軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

最初で最後の告白を 2

もう伯爵達との話は終わったらしく、ユリウスは「だるかった」と溜め息を吐く。

「……アーノルドの言葉の意味が分かったわ」

ミレーヌ様はユリウスの服へ視線を向け、眉尻を下げて笑っている。

「本当に独占欲の塊みたいな男ね」

「ありがとう」

「褒めてないわよ」

そう、今日の私とユリウスの服装は同じ生地、色合いを使ったものだった。ユリウスのコートは白と黒がメインだけれど、裏地などは私のドレスと同じ色だ。

首元のジャボの中心で輝くアメジストも私と同じで、誰がどう見てもペアだった。

「ユリウスがここまで可愛がっている妹に、堂々と声をかけられる男なんて限られているものね」

「そうだね、公爵令息くらいじゃないかな」

「その辺りは直接釘を刺しておいたから、問題ないよ」

ユリウスは笑顔でそう言ってのけ、ミレーヌ様は「本当よくやるわ」と呆れている。

「そ、そうだったんだ……」

ジェニーがあちこちから声を掛けられているのを見かけていたし、よっぽど私は貴族の間で受けない容姿なのかな、なんて考えていたのだ。

まさかそんな理由があったとは思わなかった。

「他の男に声を掛けられなくて残念だった?」

「い、いえ全く! どうでもいいです!」

「それなら良かった。俺もレーネ以外どうでもいいよ」

ちなみに私は満足げに笑うユリウスを、ついさっきまでまともに見られなかった。

正装姿の規格外の格好良さに、ドキドキしすぎて心臓が破裂しそうになっていたからだ。

これまで何度も見てきたはずなのに、こんなにもときめいてしまうのは、今の私には育ちきってしまったユリウスへの恋心があるからだろう。本当に恋というものは人を変えるらしい。

ぎこちなく目線を逸らす私に、ユリウスが気付かないはずもなく。

『レーネのために着飾ったのに。ちゃんと俺を見て』

『本当に許して目が潰れる心臓が爆発する』

会場に入る直前まで、顔を掴まれ至近距離で見つめ合うというショック療法を経て、今に至る。

近くでじっくり見てもユリウスの顔は文句ひとつ付けようがないくらい綺麗で、最終的には芸術品を眺めているような気持ちになり、落ち着くことができた。

「ユリウスも十八歳か。あんなに小さかったのにな」

「お前は俺の何なの?」

「でも、今の方がかわいいわよね。人間らしくて」

「うるさい」

三人のやりとりからは昔から本当に仲が良いのが伝わってきて、笑みがこぼれる。

私の友人達の招待も提案したけれど「色々と気を遣わせたくないし、嫌な大人がたくさん来るから」とのことで、別の機会にまた屋敷に招きたいそうだ。

ちなみに従兄弟のセシルやソフィアにも、今年は来なくていいと言ったらしい。二人からは「面倒だったからありがたい」「こっちのも来なくていい」という旨の返事が来たんだとか。

「ユリウス様、少しよろしいでしょうか?」

「はい」

「ごめんね、また少し──レーネ?」

そうしてこの場を去ろうとするユリウスのコートを、引き止めるように掴む。

「やっぱり迷惑じゃなかったら、私も一緒に行きたい」

去年と変わったのは、ユリウスだけじゃない。あの時は嫌々隣に立っていた私だって、今はユリウスの側にいたい、一緒にいたいと思うようになった。

マナーだって勉強したし、招待客のリストだってしっかり頭に叩き込んできた。

私の言葉にユリウスは一瞬、驚いた表情を浮かべたけれど、やがて嬉しそうに微笑んだ。

「迷惑なはずがないよ。ありがとう、すごく嬉しい」

「それなら良かった」

アーノルドさんとミレーヌ様にまた後でと声を掛け、私はユリウスと共に歩き出した。

◇◇◇

会場に流れる音楽が変わり、いつの間にかパーティーも終わりに近づいていることを知る。

隣に立つユリウスも気が付いたらしく、私に向かって手を差し出す。

「俺と踊っていただけますか?」

「もちろん」

ユリウスに差し出された手を取り、会場中の人々の視線を感じながらホールの中心へ向かう。

音楽に合わせてステップを踏み始めてすぐ、ユリウスは切れ長の目を見開いた。

「レーネ、すごく上手になったね」

「分かる? 実はね、猛練習したんだ」

去年はいきなりパートナーとしてダンスをさせられ、レーネの身体に残っていた感覚と、ユリウスのリードに身を任せることしかできなかった。

けれど、これから先もレーネとして──貴族令嬢として生きていくのだし、もうすぐ社交デビューを迎える以上、ダンスは避けては通れない。

何より少しでもユリウスに近づきたい、釣り合うような人になりたいという気持ちもあって、私は体育祭後から血の滲むような練習をしていたのだ。

「全然気付かなかったな。誰と練習したの?」

「テレーゼと吉田だよ」

今回は侯爵令嬢であり貴族令嬢の鑑のようなテレーゼに指導をお願いし、ユリウスから絶大な信頼を置かれている吉田に相手役をお願いした。

吉田も平民から貴族になったため、今回の練習はありがたいと快諾してくれた。

『レーネ、姿勢が悪くなってきたわ。背筋を伸ばして』

『は、はい!』

『それと無駄が多いわ、ただ動きを大きくすればいいというものではないの』

『分かりました!』

スパルタ指導をしてくれたお蔭で、短期間でかなり上達することができた。ついでに吉田とのシンクロ率も上昇したように思う。