軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

脱出への道 7

それからは驚くほど、あっという間だった。

「な、何なんだお前たち、ぐああっ」

「誰かこいつらを捕まえ──っ」

みんなは魔法を駆使し、赤子の手をひねるように簡単に敵を薙ぎ倒していく。

最初に船で眠らされて攫われたのは不意打ちで、相手の罠に飛び込む形だったからだろう。

「こんな雑魚どもの言うこと、ずっと黙って聞いてたなんてね。嫌になるよ」

特にルカは相当鬱憤が溜まっていたのか、ド派手に暴れている。

三人が敵を倒していく中、私はこの状況に困惑している攫われてきた人々に事情を説明し、この後すぐに助けを呼んでくると伝えて回った。

「お前ら一体何の真似だ! よくも……!」

やがて騒ぎを聞きつけ、ようやく諸悪の根源であるDBが現れた。

私たちが脱走して魔道具を破壊したことに気付いたらしく、大きな丸い顔には脂汗が浮かんでいる。

「今すぐに何とかしろ! 殺しても構わん!」

けれど相手も伊達に何年もこれほどの規模の犯罪をバレずに犯してきたわけではないようで、後ろからはぞろぞろと人が出てくる。

これまでの屈強な男たちとは違い、細身の彼らはきっと魔法使いなのだろう。

「姉さんは下がってて」

「わ、分かった」

ルカの声に頷き、少し離れた場所へ移動する。私も魔法は使えるものの戦闘経験は少ないし、対人戦となればなおさらだ。

やはり相手も魔法を使えるようで先程までの一方的なものとは違い、三対十の激しい戦いが繰り広げられる。

──それでもハートフル学園のSランクというのは、魔法使いの中でもほんのひと握りの「天才」と呼ばれる域にいる人々を指すのだと、聞いたことがあった。

何より私はみんなの強さを知っているから、絶対に大丈夫だという気持ちで見守る。

「…………」

「…………」

そんな中、ふと気付けば同じく戦闘を見守るDBが隣にいて。向こうもこちらに気付いたのか、お互いに無言のまま見つめ合うという謎の間が生まれる。

やがてハッと我に返った私は固く右手を握りしめ、ひとまず殴りかかった。

「この、この!」

「な、何をする! やめろ!」

必死に逃げるだけのところを見るあたり、どうやらDB自体は魔法を使えない上に、何の戦闘能力もないようだった。

生まれて初めて誰かを殴ろうとしたことで思い切りすかしてしまったものの、これなら私でも倒せると、再度拳を握る。

DBも私が危険だと悟ったのか、背を向けて全速力で逃げ出した。すかさず私も駆け出し、思い切りその背中に飛び蹴りをする。その結果、DBは地面にスライディングする形で派手に倒れた。

「うぐあっ」

「よくも私たちの大事な夏休みを……!」

絶対に逃がしてたまるかと、ヨガボールかと思うほどぽよぽよのDBの上に馬乗りになる。

同時に、今も戦闘中のみんなの声が聞こえてきた。

「姉さん、俺たちの分までぶっ殺して!」

「ああ、思い切りやってくれ」

「…………」

「みんな……任せて!」

とても感動的なシーンっぽいものの、やろうとしていることは暴力による報復である。

──けれど、そんならしくないことをしようとするくらい、私たちは今回の夏休みの旅行を本当に本当に楽しみにしていた。

何度も何度も何をしようと話し合って調べて、楽しみで眠れないかも、なんて話をして。一生に一度しかない二年生の夏休みを台無しにした罪はあまりにも重い。

「これは吉田の分!」

私は再び右手を振り上げると右手に風魔法を纏い、振り下ろした。

「ぐふっ」

「これはルカの分、こっちは王子の分!」

単に夏休みを奪われただけではない。

地下で無理やりきつい労働をさせられ、酷い暴言を吐かれ、食事まで台無しにされ、毎日のように酷い嫌がらせをされてきたのだ。

みんなだってたくさん辛い思いをして、たくさん傷付いただろう。絶対に許さないという気持ちを込めて、何度も拳を振り下ろす。

「そして最後にこれが、吉田の分だーーー!」

「おい、被ってるぞ」

吉田の冷静な突っ込みが聞こえてくるのと同時に、拳に乗せた風魔法を思い切り放つ。

ぶわっと強い風が吹き、轟音と共にカエルを潰したような声がして、DBは意識を失った。

「はあ……はあ……ざ、ざまあみろだ……」

息切れしながら、ヒロインらしからぬセリフを吐く。

同時にみんなも無事に全ての敵を倒したらしく、全身から力が抜けていくのが分かった。これで本当に長かった地下強制労働パートが終わったのだと思うと、涙が出そうになる。

あとはここを脱出して通報し、犯人たちの確保と囚われていた人々の救出をすべきだろう。

「……よし」

そうして、立ち上がろうと息を吐いた時だった。

「──レーネ?」

聞き間違えるはずのない声が聞こえてきて、ぴしりと固まる。この場に彼がいるはずなんてないと思いながらも、あまりにも鮮明な声で、心臓が早鐘を打っていく。

やがて恐る恐る振り返った先には、やはりユリウスその人の姿があった。