軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

交流会・涙の水竜ボス討伐編 1

パーフェクト学園との交流会、二日目の朝。

私は制服姿で、運動着姿のユリウスと共に学園へ向かう馬車に揺られていた。

「湖での競技後はそのまま屋敷に戻るから、レーネも応援が終わったら気を付けて帰ってね」

「ユリウスは緊張したりしないの?」

「まあ、特別強いような魔物でもないから。それに俺、人生で緊張ってほぼしたことないし」

さらっと言ってのけるユリウスは流石だと思いながら、気になったことを尋ねてみる。

「ほぼってことは一応、緊張したことはあるんだ?」

ユリウスほどの人が緊張するなんて、よほどの大舞台に違いない。ちょうど学園前に馬車が停まり、先に降りたユリウスが手を差し出してくれる。

「あるよ」

にっこりと笑みを浮かべたユリウスの手を取ると、そのままぐいと手を引かれた。胸の中に思いきり飛び込む形になり、ぎゅっと抱きしめられる。

「レーネに告白した時、人生で一番緊張した」

「…………っ」

そして耳元でそんなことを囁かれ、一瞬にして顔にぶわっと熱が集まっていくのを感じた。

真っ赤になって硬直する私を見て、ユリウスは満足げに口角を上げる。

「ドキドキしてくれた?」

「お蔭様で心臓が爆散して体内が血の海です」

「あはは、それなら良かった。ずっと好きでいてもらうためには、刺激がないとだめかなって」

「その前に私が死ぬと思う」

どうか私の寿命を縮めないためにも、余計なことはしないでほしい。普通にしていたって私はユリウスの些細な発言や何気ない仕草など、全てにドキドキしてしまうのだから。

「と、とにかく今日の水竜討伐、頑張ってね!」

「ありがとう。レーネのためにも俺が一番倒してくるよ」

「ちなみに水竜を倒すためのコツとかってあったりする?」

「一応、弱点とか行動パターンはあるから、その辺りを考えながら動くかな」

それからも水竜について色々と聞いていると、ユリウスはじっと私を見つめた。

「レーネちゃん、どうしてそんなに水竜について聞くの?」

「い、いえ……後学のために聞いてみただけでして」

「ふうん?」

ユリウスには内緒でボス水竜討伐に向かうため、必死に誤魔化しておく。

学園の敷地内に足を踏み入れると、あちこちに制服姿のパーフェクト学園生の姿があった。今日から各競技が行われるため、選手以外の生徒も第二都市から応援に来るそうだ。

そんな中、ユリウスは私の手を取ると指先をしっかり絡めた。普段は登下校中に手を繋ぐことはあまりないため、不思議に思いながらユリウスを見上げる。

「他校の生徒に俺のレーネを好きになられたら困るから、しっかりアピールしておかないと」

「もしかして私のこと、世界一の美女に見えてる?」

やはりユリウスの目には、特殊なフィルターがかかっているとしか思えない。

むしろ周りから注目されているのは圧倒的にユリウスの方で、パーフェクト学園の女子生徒達は手を繋いで歩く私達の姿を見て肩を落としていた。

「ショック……ウェインライト様って彼女いたんだあ……」

「あれでいない方がおかしいって。でもあんな恋人がいるなんて、羨ましすぎる」

「しかもラブラブみたいだし、やっぱり今日はうちの学校を応援しよっと」

「いや、相手を応援する気だったのやばいから」

競技場へ向かっていく女子生徒達の会話を聞きながら、彼女達には私がユリウスの恋人に見えているのだと気付く。

ハートフル学園内では誰もが私達を実の兄妹だと思っているから、なんだか新鮮だった。

「レーネは本当に分かりやすくてかわいいね」

「えっ?」

「恋人だって周りに見られて嬉しいって、顔に書いてある」

私はどれだけ分かりやすいのかと恥ずかしくなりながらも、こくりと頷いた。

「学園内での恋愛みたいなのに憧れてたから、嬉しくて」

前世では学生時代、休み時間まで必死に勉強をしながらも、楽しそうに過ごすカップルに憧れを抱いていたことを思い出す。

社会人になってからも街中や社内などで色々なカップルを目にしたけれど、やはり学校で制服を着て楽しそうに笑い合う姿が印象的で、一番輝いて見えたような気がする。

私は自分が思っている以上に、学生時代にコンプレックスがあるのかもしれない。

「…………」

もう一度こうして学生時代をやり直せていることに心から感謝していると、ユリウスが読めない表情でこちらを見つめていることに気が付いた。

「ユリウス? どうかした?」

「……ごめんね」

どうしたんだろうと気になって声をかけると、なぜか謝られ、余計「?」でいっぱいになる。

やがてユリウスは形の良い眉尻を下げ、繋いでいた手に力を込めた。

「俺、ちゃんとするから」

そして私の頬に軽くキスを落とし「また後でね」と言って去っていく。

「な、なんの話……?」

周りにいた女子生徒達の悲鳴を聞きながら、今のは何に対しての謝罪なのか、何をちゃんとするつもりなのかということを、働かない頭で考えていたのだった。