軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

189 閃光

百八十九

古代地下都市七層目の最奥の手前にある長い通路。休んでいる間にマキナガーディアンを回復させないため、そこに時間差で突撃するように仕掛けておいた五十体のゴーレム。それらが全て、一瞬の内に消滅したとソウルハウルは言う。

原因はいったい何か。休憩場所として利用していた大部屋を飛び出したミラとソウルハウルは、『機械仕掛けの徘徊者』を警戒しながら現場に向かう。

そして幾つかの角を曲がり、あともう二つ曲がれば最深部というところで、二人は気付く。

「のぅ、何か焦げ臭くはないか?」

焦げ臭い。どことなく、空のフライパンを火にかけ続けた時のような臭いと漂う熱を感じたミラ。

「ああ、俺もそう思った。これは何の臭いだ」

ソウルハウルもそれを感じていたようで、鼻を鳴らしながら前方を睨んでいた。明らかにそれは、今ミラ達が向かっている先から漂ってきている。

これまでにはなかった違和感。向かう先で何かが起きた事は確実だとミラ達は確信し、より慎重に歩を進めていく。

そうして二つ目の角を何事もなく曲がり、いよいよ角が後一つとなった時、ミラとソウルハウルは、その先、最後の曲がり角である突き当りの壁を見て、ぴたりとその足を止めた。

「これは、なんとも。何がどうなってこうなったのじゃろう……」

「わからないが、どう考えても普通じゃないな」

白い金属質の壁が延々と続く七層目。しかしミラ達の進む先、その突き当りの壁は、どういうわけか真っ黒に染まっていたのである。

「炎を使うものなど魔法戦タイプのスケルトンくらいじゃが、近くにおるか?」

黒く染まった壁。焦げ臭い匂いと僅かに漂う熱から、炎が原因ではないだろうかとミラは考える。そうするとこの七層目でそれが出来るのは、魔法戦タイプのスケルトンのみ。けれどソウルハウルは「いや、いないな」と首を横に振って応えた。周辺にいる不死系の魔物を察知する技能を持つ死霊術士。ソウルハウルは常にそれを調べながら進んでいたようだ。

「というより、あれからはそもそもマナの残滓を感じない。魔法や術の類ではないはずだ」

注意深く前方を見つめながら、ソウルハウルは更にそう断言した。

魔法や術。まず術とは最も有名である、体系化された九種の術の事をいう。そして魔法とはそれ以外、魔物や竜、精霊、そして一部の種族が扱う固有の力を指す言葉だ。

「ふむ……マナの残滓か」

魔法と術。それらを行使するには、必ずマナが必要となる。そしてそれらが使われた際、そこには一定時間、残滓が留まる。その有無を見分ける事によって、その現象に魔法や術が関与しているかどうかを判別出来た。

尚、マナの残滓を確認するには、『魔導の観察眼』という技能が必要になる。そしてこの技能だが実はゲーム時代には無いものであり、ここ三十年の内に開発された新技能だった。

というとつまり、先日手に入れた技能大全に新規で載っている技能だという事でもある。そういったところを優先的にチェックしていたミラは、その技能がある事を知っていた。そして習得難度はそれほどでもないため、ミラは既に習得済みだったりもする。

「ふむ、確かにマナの残滓は感じぬな」

この程度の技能は使えて当然。そんな態度で早速、前方の黒い壁を確認してみたミラは、当然分かっていますよといわんばかりに、どこか出来る術士気取りで、そう口にする。

「もっと近づかなければ詳しく分からないな」

その先の通路に何があるのか。ソウルハウルは、アイアンゴーレムを作り出すと、それを先行させるようにして歩き始めた。

「徘徊者も、炎は使わんかったしのぅ。新種でも現れたのじゃろうか」

ミラもまた、念のためにホーリーナイトを召喚し、それを伴い先へ進んでいく。

「新種か。あり得ない話じゃないな。色々な場所やダンジョンに行ったが、そこでたまに見かけた事もある。その中には時折、桁違いに強いものがいたな。で、そういう奴は大抵、ここのようなダンジョンの奥底にいるんだ」

新種。二人が口にするそれは、ゲーム時代には見られなかった魔物などの総称だ。どういう訳か、この世界が現実となった時期から、それらの目撃数が爆発的に増大したという話である。

大半の魔物や魔獣と一度は戦った事のあるミラは、新種と聞いて少し心躍らせる。けれど、今だけは勘弁してほしいと強く思った。

「何やら、余りこの先に進みたくなくなってきたのぅ……」

九賢者でも油断の出来ない『機械仕掛けの徘徊者』がいる七層目。そこに桁違いの新種がいるとしたら、それはどれほどの強さになってしまうのだろうか。

(この場所に千体のダークナイトは相性が悪いからのぅ)

ミラにとって切り札の一つである、軍勢召喚。しかし、通路ばかりのこの場所では、その力を最大限に活かせないだろう。巨体を持つアイゼンファルドも同じだ。

(まあ、先ほどの部屋が妥当じゃな)

いざとなれば、先ほど休憩に使っていた部屋まで誘い込む。ミラはそんな事を考えながら、慎重に通路を進んでいった。

「なんと……端まで続いておるぞ」

「依然、マナの残滓は確認出来ずか。何かに引火させたという訳でもなさそうだな」

最後の曲がり角の手前。そこに身を潜めた二人は、顔だけを半分覗かせて通路の先、ゴーレムを並べていた場所を確認した。そして、奥まで約五十メートル程の通路の全て、床に壁、天井までもが黒く焼け焦げているのを目の当たりにする。

「ふーむ、原因は何じゃと思う? やはり新種じゃろうか」

「まだ分からないな。けど、ここまでは一本道で、途中何とも出遭わなかった。とすれば、事の元凶はボス部屋にいるって事になるな」

未だ熱を帯び僅かに燻っている通路を眺めながら、ミラとソウルハウルは注意深くその通路の行き着く先を見据える。

そこにあるのはマキナガーディアンが護る七層目の最深部。もしもそこに新種がいるとしたら、双方を同時に相手取る事となる。だがそれは完全に愚策だ。

「とにかく何かがおったら、まずわしが通路奥まで釣っていこう。その間にお主が回復防止のゴーレムを設置する。とかでどうじゃ?」

「そうだな。それは良さそうだ。本当に新種がいたらの場合だけどな」

そう簡潔に相談して決めた二人は、早速、傍で待機させていたホーリーナイトとゴーレムに指示を出し、黒く染まった通路を進ませた。

重い足音を響かせながら、慎重に歩を進めていくホーリーナイトとゴーレム。そのずっと後ろの曲がり角の上下から顔だけを覗かせ、それを見守るミラとソウルハウル。

そしていよいよホーリーナイト達は、ゴーレムが並んでいた場所を何事もなく抜け、ボス部屋の入口にまで到達した。部屋から何かが飛び出してくるという妨害もなく、ここまでは順調だった。

しかし、だからこそ四十以上のゴーレム達に何が起こったのかは不明のままだ。

「まず、ゴーレムを先行させる」

ソウルハウルがそう言うと、指示を受けたゴーレムが一歩部屋に踏み込んだ。そして二歩三歩と、ミラ達が確認出来る場所を進んでいく。

と、その直後であった。ゴーレムが巨大な槍のような何かに貫かれ、瞬く間に破壊されてしまったのだ。

しかしミラとソウルハウルは、それを冷静に見つめていた。

「今のは、ただのマキナガーディアンじゃったな」

「ああ、あの脚による攻撃だな。見たところ、回復はしきっていないようだ」

圧倒的な破壊力をもって、ゴーレムを粉砕したマキナガーディアンの脚。僅かに破壊の形跡が残っている事から、まだ修理は完全ではないとわかる。その事に一安心しながら、二人は今一度通路の先を注意深く確認する。そこに、マキナガーディアン以外の姿はないだろうかと。

すると、その時だ。

「のぅ、何やらこっちを見ておらぬか?」

「ああ、俺もそう思った」

通路の先、そこの入口にいたマキナガーディアンは、そのまま戻らずに突如身を屈めたのである。どうした事かミラとソウルハウルは、ずっと高い位置にあるはずだったマキナガーディアンの胴体部分を目にしていた。

入口付近にいては、決して見えないだろう胴体部分だ。ホーリーナイトが入口に立っているため若干見え辛いものの、その様子はまるで通路のこちらを覗き込んでいるかのようである。

このような行動をするマキナガーディアンを初めて見た二人は、一体この行動の意味は何なのだろうかと息を呑む。

そして、少し邪魔だとミラがホーリーナイトを屈ませた瞬間だった。マキナガーディアンの胴が二つに割れ、その奥にあった赤い結晶が輝き始めたのである。

「なぬ!? 撤退じゃー!」

「おいおい嘘だろ!?」

それを見た途端、同時に叫んだミラとソウルハウルはその場から離れ、我先にと奥の方へ逃げ出した。ミラは《縮地》を使い全力で逃走し、ソウルハウルは壁のようなゴーレムを幾重にも通路に配置する。

その数瞬後、それは放たれた。マキナガーディアンの赤い結晶が一際輝くと、そこから光の奔流が溢れ出し正面の通路を貫いたのである。

圧倒的熱量をもって、そこにいる全てを焼き尽くす破壊の光。マキナガーディアンの秘密兵器、エンシェントレイだ。

まるで火花のように弾ける音が響き、強烈な熱と光が爆発的に膨らんでいく。通路の手前にいたホーリーナイトを容易く焼却したそれは、一つ曲がった通路にまでも多大な余波をもたらし、ソウルハウルのゴーレムを幾つも粉砕していった。

徹底した防御重視のゴーレムが余波だけで五体崩れたところで、ようやく通路は落ち着きを取り戻す。

「四十以上のゴーレムが一瞬で蒸発するはずだな」

不気味なほど静まり返った通路を見つめ、ソウルハウルがため息交じりにぼやく。

「元凶は、ガーディアンそのものじゃったか。まさかあのような行動をとるとはのぅ」

ミラは、より濃く漂ってくる焦げ臭さと、じわりとした熱を感じながら、煙で白く霞む通路の最奥を睨む。

二つ目の曲がり角まで逃走した二人は、それから一度情報を整理する事にした。

まず先ほどの光線兵器、エンシェントレイだが、これの存在自体をミラとソウルハウルは知っていた。だからこそ、その発動準備の時点で、即座に反応出来たともいえる。

しかし知っているからこそ二人は、驚いていた。その威力は見ての通り、人が耐えられるようなものではない。九賢者達と並ぶ者達の中で、その防御力においては最強だと謳われていた聖騎士のプレイヤーですら、直撃を受ければ一秒ともたない威力なのだ。しかもその弾速は光速であり、発動を見てから回避するのはまず不可能ときたものだ。確実に回避するには、準備動作から照準を予測するという技術が必要になるのである。

「しかしまあ、これも現実となった変化なのじゃろうかのぅ。まだ二割もいっておらんかったじゃろう?」

「ああ、そんなもんだな。他の所もそうだったが、ほんと、あちこち変わっている」

ミラとソウルハウルは、より黒く染まった壁を正面にして通路の脇に座り込んだ。そして途方もないとばかりに苦笑する。

二人が知るエンシェントレイは、いわばマキナガーディアンの切り札のような位置づけにあった。損傷が八割を超えたあたりから使い始めるというのが、全プレイヤーに共通した攻略情報であり、それは幾多も繰り返された戦闘においても実証されている。

しかし今この時、マキナガーディアンに与えた損傷は二割未満。まだまだエンシェントレイを使うには時期尚早であろう。

けれど二人は、それを放ってきた事実をその身その目で確認している。つまり現状は、一番警戒しなければいけない一撃が既に解禁状態という、厄介な事この上ない状況だというわけだ。

「しかも、長老のホーリーナイトに反応していたよな。通路を覗き込むのといい、あの反応といい、完全にゴーレムの時間稼ぎへの対策に見えた」

「確かに、そのような動きじゃったな。侵入者を片付けたら所定の位置に戻るというのが、わしらの知る動きじゃからのぅ。あれは完全に、次への対策じゃった」

通路を覗き込む。マキナガーディアンはそこに邪魔者がいるのを予想していた。つまり、繰り返された時間稼ぎを覚え、学習し対策手段を組み上げてきたという事だ。

「昨日の夜から始めたわけだが、一日で学習したって事か。この先、相当厄介だな」

何日も何日も、ソウルハウルは長い期間をかけて攻略する予定だったそうで、ここまで対策が早いと今後の予定が狂いそうだと苦笑する。しかし、その表情に諦念は一切見られなかった。

「とにかく、検証じゃな」

「まあ、それしかないか」

ミラとソウルハウルはうっすらと笑みを浮かべながら立ち上がると、早速焼け焦げた通路に向けて駆けていく。

検証。ミラ達が言うそれは、敵の動きや特定の行動をする時の条件を確認する作業の事だ。強敵と遭遇した時は必ず皆でそうしており、その作業も実にこなれたものである。

まず最初に行ったのは、動いているかどうかで変わるかだ。先ほどは、ホーリーナイトが動いたから反応したかのように見えた。なら動かなかったらどうだろう。

角からちらりと顔を覗かせたところ、既にその先にはマキナガーディアンの姿はなく、所定の位置に戻っているものと推察された。なのでミラは、ホーリーナイトとダークナイトを召喚して、ダークナイトだけをボス部屋に進入させた。

ダークナイトが真っすぐ進んでいくと、そこで先ほどと似たような光景が繰り返される。同じではなく、似た光景だ。ダークナイトは鋭く迫る一撃を見事に回避して、その黒剣を叩きつけたのである。しかし、それが限界であり、間髪入れず繰り出された二本目の脚によって完全に撃破されてしまった。

「さて、逃げる準備じゃな」

「ああ、どうなる事か」

ミラとソウルハウルが固唾を呑んで見守る中、マキナガーディアンが動いた。そして予想通り、通路を覗き込むような動きをみせる。二人は、いつでも全力で逃走出来るように待機し、マキナガーディアンを慎重に観察する。

ホーリーナイトは壁際でじっと動かず目立たず佇んでいた。

しかし、どうやら動きは関係なかったようだ。

「撤退じゃな!」

「だな!」

準備万端整っていたミラとソウルハウルは、途端に踵を返し、奥へと逃走する。そして駆け抜けた通路には余波の緩衝材として壁のゴーレムが設置され、直後に迸る破壊の奔流を二人は見事にやり過ごした。

「動きは関係なさそうじゃな」

「そのようだ」

こうして一つの検証を終えた二人は続けて二つ目を始めるべく、ますます黒く染まった通路に戻っていく。

「余熱が凄いのぅ」

黒い通路の先にはもうマキナガーディアンの姿はない。既に所定の位置に戻っているのだろう。しかし、その先がまるで陽炎のようにぼんやりと歪んでおり、通路にはエンシェントレイの熱がまだ残っていた。

「にしては、霧散するのも早いな」

「そういえば、そうじゃな」

見た目や、実際の威力からして、数千℃はあるだろうエンシェントレイ。しかしどういう原理か、通路に残った熱は、決して人が耐えられないほどではない。

「この壁に秘密がありそうじゃが……」

ミラは黒く焼け焦げた壁に、そっと指先で触れる。多少の熱が残っていてもおかしくはないが、角に身を潜めた際、その壁から熱を感じず、不思議に思っていたのだ。そして確かに壁は、何事もなかったかのように熱くも冷たくもなかった。

「吸収率がいいとか、そういう感じか? まあ今は好都合だな」

「そうじゃな。古代文明万歳といったところかのぅ」

焼けつくような熱が残れば、検証に支障をきたす。けれど現在は、その事に悩む必要はなさそうだ。きっと古代文明の凄い技術が使われているのだろう。古代と名の付く場所では、こういった事がよくあり、古代文明の技術とはそれら全てを一括で言い表す実に便利な言葉だった。

「さて、次は単発じゃな」

検証その二の開始である。ミラは奥の部屋を見つめながら、ダークナイトだけを召喚して、そのままボス部屋に突入させた。そしてソウルハウルもミラの頭の上から顔を出し、その様子を凝視する。

ミラ達の見える範囲を、ダークナイトが直進していく。すると、先ほどよりも鋭い一撃がダークナイトを襲う。それを回避したダークナイトが、振り下ろされたマキナガーディアンの脚に一撃を入れる。そして間髪入れずに繰り出された二本目の脚も見事に潜り抜け、二撃目を打ち込んだ。

「良いぞ良いぞ!」

目的は検証だが、ミラの負けず嫌いが少し顔を覗かせていた。確かな剣術を操るダークナイトの学習能力もまた、中々のものである。けれど流石に規格外のマキナガーディアン相手にそう通じる事もなく、三撃目を放つ前に一撃で粉砕されてしまっていた。

「ぐぬぬ……」

頑張ったもののあっけなく倒されたダークナイトに気落ちするミラ。

「さて、ここからだぞ」

ソウルハウルは、そんなミラの頭を小突いて注意を促す。いざとなったら、全力で撤退しなければいけないのだ。

ミラは気を取り直して、マキナガーディアンの動向を注視する。

動きはこれもまた先ほどと、ほぼ同じだった。通路の前まで近寄ったマキナガーディアンは、その身を屈め、通路を覗き込んできた。

黒く染まった通路の正面には、戦車のように頑丈な装甲版で覆われた胴体が見える。今見えているその胴体が開き、赤い結晶が露出したらエンシェントレイの兆候。即、撤退すべし。

果たして、どうなるか。じっと動かず、息を潜めて様子を見る事約二分。なんとマキナガーディアンは、エンシェントレイを発射する事なく、重々しい足音を響かせながら部屋の奥へと戻っていったではないか。

「一先ず、通路に何もなければ、撃ってはこぬようじゃのぅ」

「そんな感じだな。んで何かあった時に撃ってくるってのがこれで確定か」

角を曲がれば、あとはボス部屋に一直線となる目の前の通路。何かが部屋に侵入した後、確認したこの通路に他の何かがあればエンシェントレイで焼却し、なければ所定の位置へ戻る。この流れは、ほぼ間違いなさそうだと二人は確信する。

「さて、あれの学習能力についてじゃが、先ほどの一撃目と二撃目は同じ動きじゃった。マキナガーディアンの学習能力は、どの程度なのじゃろうな」

「何度も繰り返せば学習する事は確実だが、どの程度かはわかり辛いな。ただ見た限り、一度や二度なら問題なさそうだ。考えられる事は、十、二十と繰り返した場合か、時間の経過、じゃないか。情報処理には時間がかかったりするからな」

「ふむ、それも考えられるのぅ」

ソウルハウルの話によれば、初日のゴーレム五十体は、何事もなく時間稼ぎを続けられたそうだ。しかし次の日の今日、何度かゴーレムが突入したところで、遂にこの対策が講じられたという事である。

「どのみち、長い事同じ手は通じないとみて間違いなさそうじゃな」

「ああ、検証結果からして、今回は一つ角を曲がったこの通路にゴーレムを並べれば大丈夫そうだ。まあ、次も通じるとは限らないが」

真っ黒に焼け焦げた最後の曲がり角の手前。そこから背後に伸びる通路は、まだ白いまま。ここに妨害用ゴーレムを並べておけば、今日までなら何とかなるかもしれない。

「やれやれ、とりあえず一度戻るとするか」

流石に疲れたとばかりに大きなため息を漏らしながら、ソウルハウルは早速ゴーレムを並べていく。

「そうじゃな。腹も減ったしのぅ」

せめて一日は時間を稼げるようにと、ミラは居並ぶゴーレムを地蔵のように拝み、その場を後にしたのだった。