軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

最初で最後の告白を 1

自室のベッドの上で寝転がり、足を揺らしながらぱらぱらとカタログを捲る。

「あ、これかわいいかも」

貴族令嬢なら本来、紅茶でも飲みながら優雅に見るべきなのだろう。完全に伯爵令嬢としてはアウトな体勢だけれど、一人きりの空間ではどうか許してほしい。

私が普段それなりに貴族らしい振る舞いができているのは、身体に染み付いているからだ。

それも全て元々平民だったレーネが頑張った結果だと思うと、抱きしめたくなった。

そんな中、ノック音がして声を掛けると、ユリウスが室内へ入ってくる。

「なに見てるの?」

そばへやってきたユリウスは当然のように私の隣に寝転がり、私の手元へ視線を落とす。

「ドレスのカタログだよ」

「珍しいね。何か欲しいものでもあるの? そこに載ってるもの全部買ってあげようか」

「ナチュラルに怖いこと言うのやめて。ユリウスの誕生日パーティーで着るドレスが欲しくて見てたんだ」

別に隠すことでもないし正直に答えると、ユリウスはアイスブルーの両目を瞬いた。

「それくらい、今年も俺が用意するよ」

「よく考えると去年がおかしかったんだよ。誕生日の主役に用意してもらうなんて」

「俺がレーネにプレゼントしたいだけだから、気にしないで。まだ何の準備もしてなかったけど、そろそろ行動し始めないとな」

溜め息を吐いたユリウスは、去年の誕生日パーティーも常に忙しそうだった。

去年の私は巻き込まれるような形で何もできなかったけれど、今年は少しでも力になれたらいいなと思う。

「誕生日なんて面倒なだけだし、なくていいのに」

「…………」

ユリウスが何気なく発したそんな言葉に悲しくなってしまい、胸が締め付けられる。

もしかするとユリウスは、誕生日にあまり良い思い出がないのかもしれない。

けれど私は大好きなユリウスが生まれてきてくれた日を大切にしたいし、ユリウスにとってもそうであってほしいと思ってしまう。

結局、私のドレスも靴もアクセサリーもユリウスが用意すると言って聞かず、全てお願いすることになってしまった。何でも、良い案を思いついたんだとか。

「レーネは当日、俺の側にいてくれるだけでいいから」

私の誕生日を素晴らしいものにしてくれたというのに、そんな訳にはいかない。プレゼントは絶対に喜んでもらえる品を準備しようと、改めて気合を入れた。

◇◇◇

そして迎えたユリウスの誕生日当日、ウェインライト伯爵邸のホールにて、私は早鐘を打つ心臓の辺りを押さえ苦しんでいた。

いよいよ今日ユリウスに告白をすると思うと、数日前から緊張が止まらない。

「ど、どうしよう……緊張して心臓を吐き出しそう」

「それは大変だね。出てきたら俺が食べてあげる」

「アーノルドさんのお蔭で冷静になれました、ありがとうございます」

グラス片手に笑顔で恐ろしいことを言ってのけるアーノルドさんのお蔭で、一瞬で落ち着くことができた。

私の隣に立っているアーノルドさんは去年同様、招待客の一人だ。ユリウスは今、少し離れた場所で父と共に招待客と話をしている。

『ごめんね、呼ばれたから行ってくるよ』

『私は一緒にいなくていいの? 去年は無理やり隣に居させてたのに』

『あの時はごめんね。今はもうレーネに余計な負担をかけたくないから』

そんなやりとりがあり、私はアーノルドさんといるように言われてしまった。

ユリウスの変化に色々と複雑な気持ちになりつつ、少しでも穏やかに過ごせることを祈るばかりだった。

「あら、二人ともここにいたのね」

「ミレーヌ様!」

やがて青いドレスに身を包んだミレーヌ様がやってきて、その美しさに目がちかちかした。

正装姿のアーノルドさんと並ぶと余計に輝いて見え、直視できなくなる。

二人は辺りの人々の視線をかっさらっており、芸能人や海外スターってこんな感じなんだろうなという感想を抱きながら二人を見上げた。

五時間ぐらいは軽く眺めていられる気がする。

「相変わらず、すごい人ね。伯爵の誕生日の時よりも主要貴族が参加しているじゃない」

「そうなんですか?」

「ええ。ユリウスは注目されているもの。お蔭で人の波が途切れないから、私もまだ話ができていないのよね」

私はまだ社交界や貴族について詳しくないけれど、ミレーヌ様によるとユリウスと懇意になろうとする人は後を絶たないらしい。

この国の筆頭魔法使いであるエリク様にも目をかけられていて、卒業後の進路にも注目されているんだとか。

そういえば卒業後の話についても、聞いたことがないと気付く。やはり私はユリウスについて知らないことが多くて、少しだけ寂しい気持ちになる。

「それにしても今日のレーネ、とてもかわいいわ。そのドレスもよく似合ってる」

「ありがとうございます! ユリウスがプレゼントしてくれたんです」

私が今着ているドレスは、ワインレッドの生地に金糸で美しい刺繍が施され、幾重にも細かなレースが重ねられた華やかで豪華なものだ。

首元やドレスの中心には大きなアメジストが輝いており、この世界のファッションに疎い私でもとても贅沢で高価な品だというのが分かる。

今朝ユリウスに渡された時には、あまりにも素敵でしばらく見惚れてしまったくらいだ。

「こんなに可愛いんだもの、たくさんの男性から声をかけられなかった?」

「そ、それが、全く……」

ユリウスと別れてアーノルドさんと合流するまで私は一人で会場を歩いていたけれど、異性から声をかけられることは一切なかった。

不思議そうに首を傾げるミレーヌ様の肩に、アーノルドさんがぽんと手を置く。

「あはは、ユリウスに会えば分かるよ」

「俺が何だって?」

同時に耳元でそんな声がして、ユリウスに後ろから抱きつかれていた。