軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

はじめての 2

もちろん嫌なんかではないし、ただ恥ずかしくて照れくさいだけ。

きっとユリウスがリードしてくれるはずだし、私は大人しく受け身でいればいいはずだと信じている。

「わっ」

「あはは、大丈夫?」

そんな考え事をしていると不意に頬に柔らかいものが触れ、それが何なのか理解した途端、私は椅子から転げ落ちかけていた。

「す、すみません……」

ユリウスに腕を掴まれて引っ張り上げられる姿は、側から見ればさぞかし情けないだろう。

こんな私を「かわいいね」なんて言う奇特なユリウスが、神のように思えてくる。

私の覚悟などさっぱり使い物にならないのではという不安を抱いたまま、恋人になって初めてのデートは幕を開けた。

それからはユリウスに手を引かれ、様々な観光スポットを見て回った。

「レーネ、こういうの好きでしょ?」

「正直ものすごく好き」

何もかもがスマートな上に私が好きなものをよく理解してくれていて、私が楽しむことを一番にしてくれているのが分かった。

私のために色々と調べて計画を立ててくれたのだと思うと、じんとしてしまう。

「この辺りの街並み、レトロで素敵だね! かわいい」

「そうだね。ゆっくり見て回ろうか」

王都の外れには古びた街並みが広がっており、運河沿いには石畳の道が続いている。二人で手を繋ぎながら、美しい街をゆっくりと歩いていく。

「……私ね、こんな風にデートすることにずっと憧れてた気がする」

この世界に来てすぐに「恋愛がしたい!」と意気込んでいたけれど、私にはやっぱりどこか縁遠いものだと思っていた。

恋人とこうして過ごしている今が、どこか非現実的に感じられる。

「これから先もたくさんしよう」

「うん、ありがとう」

出会った頃からは想像もつかないほど優しい笑みを向けられ、心臓が波打つ。

ユリウスの些細な言動ひとつひとつに対して「好き」だと強く思ってしまう。

「あれ、なんだろう?」

そんな中、指差した先には、大きな歓声が外まで聞こえてくる巨大なドーム状の建物があった。

ユリウスは何か知っているようで「ああ」と頷く。

「闘技場だよ」

「と、闘技場……!?」

アニメや漫画でしか聞いたことのないワードに、少しの衝撃を覚えてしまう。

血まみれで死人が出たり恐ろしい魔物と戦わせたりというイメージをしては震えていたところ、ユリウスはくすりと笑った。

「レーネが想像しているようなものじゃないよ。最近は色々と厳しいし、単に力くらべみたいな感じだから。デートには不向きだけど、闘技場はトゥーマ王国にしか残ってないし、社会勉強がてら見ていく?」

「いいの? せ、せっかくだしそうしようかな……」

何でも経験は大事だし、闘技場では魔法を使っての戦いがメインらしく、対人戦の勉強になるかもしれない。

何よりデートらしさはないけれど、気になって仕方なかった。チケットを購入して二人で会場の中へ入ると、観客席は大勢の人々で溢れ熱気に包まれている。

「参加者、募集中でーす!」

闘技場で行われる試合は色々な形式があるらしいものの、今日は一般から参加者を募って勝ち抜き戦をしているみたいだった。

試合ごとにどちらが勝つかお金を賭けて遊ぶようで、あれほど盛り上がるのも納得してしまう。

「痛みはそのまま感じるけど、実際には怪我をしないようになっているから安全なんだ」

「それなら安全で平和でいいね」

国の管理下で行われていることもあり、本当に健全な仕組みなんだとか。

席に向かう途中、ずらりと並ぶ賞品が目に入った。

「一勝はこの中から、五勝するとここにある全てから選べるんですよ」

「なるほど、色々あって面白いですね」

じっと見つめている私に気付いたらしいスタッフの男性が、にこやかに教えてくれる。

参加者への賞品らしく、キッチン用品から子ども向けのぬいぐるみまであって、なんだかパチンコ屋の景品みたいだという感想を抱いた。

本当に健全な催しだなあと思いながら楽しく見ていた私は、はっと息を呑む。

「こ、これは……!」

ぬいぐるみコーナーの中に、お気に入りのクマのぬいぐるみの限定版があったからだ。

去年の夏休みにも吉田とともにシユ……シなんとかという激ダサボートレースに参加し、ゲットしたりと地道に集めているものだった。

まさか地方限定だけでなく国を超えた限定品まであるとは思わず、胸が高鳴ってしまう。

「これって買ったりなんてできませんよね……?」

「そうですね。申し訳ありませんが……」

やはり賞品は賞品なのだし、諦めようと再び歩き出したところでユリウスに腕を掴まれた。

ユリウスはぬいぐるみに視線を向け、口を開く。

「これ、三回勝つだけでもらえるんだ?」

「は、はい。ですが、今勝ち抜いているのが過去に十連勝した方なので、厳しいかと……」

「いいよ、何でも。参加するから」

「えっ」

まさかのまさかで、ユリウスは試合に参加してぬいぐるみをゲットしてくれるつもりらしい。

漫画などではよくゲームセンターでデートをして、UFOキャッチャーでぬいぐるみを彼氏に取ってもらうという場面があるけれど、闘技場で数人倒してぬいぐるみゲットは前代未聞すぎる。