軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

383 チーム結成

三百八十三

ミラ達は多くの事を語り合った。真面目な話や笑い話に、ほろりとするような感動の出来事など。これまでの事を中心に様々な話題で盛り上がる。

「──とまあ、随分とあちらこちらに行かされて、余計に時間がかかったな。まったく、いい迷惑だ」

中でも特にソウルハウルの冒険譚は、波乱万丈であった。そして、その見返りとなる報酬『神命光輝の聖杯』の注目度といったら格別だ。

ソウルハウルが話す、その効果。それは医者や錬金術師、聖術士までもがひっくり返るようなものだった。

なんと、完全治癒である。どのような怪我や病気、毒、呪いの類までも癒し、五体満足の状態に回復させるというのだ。

だが一度使うと、再び使えるだけの癒しの力が溜まるまで早くても数ヶ月とかかるらしい。

なお、それを使って助けた女性の話になるとソウルハウルの悪態が止まらなくなったが、皆はその様子を、にまにましながら見守っていた。

更に続いて、一番の驚きを与えたのはラストラーダの話だ。

「何を隠そう、この俺、星崎昴こそが! ──怪盗ファジーダイスだったのですよ」

わざわざ席を立ち物陰に隠れたかと思えば、そんな言葉と共に怪盗衣装で再登場してみせたラストラーダ。ポーズも見事に決まっている。

「うわ、そうだったのか……」

その印象としては正反対ともいえる、ラストラーダとファジーダイス。そこに純粋な驚きを浮かべたのはノインだ。

また、エスメラルダやカグラなどは、凄い凄いと驚きだけでなく、その活躍に対する称賛を送っていた。

ただ、一人だけ少し違う反応を示した者がいた。

「うそ……ファジーダイス様がラストラーダ君だなんて……」

アルマだ。どうやら彼女もまた、ファジーダイスファンであったらしい。その正体がまさかの知り合いであり、本当は正反対の熱血ヒーローバカだったという事で、随分と衝撃を受けた様子である。

ラストラーダはというと、その驚きの反応に満足げだ。

とそうして一時停止したアルマはそっとしておき、話は進む。

ラストラーダが語る、怪盗ファジーダイスの活動。

その始まりは、子供達を救おうとしたアルテシアの仕業だった事。そして数多くの証拠、そして情報を集めて、遂には人身売買の大本であるトルリ公爵にまで辿り着き、これに制裁を下した。

ラストラーダがそこまで話したところで、二度目の衝撃が走る。

ここでトルリ公爵を監獄送りにした何者かというのが、怪盗ファジーダイスだと判明した形になるからだ。

ファジーダイス最後の仕事は、人知れずにこっそりと遂行されていた。そして、その成果によって『イラ・ムエルテ』の柱が一つ失われ、その完璧な体制にほころびが生じた。

そこから一気に突き崩したのが今の状況になるわけだ。

「ここまで大きな組織が裏に潜んでいた事に驚きはしましたが、だからこそ協力を得られたのも事実。当初の目標を達成出来たのも、そのお陰さ。アルマ女王にも感謝を」

これは何よりも、ファジーダイスに加えてニルヴァーナを始め多くの国が『イラ・ムエルテ』に対抗した事で勝ち取ったチャンスであるといえるだろう。だからこその言葉だ。

ただ、ファジーダイスの格好をしているからか、ラストラーダの仕草や言葉遣いは、ファジーダイスになっていた。

その様変わりぶりに、やれ演技派だ何だと笑い合うミラ達。だが、アルマは何やらうっとりとした目をして「私に出来る事をしただけです」などと照れながら答えていた。

正体がラストラーダだと判明したが、それでも構わないという考えに至ったようだ。要するに、キャラクター愛という類である。

その他にも、カグラが運営する五十鈴連盟の事、アルテシアと孤児院についてや、これまでにミラが遭遇してきた出来事なども加え語り合う。

飛び交う言葉と、無数の情報。その中には大陸中に衝撃を走らせるほどのものなども含まれていたが、これといって誰が気にするでもない。

そうして時間は楽しく、また騒がしく過ぎ去っていった。

ニルヴァーナにアルテシア達がやってきてから、数日が過ぎた。

その間は特に変わった事もなく、平穏な日々が続いている。

ミラは、これまで通りにイリスの護衛役として過ごす。ただ、若干変わったところもあった。

ヴァルキリー七姉妹達を護衛も兼ねてイリスの部屋に常駐させている事もあり、もはや心配無用とでもいった護衛状況。ゆえにミラは、護衛を任せてニルヴァーナ城の予備訓練場に入り浸っているのである。

決戦に向けて、様々な戦術や新技の開発に力を入れていた。『イラ・ムエルテ』のボスがいるという場所に、どれだけの敵が揃っているのかわからない。ゆえに天井などを設けずに、どこまで出来るかと限界に挑戦しているのだ。

また、ミラと共に術研究に明け暮れている者がもう一人。

それはソウルハウルだ。外に出れば、暇などいくらでも潰せるだろうイベントが盛り沢山である。

だが、お祭りといった類には興味がないようだ。アルマから許可を得て、ニルヴァーナの術研究施設に入り浸っていた。

なお許可の条件は、研究員達の相談役にもなるというものだ。

アルマ側からしたら、九賢者の知識を直接享受出来るという利点がある。そしてソウルハウルはというと、別視点からの見解や理論などが得られる利点があった。実に良好な関係だ。

加えてプレイヤー国家第二位だけあって、銀の連塔よりもニルヴァーナの施設はずっと資金が潤沢だ。

そのためかソウルハウルは研究員達をそそのかし、幾らか金のかかる実験などをこっそりと割り込ませていたりもした。

カグラは入れ替わりの術を存分に活用し、行ったり来たりの毎日だ。

五十鈴連盟の仕事で忙しそうではあるが、その合間を縫ってアルマに会いに来たり、お祭りのイベントを楽しんだりと実に活動的である。

加えて団員一号を存分に愛でるために、イリスの部屋へも毎日来ていた。そのため今ではすっかり、イリスとも大のお友達だ。

その関係もあってか、カグラも最近『レジェンド・オブ・アステリア』をやり始めたようだ。

団員一号曰く、既に団長よりも強いとの事だった。

アルテシアとラストラーダは、毎日が子供達の世話で大賑わいだ。

一日二日ではまったく見回り切れない程に広大な規模を誇る、このお祭り。メインの闘技大会以外のイベントが充実し過ぎている事もあり、毎日様々なイベントが開催されている。

すると当然、どれを見たいかで意見が分かれる事となり、複数の班が出来る。それを孤児院の先生共々、二人も引率しているわけだ。

朝から晩まで多くの子供達の面倒を見るのは大変である。ラストラーダも、相当に疲れた様子だ。

だがアルテシアは、日を追うごとに生き生きとしてきている。きっと子供達が、いつも以上に楽しそうだからだろう。それがアルテシアという人物である。

メイリンはというと、アルマが色々とスケジュールを調整した事もあって、既に予選大会の突破を果たしていた。

ただ、ほぼ最速ともいえるほどの突破具合であったため、暫くの間は試合がない状態が続く事となる。

当然、メイリンが大人しくじっとしていられるはずもない。

結果その解消役として、ノインが付き合わされていた。それでいてメイリンがいつもプリピュアのままだからだろうか、意外と満更でもなさそうなノインであった。

ルミナリアはというと、唯一公になっている九賢者という事もあって、ニルヴァーナ城を大いに賑わせていた。

中身を気にしなければ絶世の美女。それでいて大陸一の魔術士であり英雄。生きる伝説だ。

今回はアルマ女王が大会を盛り上げるためにゲストとして招待したという形であるため、ルミナリアは幾つかのイベントに参加していた。

イベントは、滅多にお目に掛かれない九賢者を見ようという観客で溢れ、ルミナリアもまたこれでもかとサービスするものだから大賑わいだ。

しかも、それだけに終わらない。ニルヴァーナ軍所属の術士隊の訓練にも付き合ったりする事もあった。ルミナリア対術士隊という方式での模擬戦だ。

術士隊は、少しでも多くを学ぶため。ルミナリアは、この後に待ち構える決戦に向けての準備として。模擬戦ながら、誰もが息を呑むほどの訓練が繰り広げられた。

それぞれが決戦に向けて思い思いに過ごしていたところ。遂にヒルヴェランズ盗賊団壊滅の報せが入った。

そこから更に数日後の事。遂に『名も無き四十八将軍』がニルヴァーナに到着する。

「わざわざありがとうね、ゴットフリート君。エリュミーゼちゃんとサイゾー君も来てくれてありがと!」

会議室にて、最後の一つとなる術具を受け取ったアルマは、そう言って三人を歓迎した。

「いえ、その、アルマさんのためなら、こんなのお安い御用ですよ!」

無遠慮な勢いはどこへやら。実にわかりやすい反応をみせるゴットフリート。そんなゴットフリートを、相変わらずなんだなと見つめるのはミラ達一同だ。

なお、ゴットフリートら三人以外はというと、そのまま周辺国に潜伏する盗賊退治に奔走中だ。

ヒルヴェランズ盗賊団の壊滅を掲げた、今回の作戦。最終的に本拠地は制圧し、頭目であるイグナーツも捕らえた。

だが問題は、調査の結果この盗賊団の一部が、各地の盗賊団に入り込んでいた事実があるという点だ。

残党がいては、壊滅とはいえない。ゆえにレイヴン達は、そこから更に盗賊狩りを継続していた。

この作戦に周辺各国が協力した真の目的は、ヒルヴェランズ盗賊団の壊滅だけではない。それをきっかけとして、他の盗賊団もアトランティスに掃除してもらおうという意図があってのものだった。

ゆえに、『イラ・ムエルテ』との最終決戦に参加出来るのは、三人だけとなってしまったわけである。

とはいえ、それぞれが一騎当千の猛者だ。頼もしい事に変わりはない。

「しかしまた話には聞いていたにせよ、何ともまた懐かしい顔ぶれでござるな!」

アルマしか見えていないゴットフリートに代わり、サイゾーはその場に揃った面々を見つめて声を弾ませた。またエリュミーゼも不愛想ながら、心なしか嬉しそうだ。

カグラにソウルハウル、アルテシアとラストラーダ。共に、どれくらいぶりの再会となるのか。なおメイリンは、現在呼び出し中である。

「久しぶり」

そんな言葉から始まったためか、そこから続く会話は決戦云々よりも先に、再会を喜び合う方へと流れていった。

「にしても……」

「いまだに信じられないでござるな……」

「でも、可愛いからよし」

それぞれに再会を喜び合う中で、アトランティスの三人が、まさかと注目するのはミラであった。

秘密にしたままでは決戦での連携もとり辛いだろうと、その正体について明かした結果、三人は当時をよく知っているからこそ、その変貌ぶりに驚く。

「あの爺さんが……」

「拙者も、そこまでの変装は不可能でござるよ」

「あ、ガーディアンアッシュ君出して。きっと素敵な寝心地」

とはいえ驚くものの、化粧箱の存在を知るためか適応力も高い三人。

ただ、やはりどうしてそうしたのかは気になるところのようだ。

エリュミーゼは既に興味もなさそうだが、ゴットフリートとサイゾーは、なぜそのような姿にといった目をミラに向ける。

「相当、気に入っていただろ? なん──」

「もしかして趣味でござ──」

二人は、その問いを口にし──ようとしたところで止めた。否、止められた。

理由は、ミラの目だ。

それ以上は何も訊くなとばかりに凄んだ目であり、更には既に魔眼と化しているではないか。

しかも魔眼から放たれる麻痺の仙術。将軍二人の術防御が相手では効果も薄いが、一瞬だけ言葉を遮る事は可能だった。

そして、そうした事で触れない方がいいという事を察した二人は、かのダンブルフに恨まれるような事はするまいと、そのまま口を閉じるのであった。

その後、一通り思い出話に花を咲かせていたところで、メイリンも合流した。小さな腕自慢大会で連覇中だったところを、ヘンリー・アダムスが見つけて、どうにか確保してきたようだ。

なお今のメイリンは決戦を控えているという事もあって、変装を解いた状態である。

ともあれ、こうして主要メンバーが全員揃ったところで、いよいよ話し合いは本題に入る。

まずは今作戦の鍵となる、術具の確認だ。

アルマがグリムダートに交渉して入手した、レンズ。

カグラがガローバのアジトから回収してきた、穴の開いた箱。

ミラがユーグストの隠れ家に乗り込んで手に入れた、地図。

ゴットフリート達がヒルヴェランズ盗賊団の拠点から回収した、赤い珠。

このどれもに複雑な術式が刻まれており、尋問で得た情報によると、それぞれを正確に組み合わせる事で、この術具は起動する仕掛けとなっている。

「あとは、これをここに……」

全員が見守る中、それぞれを組み合わせていくアルマが、最後に箱の隙間へと地図を差し込む。するとそれで全ての術式回路が繋がり、術具が起動した。

「ふむ、これまた定番じゃが……地図には何の意味があったんじゃ……」

「まあ、ただのパーツだな」

その効果を目にしたミラは、どういう事かと眉根を顰め、ソウルハウルはどこか楽しげに笑う。

術具の箱から出たのは、光だった。その光がレンズを通して線となり、赤い球を抜けると方向を変えて、ある場所を指し示したのである。

地図のどこかを指し示すのかと思えば、光の向かう先に、というタイプの案内だったようだ。

「方角からすると……この辺りね」

そう言ってアルマが別の地図上に印をつける。

場所は、ニルヴァーナの西側。そこに広がる海のどこかに、最後の標的がいるわけだ。

この術具については、カグラの術で訊き出した情報であるため、その結果は確かだろう。そして、だからこそ次の問題はそこに向かう方法であった。

「あとはこの光が、どれだけ先を示しているのかがわかればいいのでござるが」

術具の光をまじまじと見つめながら、サイゾーが呟く。

光の導きによって、進むべき方角は決まった。だが、どの程度進めばいいのかわかり辛いのが、このタイプの欠点と言えるだろう。

目標は海のどこか。ゆえに船で出たとして、距離が遠いほど時間はかかる。となれば、それだけ相手に接近を気付かれる恐れも強くなるというものだ。

「そうじゃのぅ。さほど遠くなければ、わしの召喚術で十分じゃが……」

ミラもまた、そこが重要だと同意する。

ガルーダやペガサス、ヒッポグリフ、そしてアイゼンファルドなど。本拠地攻めに行くメンバー全員を運ぶ手段はある。

空路ならば、海路よりもずっと迅速に作戦を進められる。

だが百キロメートルを超え、更に数百、千と遠い場所になると難しい。ガルーダ達の事もそうだが、乗っている側というのも長時間乗りっぱなしとなると、かなり疲れるものなのだ。

ペガサスで長距離を飛んだ経験があるからこそ、ミラは、どうしたものかとアルマを窺う。

自然とアルマに注目が集まる。すると彼女は、不敵な笑みを浮かべながら、ぬかりはないとばかりに告げた。

「それなら、もう準備を進めておいたから──」

日も暮れて、空が闇夜に覆われた頃。ミラは、ニルヴァーナの空の上にいた。

「まさかの期待以上じゃったな」

高くより見下ろすラトナトラヤの街は、夜にも負けぬとばかりに煌いている。それは人々の生活の光であり、また命の輝きにも似たものだ。

そんな光景を眺めるミラは今、飛空船の甲板にいた。

ミラも含めて、戦闘要員は十一人。これだけの人数で一度に敵の本拠地へ乗り込むには、やはり飛空船の速さこそが一番だ。

だからこそアルマにそれを期待したミラだったが、今回はそれ以上になった。

今ミラ達が乗る飛空船は、ニルヴァーナが所有する中で最も速度に長け、更には迷彩やマナ探知を誤魔化すステルス機能に特化した最新鋭の一隻だった。

現時点において、もはや理想的ともいえる移動手段である。ただ、甲板は全長にして二十メートルほどであり、飛空船の中では小型になるため若干窮屈というのが難点だ。

「しかしまあ、なんとも慌ただしい出発じゃったのぅ……」

徐々に遠くなっていく街の明かりを見つめながら、ミラは苦笑気味に呟いた。

それは、今より三十分ほど前の事。こういうのは迅速な方がいいと言うアルマの一言で、会議後直ぐに出発する事と決まった。

その際、僅かに用意された準備の時間で、ミラはイリスに暫しの間、留守にする旨を伝えた。

イリスは僅かに寂しそうな色を浮かべるも、直ぐに笑って送り出してくれた。

「これが終われば、ようやくイリスは自由の身になれるわけじゃな」

十分過ぎるほどに整えられたイリスの部屋。けれどもミラは、一緒に過ごす中で気付いていた。イリスが外で存分に遊びたがっている事に。

魔導テレビを観ている彼女の目は、そこで繰り広げられるイベントだけではなく、そこにある外にも向けられていたのだ。

「わしの全てをぶつけてやらねばのぅ」

この大陸に蔓延る悪、『イラ・ムエルテ』を打ち倒し、民の生活を守るため。そして何よりイリスのためにと決意を新たにしたミラは、進行方向先に見えてきた大海原を見据えるのだった。