん役にたっているけれども、薬師たち自身が薬草を採るようになってきている。

「それでも、この町の家一軒ずつにいきわたらせるには、まだ何か月、下手すると年単位で時間がかかりそうだってエドガーは笑ってたね」

「笑えるくらいになってよかったけどね」

悪いことばかりではない。ショウとハルの作ったきっかけで、エドガーがやりやすくなり、薬師たちが動き出したならそれはそれでいいのだ。

「導師のほうも、ゆっくりとだけど、癒しの適性を再検査する大人が来ているみたいだし、様子を見てひどい跡が残っている人の治療を始めようかって言ってたしね」

そう言っているということは、まだ始めていないということでもある。

「大きい町だから、どんどん進んでいくかと思ったら、ずいぶんゆっくりだよね」

「ほんとだよね」

よく来る子どもたちも、薬草の採取はもうだいたい心配なくできる。

「いっそのこと全部リクに任せて、導師の手伝いに戻ろうかな」

それが本来のショウの仕事だ。

「それもいいと思う。私がもう少しリクと一緒に面倒を見るから、とりあえずショウだけ手伝いに戻ったら?」

「もう何日かしたらそうしようかなあ」

どうするにしても、一度まず導師に相談しないとならないと、ベッドに寝転がりながら思うショウだった。しかし、導師に相談する前に、面倒ごとがやってきた。

「あれ、追加の子どもが来るかと思ったら、大人も来るよ」

次の日、カナンの子どもたちと一緒に楽しく薬草採取をしていると、何人かの人影がやってくるのが見えた。背伸びしているハルが首を傾げる。ショウもリクも遠くを見てみる。

「あれ、ガーシュと仲間たちだ。全く興味なさそうにしてたのに、何の用だろ。大人は、誰だ?」

「リクも知らない人?」

「ん。と言っても、大体知らないけどね。ガーシュのお父さんだとしても知らないし」

「そっか」

いったい何をしに来るのだろう。