軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

楽しい時間はあっという間

それからは吉田姉も含めて三人でお茶をしたり、屋敷の中を案内してもらったりと楽しく過ごしているうちに、あっという間に時間は過ぎていった。

吉田がツッコミ疲れをしてきたところで、そろそろ帰ろうと思っていると、執事らしき年配の男性に声を掛けられた。

「ウェインライト様、お迎えが到着したようです」

「あっ、ありがとうございます」

友人の家にあまり長居するとご家族からのイメージが悪くなる、というのを以前小耳に挟んだことがあった私は、早めの時間に迎えの馬車を呼んでおいたのだ。

二人は外まで見送ってくれるようで、お言葉に甘えることにした。また遊びに来て欲しいと言われ、嬉しくなる。

「あれ?」

そうして吉田邸の門の前に停まっている見慣れた馬車の前には何故か、兄の姿があって。彼は私の姿を見るなり、嬉しそうに微笑み、ひらひらと片手を振った。

「迎えにきちゃった」

「あ、ありがとう」

誰かが迎えに来てくれるという経験がほとんどなかった私は、こうしてユリウスが来てくれて嬉しかったのだけれど。

「ユ、ユリウス・ウェインライト……!?」

背中越しに吉田姉の戸惑ったような声が聞こえてきて、振り返れば彼女は再び、よろよろと後ずさっていた。

一方、吉田はいつもと変わらない様子で「こんにちは」と丁寧に挨拶をしている。

「ヨシダくん、こんにちは。あれ、アレクシア先輩もいる」

「ウェインライトという名前で嫌な予感はしていたけれど、全く似ていないから違うだろうと信じていたのに……」

どうやら二人は知り合いらしい。確かに学園ではユリウスが一年の時に、吉田姉は三年だったことになる。

「ごめんなさい、マックス。私、この男と親戚になるなんて絶対に嫌だわ無理です」

「え、どういうこと?」

「この男のせいで、三年の女子グループまで崩壊したのよ」

「嫌だな、勝手に揉めただけじゃないですか」

「面白がっていたのを知っているんだから!」

恐るべきことに兄は、モテすぎるあまり他学年でもトラブルのきっかけになってしまっていたらしい。身内と言えど、罪な男すぎて恐ろしくなってくる。

「ねえ、親戚って何の話?」

「二人は恋人同士なんだから、将来の話よ」

「は」

「えっ」

見事に吉田姉以外の三人の声が重なる。私と吉田がいつ、恋人になったのだろうか。それを聞いたユリウスはあからさまに不機嫌な様子で、私と吉田を見比べた。

「ヨシダくん、本気でそういう感じ? いい加減怒るよ」

「誤解です」

「誰よヨシダって」

「あの、落ち着いてください」

なんだかカオスなことになり始めている。私はとにかく吉田姉のとんでもない誤解を解こうと、口を開いた。

「あの、すみません。私と吉田、つまりマクシミリアンくんは恋人ではなく、仲の良い友人でして……」

「何ですって?」

私の言葉に対し、吉田姉がひどく戸惑ったような様子を見せる中、吉田は「すまない」と深い溜息をついた。

「お前があまりにも嬉しそうにしていた上に、突っ込む点が多すぎて、一番おかしい所を突っ込むのを忘れていた」

確かに途中から、吉田のツッコミのキレが無くなってきているような気がしていたのだ。明らかにその整った顔には疲れの色が浮かんでおり、申し訳なくなる。

「ごめんなさいね、早とちりをして」

「こちらこそ、なんだかすみません」

「でも私、レーネ自体のことはとても好きだから、いつでも遊びにきてね。あと、マックスのことを好きになった時にはすぐにこっそり相談してちょうだい」

「余計な気を回さんでいい」

とにかく、謎の誤解が解けて良かった。吉田というあだ名に関しても「ヨシダ……なんだか良い響きね」と吉田姉も気に入ってくれたようで、ホッとする。

また遊びに来ると改めて二人と約束をして、私はユリウスと共に馬車に乗り込んだのだった。

◇◇◇

「今日、楽しかった?」

「うん。すごく楽しかったよ」

「それは良かった。ていうかなんで、ヨシダくんと恋人同士だなんて勘違いされたわけ?」

いつも通りユリウスの隣に座らされ、馬車に揺られながら帰路に就く。そうして吉田邸での出来事を話したところ、兄はお腹を抱えて笑い出した。

「あはは、どう考えてもおかしいでしょ。そんな中にいたらヨシダくんがおかしくなるのも分かるよ」

アレクシア先輩も変わってるとは言え、どうしたら友人の家でその姉と戦うことになるんだと爆笑しており、あまりにも笑いすぎて目尻にはうっすらと涙が浮かんでいる。

「それにしても、ユリウスって本当にモテるんだね」

「まあ、かっこいいからね俺。でも、その他大勢に好かれたところで意味ないって改めて思い知ったよ」

「…………?」

その他大勢というのは、一体どういう意味なのだろう。そんなユリウスは私の頭を撫でると「あ、そうだ」と続けた。

「そういや、レーネに手紙が届いてたよ。王城から」

「えっ?」

一体何だろうと気になった私は、家に着くなり手紙を受け取り開封したところ、なんと差出人はセオドア王子で。

ドキドキしながら開くと、なんと中には王家主催のガーデンパーティーの招待状が入っていたのだった。