軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

パーフェクト学園へ 3

「…………あれ」

ゆっくりと目を開ければ、真っ白な天井が目に入った。周りの景色から、ここが保健室だとすぐに悟る。

何度か瞬きをしているうちに、先ほど体育の授業中に顔面にボールが飛んできて、鼻血を垂らしながら気絶したことを思い出す。本当に酷い目に遭った。

治癒魔法をかけてもらったのか、一切痛みはない。

「はっ、そうだ! よし──……」

「よお」

「あああああああ!」

今頃吉田はどうしているだろう、今は何時だろうと思いながら寝返りを打つと、目の前には腕を組み、私を見下ろすセシルの姿があって口からは悲鳴が漏れた。

一体どうして、セシルがここに。

「色々と俺に話すことがあるよな? レーネ」

「え、ええと……」

ベッドの側の棚の上には大破した変装用のメガネがあり、完全に素顔を晒しているのだ。もう誤魔化すのは無理だと、一瞬ですべてを諦めることにした。

一体どこから話そうかと頭を悩ませていると、セシルは大きな溜め息を吐く。

「どうせ、アンナに会いにきたんだろ」

「仰る通りでございます」

「それで何でこうなるんだよ、バカ」

「実はですね……」

そうして最初から説明したところ、セシルはどうして自分に相談しなかったんだと私の両頬をつねった。全く容赦がないせいで、かなり痛い。

「らっへ、ほんはひ仲良ふないひ……」

「は? うっざ」

胸に手を当て、ブスだとかバカだとか言っていた過去の私への態度を思い出してみてほしい。

どうやらまだ四時限目らしく、ほっとする。昼休みのディランとの約束には間に合いそうだ。

ちなみに私の顔に当たったボールは、セシルが打ったものらしい。色々と運がなさすぎる。

「普通の女子だったらどうしようかと思ったわ」

「どういう意味?」

痛む頬を押さえながら、失礼すぎる従兄弟を睨む。

「で? この後お前はどうするつもりなわけ」

「まずはダーくんと合流しないと」

「ああ、そいつなら休憩時間にお前の様子を見に来て、また授業に戻ってったぞ」

冷静になると何故か他校でコスプレをし、一人で授業を受けている吉田には申し訳なさが募る。

「レーネの何なんだって聞いたら、監視役だとよ」

「よ、吉田……」

「なんか俺、あいつのこと好きだわ」

好き嫌いが激しそうなセシルのハートまで掴むとは、さすが吉田。罪な男だ。もちろん吉田が私の彼氏ではないということも、秒でバレたようだった。

「それと昼休み、ディランってイケメンがアンナさんに会わせてくれることになりまして」

「本当にお前は愚かだな。よりによってあいつかよ」

呆れたように再び大きな溜め息を吐いたセシルは、ねじ切りそうな勢いで私の頬をつねる。

やはり彼──ディラン・フォレットは女好きの軽薄な人物らしく、なんだかんだ真面目キャラなセシルはディランが大嫌いだという。

来るもの拒まずのディランは誰にも本気にはならないようで、傷付く女子生徒は多いんだとか。女の敵だ。

「ま、お前があいつに本気になることはないだろ」

「そうだね、間違いなくない」

「とにかく俺も昼休み、一緒に行くからな」

遠慮という形でやんわり拒否しようとしても、嫌がるなら警備に突き出すぞと脅されてしまう。

けれど、ユリウスにも内緒で来たというのがセシル的には満足ポイントだったようで、思っていた以上に怒られることはなく、ほっとする。

そして昼休みが始まる少し前、私はセシルと共に、一人で音楽の授業を受けているであろう吉田の元へと向かった。本当に申し訳ないと思っている。

◇◇◇

「あれ、また取り巻きイケメン増やしてんじゃん」

セシルと吉田と共に食堂へ向かうと、すでにそこにはディランの姿があった。

やはりモテるようで、その周りにはきゃあきゃあとはしゃぐ女子生徒達の姿がある。

「お、メガネとったんだ。かわいいな」

「破損しまして、不可抗力で」

「優等生のセシルくんまで虜にしたんだ?」

「んなわけねーだろ、黙れ」

揶揄うようにそう言ったディランに対し、セシルはチッと舌打ちをする。二人は相当、仲が悪いらしい。

「こちらのセシルとは親戚でして」

「へえ、全然似てないな」

「当然だろ。血は繋がってねえんだ」

「そうそう、血は……え?」

驚いて顔を上げた私は、セシルへと視線を向ける。一方のセシルは、何だよと言いたげな顔をしていた。

──私とセシルは、血が繋がっていない?

セシルは父の弟の息子なのだ、私と血が繋がっていないはずがない。何か理由があって嘘をついたのかもしれないと思っていると、ディランは「お」と声を上げた。

「ほら、あれがアンナだ」

彼の視線の先を辿ると、そこには大勢の生徒の中でも圧倒的に目立つ、一人の女子生徒の姿があった。

「……あれが、続編のヒロイン」

一言で言えば、超絶美少女だった。

ああ、これは誰だって好きになってしまうだろうなという納得の可愛らしさで、思わず見惚れてしまう。

ふわふわと柔らかな桃色の髪を靡かせ、食堂を歩くアンナさんは、周りの生徒の視線をかっさらっている。

そして数秒の後、空色の瞳と目が合った。