軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

67 願いをこめたおくりもの

「おおきい……けっしょうせきにはいりゃない」

6~7cm四方のもので出来た折り鶴は、出来上がりが元の大きさの約半分の3.5cmくらいだ。

わずかに大きいだけなのだが、結晶石に入れるならもっと小さくしないと、中でちゃんと羽の部分が広がらないのだ。

セルトさんに5cm四方のものと、4cm四方に聖布を切って貰って、さっきより時間をかけて小さく小さく作り上げる。

何度か作り直して、やっと出来たのは、4cm四方で作った、完成形が2cmくらいのちっちゃな折り鶴だ。

きっちり折るためにペーパーナイフとか細長いものを駆使して、細かいところまでこだわって、やっと満足するものができた。

「かんしぇい!!」

満足して手に腰をあてると、ローズ母様とディークひいおじい様が拍手して『がんばったな! おめでとう!』とねぎらってくれた。

『素晴らしいです!』とセルトさんが称賛してくれた。

「それではやるか」

そう言ってディークひいおじい様が結晶石と金色の聖布で作った折り鶴、そしてローディン叔父様の瞳と同じアメジストの小さな石を、魔術陣の描かれた紙の上に置いた。

「アーシェラ。魔術陣の上に手をかざして―――そうだ」

私の小さな手の上に、ディークひいおじい様が手をかざす。

すると、ひいおじい様に導かれるように、手のひらから何かが出ていく感じがした。

―――そして、魔術陣から金色の光が立ち上がって結晶石を包み込むと―――次の瞬間には、結晶石の中に金色の聖布で作った折り鶴とアメジストが中に閉じ込められたものが出来上がっていた。

「しゅごい!!」

―――魔術って、すごい。

魔法や魔術がない前世では、現象のすべてに科学的な理由があり、中に閉じ込める技法は科学的なものばかりだった。

でも、ここは前世とは違う世界。

電気も車も電車もない。科学がない代わりに、魔法や魔術が発展している世界なのだ。

「これはローディンも喜ぶだろう。なによりの贈り物だな」

「そうね。アーシェの手作りですもの。喜ぶわね」

ディークひいおじい様もローズ母様も、いい出来だとほめてくれた。

結晶石のお守りには、願いをたっぷり込めた。

戦争でけがをしないように、病気にならないように。

―――できれば、この結晶石がローディン叔父様の助けになりますように。

おそらくは、この結晶石は力を増強させるもののはずだ。

私の感じた通りであれば、ローディン叔父様の魔力を補助するだろう。

魔力戦は敵の魔術師との消耗戦でもあるのだ。魔力が先に切れた方が負ける。

ローディン叔父様がいくら強くても、もしかしたら敵はその上を行くかもしれない。

そう思ったらどんなに祈りを願いを入れても足りないくらいだ。

そして、戦争に行く家族はまだいるのだ。

「もっと、ちゅくりたい!」

「ん?」

私の声に、結晶石の入った箱に蓋をしようとしていたディークひいおじい様が顔を上げた。

「りんくおじしゃま、らいげちゅ、たんじょうび!」

「ああ。そうだったな。よし、リンクのも作ってもいいぞ」

希少な結晶石を使っていいとの許可が出た。よかった!!

「―――そういえば。来月は、おじい様もお誕生日ですわね」

なんと! それならディークひいおじい様のものも作らなくては!

「ひいおじいしゃま、おにゃじのでいい?」

さっそく金色の聖布を持つと、ディークひいおじい様がふわりと微笑んだ。

「私にも作ってくれるのか。ああ、嬉しいな」

「ねえ、アーシェ。母様の誕生日は再来月だけれど、いい?」

もちろんだ! ローズ母様は大事な私の母様なのだから!

「あい! かあしゃまのもちゅくりましゅ!!」

もちろん、母様にも貴重な結晶石を使っていいとディークひいおじい様も了承してくれた。

一度満足できるものを作れたので、コツは掴んだ。

思いを込めて、一折一折丁寧に折った。

リンクさんもディークひいおじい様も、ローズ母様も。

みんなみんな大事な人たちだ。

みんなが元気でありますように。

危険な目にあいませんように、と思いを込めて。

そして、リンクさんのものは美しい輝きの青水晶を、ディークひいおじい様のはローディン叔父様のアメジストとはカットの形が違う石、ローズ母様のは結晶石はティアドロップ型にして、バラの形のアメジストを入れた。

目の前で一緒に作ったので、誕生日にはまだ早いけれど、ディークひいおじい様とローズ母様には今渡すことにした。

首にかけてあげると、とっても嬉しそうに笑って、ぎゅうっと抱きしめてくれた。

この瞬間が大好きで愛おしい。

ディークひいおじい様の抱きしめる力が強くて苦しくて、ローズ母様に止められていた。

でも。喜びが伝わってきてとっても嬉しい。

セルトさんがチャームの入った箱を片付けると、テーブルの上には、結晶石の中に入れるには大きすぎた折り鶴と、失敗した折り鶴が数個残された。

「その、なんだ。アーシェラ。こっちのものはどうするのだ?」

「おおきしゅぎりゅ。しょれに、はちっこちゃんとできにゃかった」

きっちりと折れなかったところがあって、少しいびつなのだ。

「もったいなくてな。おじい様にくれないか?」

「どうじょ」

どうするんだろう?

私の了承を得ると、ちょっといびつな折り鶴を受け取って、ひいおじい様が再び魔術陣の紙の上に置いた。

「「??」」

結晶石の箱のなかにあった、紫色の布に包まれた大きい六角柱が集まってできた結晶石を取り出して置くと、慣れた手つきで魔術陣を発動させる。

―――すると。

「まあ。これはキレイだわ!」

「そうだろう。鳥が三羽、結晶石の中で飛んでいるようだ」

折り鶴が三羽。真ん中に大きい鶴、両脇にそれより小さくてちょっといびつな鶴。

失敗作なんだけど、それぞれ形が少しずつ違う金色の鶴が結晶石の中で飛んでいるようで味わい深い。

「ローランドにも見せてやろう」

ディークひいおじい様の瞳がイタズラっぽくなった。

それって幼稚園児のつたないお絵描きを他の人に自慢するのみたいだよね。

ねえ、ひいおじい様。ひ孫かわいさ(うれしい)で目が曇っていない?

セルトさんが微笑んで、ひいおじい様の傍に控えているのを見て、そういえばと気が付いた。

「せるとしゃん。あんべーるのおまもり、ちゅくるよ?」

セルトさんは、1年後、アンベール国に行くことに決まっていたのだ。

アンベール国に侵攻するクリスウィン公爵がセルトさんを指名したのだ。

「そうだな……。この結晶石は無理だが、別のものを用意しよう」

ディークひいおじい様がお守りになるものを作ることを許可すると。

「とんでもございません旦那様。私にはもったいのうございます」

セルトさんは辞退したけど、ふと思いついたように、胸に手を当てた。

「……ですが、お許しいただけるのであれば、私が持っている結晶石にさきほどの鳥を入れていただければ、なによりのお守りになるかと……」

「まあ、そうだな。結晶石をすでに持っているのであればその方がいい」

ディークひいおじい様が促すと、内ポケットから袋に入った結晶石を取り出して見せてくれた。

六角形で、透明だけど、ブルーが筋状に入っている。ルチルクオーツの針状のものが青になった感じのものだ。

本来針状のものは金色の物が多いのだが、青色のは珍しい。

「きれい!」

「ほう、珍しい結晶石だな」

「昔の主人からいただいたものです。出かけた先でこれを見た時に、私の青い目を思い出したのだとおっしゃって。―――私の宝物なのです」

ディークひいおじい様がふと目を閉じて、『そうか』と頷いた。

私や母様はセルトさんが以前誰に仕えていたか知らないけれど、ディークひいおじい様は知っている。

「アーシェラ。作ってやってくれ」

「あい!」

元気に返事をして、折り鶴を作る。

すると、ローズ母様が私の隣で一緒に作り始めた。

「ふふ。私もアーシェに作ってあげるわね」

器用な母様は、私と一緒に折り鶴を作り上げた。一度で出来るなんてすごい。

「ローズ、すごいな」

「ええ。ずっとアーシェが作っているのを見ていましたから。おじい様、ティアドロップの結晶石と―――」

「花の形に組み合わされたペリドットがあるぞ。それにしよう」

ティアドロップ型の小さな緑色のペリドットが五つ組み合わされて花の形になっていた。石自体がカットが美しくキラキラしていてキレイで、花の形になっていて、とってもかわいい。

思いがけずにローズ母様とディークひいおじい様からのプレゼントをもらった。

ふたりで魔力を入れて作ってくれたのだ。とってもうれしい。

そしてセルトさんにも。折り鶴と深い青色の石を入れて作り上げた。

作成は私とディークひいおじい様の魔力で。

セルトさんは 裸石(ルース) を持っていたので枠とネックレスチェーンをつけて身につけるようにして渡すと。

「ありがとうございます―――」

受け取った両手は少し震えていた。

「一生の宝物です」

なんだか、声も震えている。

「アーシェラが作ったお守りだ。来年のアンベール国侵攻はおそらく三国の中でも大変だろうが―――絶対に生きて帰ってこい」

「はい―――かならず」

セルトさんが深く頷いた。

―――その時。

「「ただいま戻りました―――」」

ローディン叔父様とリンクさんが外回りを終えて戻ってきた。

「「ん? なんだ、それ?」」

テーブルの上には、作ったばかりのネックレスが置いてあった。

―――あ。しまった。

ラッピングして誕生日に渡そうと思ったのに、ふたりに速攻で見つかった。

その後、感激したローディン叔父様とリンクさんにぎゅうぎゅうに抱きしめられ、頬ずりされたのは言うまでもない。

こんな幸せがずっと続くといい―――そう思わずにいられなかった日だった。