軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

いろいろな仕事

「ああ、あの子たちは平原の容姿だが、深森の子なんだ。それから、こっちはファルコ。俺の息子」

俺の息子といったサイラスの得意げな顔がおかしい。

「息子って、嫁さんが連れてったあの。あのきれいな嫁さんの。そうか深森のお人だったなあ」

宿のおじさんは驚きながらもいろいろなことをつなぎ合わせて一人で納得していた。五〇年も前の出来事なのによく覚えているものだ。

「それだけ深森のやつが珍しいってことなんだよ。あー、ほんと注目されるの大変だったよ」

エドガーが肩をすくめた。

「すまんな。薬師もせめて二人体制で派遣できればよかったのだが」

「いや、セイン様。深森も薬師をぎりぎりで回してるから、二人も出す余裕はなかったですよ。仕方ないです。問題はそれをこの町の奴らが今一つわかってないことなんですよね」

「ああ、エドガー。その話は後で詳しく聞く。夕食後部屋に来てくれないか」

「いいですよ。どうせこの宿屋にいるんだし」

一瞬、導師は眉をひそめた。なぜ薬師のところ、あるいは教会に泊まっていないのかということなのだろう。だがそれ以上追求せず、とりあえず宿に落ち着くことになった。

「明日は俺の家に泊まってくれ」

食事がすむとサイラスがファルコを家に招いている。

「わかった」

ファルコは素直にうなずいた。自分の育った家を見てみたいのだろう。

「みんな来てくれても大丈夫だよ。客室は少ないけど、屋根裏が広いからさ」

リクがショウやハル、それにレオンや導師も招いてくれた。

「屋根裏は心惹かれるね!」

「すっごい広いんだぜ」

リクが自慢そうだ。

「町にいる間、いつか泊まりに行かせてもらうかもしれないけど、明日は遠慮しとくね」

「そうか」

ファルコとサイラスだけにしてあげたいという気持ちをリクもわかってはいたのだ。

「あ、じゃあ俺は町に泊まったほうがいいのか」

「「なぜだ」」

ファルコとサイラスの声が重なった。

「え、だって二人きりで話すこととか」

「「別にない」」

見た目も相まって双子のようでショウはちょっとおかしくなった。

「カナンの町についたら護衛をする必要もないんだし、ファルコもレオンも少しくらいのんびりしてもいいのだぞ」

導師もそういうが、そもそも途中でだって護衛の必要はほとんどなかったよなとショウは遠い目をした。それはそれとして、ショウも言っておかなければいけないことがあった。

「ハルだって、そうしていいんだよ」

「私?」

ショウの言葉にハルがきょとんとした。

「今まで自然に私の手伝いをしてくれていたけれど、ハルはどちらかというと護衛の仕事で来てるんだから。働かせすぎかなあって思ってたんだ」

「え、私護衛の仕事で来てたの?」

ハルが驚いている。

「だってハル、治癒師としてもすごいけど魔術師としてはほとんど一人前だよね。学院も卒業してるし。卒業したら一人前なんじゃないの?」

「一人前はやっぱり成人してからだけどね。そうか、そういえば私、魔術院卒業してた」

「そういえばじゃないよ。もう一年以上前に卒業してたじゃない」

あきれたように言うショウも、実はすっかり忘れていたのだが、よく考えたらそうだった。

「まあ、でも私たちみたいに勉強に慣れていると、学院の授業そのものはそんなに大変じゃないんだよ。ショウでもリクでも、たぶん一年か二年で規定の授業は取れちゃうんじゃないかなあ」

「そうなのか。でも俺、実践はからきしだからな。そうか、一つの職業じゃなくても、いろいろ勉強してもいいんだな」

リクが初めてそれに気づいたという顔をした。そう言われてショウも、初めてその可能性を考えた。

「ショウほど魔力を使える同級生はほとんどいなかったよ。たぶんリクならもしかして、もっといけるんじゃないかな」

今現在、リクはそれほど魔法は得意ではない。しかし、魔力量が十分にあって、工夫する余地があるのだから、きっとうまくやっていけるはずだとハルは思うのだ。

「おう。ゲームは結構やったし、ラノベもまあ読んでたほうだったからな」

リクは自分も魔法が上達するだろうということに何の疑問も持っていないようだった。

「ショウがもし、魔術院に行ってみたいのなら、俺もついていくぞ」

ファルコが腕を組んで椅子にそっくり返っている。偉そうにしているが、言っていることはただの過保護な親のセリフである。

「ファルコ? 狩りは?」

「別に湖沼でもできるだろ。一年くらい働かなくても大丈夫だし」

確かに、一年どころか何年も働かなくても十分なだけ稼いでいるのをショウは知っている。そもそもファルコは狩りは熱心にするけれども、他に何も欲しがらないから、お金はたまる一方なのである。

「リク、リクが行きたいなら、俺も湖沼でも深森でも行くぞ。今回アンファに行ってみて思ったが、あっちこっち行くのも面白い。牛は誰かに預けるか売ってしまってもいいし、農場ごと貸してもいい。ハクとラクは連れて行けばいいしな」

「サイラス、いや俺は行くなら一人で」

「一緒に行こうな」

「あ、はい」

思わずうなずいたリクにみんな笑いがこぼれた。

一生一つの仕事をしてもいい。でも、二〇〇年もある人生なのだから、あちこち行っても、いろいろやってもいいのではないか。

そう思えた夜だった。

ただ、

「そろそろ俺の話も聞いてもらっていいですかね」

先行したエドガーの話を聞く仕事も残っていたのだった。