軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

交流会・事件続きの魔の森編 8

とはいえ状況が状況のため、ユリウスへの大好きという気持ちを飲み込み、ごくりと息を呑みながら引き続き様子を見守っておく。

ぶわっと冷たい風や温風がこちらまで届き、王子が私達全員を守る防御魔法を張ってくれた。

「す、すごい……」

そんな語彙力のない感想しか出てこないくらい、二人の戦いはハイレベルなものだった。二人の姿を目で追うのに必死で、私にはもう何が起きているのか理解できない。

「うわ、今の発動速度すげえな。頭ん中どうなってんだよ」

「……同時に三つ展開していた」

けれどヴィリーや王子はしっかり理解できているようで、じっと戦いに見入っている。少しでも情報を得ようとしていて、二人にとっても目指すべき場所なのかもしれない。

ユリウスが優れた魔法使いであることはもちろん知っているけれど、そんな彼と渡り合えているウィンさんもまた、かなりの実力者であることが窺えた。

ふざけた腹立たしい人だと思っていたけれど、自称ユリウスのライバルなだけある。

「くっ……」

けれど少しずつウィンさんが押されているのは、素人目にも分かった。

いつの間にか防戦一方になり、勢いを増すユリウスの攻撃を防ぎきれなくなったウィンさんは体勢を崩し、魔法の発動が遅れてしまう。

その瞬間をユリウスが見逃すはずもなく。次に瞬きをした時にはもう、決着はついていた。

「誰が腑抜けだって?」

呆れたように笑うユリウスの剣先が、地面に倒れたウィンさんの首元に突きつけられている。

ウィンさんはあちこち傷だらけでかなり疲労している様子だったけれど、ユリウスは息ひとつ切らしておらず、結局のところ力の差は歴然だった。

「くそっ……!」

よほど悔しかったのか、地面に横たわったウィンさんは悔しげな表情を浮かべ、思いきり地面に拳を叩きつけている。

そして少ししてから、何故かおもむろにパチ……パチ……と拍手をし始めた。

「悪口を言って叩いてやりたいのに、見事だと手を叩くことしかできない……!」

「あの人、なんだかんだ絶対に良い人だよな」

「分かる。私もそう思ってた」

ユリウスへの勝手な物言いや行動はもちろん、許されるものではない。

けれどハートフル学園側の選手を気絶ではなくすやすやと眠らせ、魔物にも襲われないよう配慮していたこともあり、根は良い人であることが窺える。

ヴィリーとひそひそとそんな話をする中、ウィンさんは薄い唇を開きかけてはぐっと閉じるのを繰り返していて、何か言いたげにしているのが見てとれた。

「……前回の交流戦で、お前に負けたのが悔しかったんだ。生まれて初めての敗北だった」

それからウィンさんは、ぽつりとぽつりと語り出した。

どうやら前回、ユリウスが優勝したという個人戦で二人は戦ったらしい。

「お前に負けてからというもの、僕の人生は変わった。試合を見てお前に惚れたという最愛の恋人には振られ、両親からの期待は失われ、自分に自信が持てなくなり……」

交流会の一戦で失うものが大きすぎる。

流石に同情してしまいながら、地面に寝転がったままのウィンさんの話に耳を傾ける。

別に大した怪我はしていないようだし、そろそろ起き上がってもいいような気もしていた。

「だが、ウェインライトになら負けるのも仕方ない、むしろ当然だとも思っていたんだ。それなのにお前は変わってしまって、そうもいかなくなった」

ウィンさんは、過去のユリウスに憧れていたのだろう。

けれど彼の中のユリウスの理想像が崩れたことで、敗北の悔しさや憧憬、彼女に振られた悲しみといった色々な気持ちの行き場を失ってしまった。

その結果、間違ったやり方をしてしまったに違いない。

「もう一度お前を倒しさえすれば俺はお前から解放され、全てが元通りにできると思ったんだ。だからこそ交流会を心待ちにしていたのに、お前が個人戦に出ないと聞」

「レーネ、お腹空いたよね? そろそろお昼にしようか」

しかしながら自分語りをするウィンさんを放置し、こちらへ戻ってきたユリウスは笑顔で話しかけてくる。まるでウィンさんの存在がないかのように自然で、見事な無視だった。

「いやいや、ここは最後まで聞いてあげた方が……」

「どうでもよくない?」

ユリウスが非情すぎて、こちらが気まずくなってくる。

ウィンさんもまさかここで無視をされると思っていなかったのか、横たわったまま「え?」という顔をしてこちらを見ていた。とりあえず起きてみてはどうだろうか。

「うわ、やっぱりセオドアの弁当すげえな! 王城のシェフが作ってんの?」

「うん」

ヴィリーや王子も全く気にしておらず、お弁当を広げ始めている。ここで私だけ食べないとこの後の予定にも響くだろうと、ひとまずお弁当を食べることにした。

「レーネ、これ好きだよね? 口あけて」

「自分で食べられるよ」

「正確には、お前が僕になんて眼中にないって顔をしているのが何よりも悔しかったんだろうな。同い年の天才が姉妹校にいると聞いて、ずっとライバルのように思っていたから」

「俺がそうしたいの、あーん」

ウィンさんも想像以上に心が強く、なんとこの状況で横たわったまま話を再開していた。

彼の自分語りという名のユリウスへの愛をBGMにしながら、昼食をいただいていく。

「わ、セオドア様のお弁当、本当に美味しいですね」

「…………」

「えっ、王城での晩餐会? お邪魔してもいいんですか?」

「俺はよく行ってるけど、食堂には俺らだけだし楽しく過ごせて最高なんだよな」

そして来週末、他のメンバーも誘って王城での晩餐会に招待していただくことになった。

新たな楽しみができて食事を終える頃には、ちょうどウィンさんの話も終わったようだった。

「……ユリウス?」

この後はどうするんだろうと思ったところで、ユリウスはまだ転がったままのウィンさんのもとへ向かっていく。