軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

告白に向けて 3

ユリウスはルカとのお泊まり会を許せないらしく、就寝前の私の部屋でも不機嫌なまま。

無表情のまま足を組んでソファに座り、頬杖をつくユリウスは絵になりすぎていて、何か命令されると即座に「ハイ」と言ってしまいそうな風格がある。

ルカはいつも寮で一人だし、まだ十五歳なのだから寂しい思いだってしているはず。

土曜日の夜に泊まって日曜日の昼には帰ってくると約束し、なんとか許しを得ることができた。

「じゃあその分、俺とも泊まってよ」

そして隣に座る私を腕の中に閉じ込めながら、ユリウスはそんなことを言ってのける。

「同じ屋根の下で暮らしてるんだし、毎日がお泊まり会みたいなものだよ! わあ贅沢!」

「同じ部屋で寝ようって言ってるんだけど」

「アウトです」

これまで何度もユリウスと寝たことがあるけれど、兄妹だと思っていた頃とは違い、なんというか背徳感や罪悪感のようなものを覚えてしまう。

ただの若い男女なのだし好意がある分、余計によくない気がする。

「じゃ、寝よっか」

「いや私の話、聞いてた? ──わっ」

笑顔のユリウスは私をひょいとお姫様のように抱き上げると、そのままベッドへ向かっていく。そっとベッドの上に下ろされた後、軽くとんと肩を押された。

ぽすんと背中から倒れ込んだ私の上に、影が差す。

「…………っ」

床ドン状態でユリウスが真上にきて、まるで押し倒されたような状況になる。ユリウスは読めない表情で私を見下ろしていて、心臓が早鐘を打つ。

「な、なんでしょう……?」

「むかつくなって」

「だから、ルカは弟で──」

「弟だろうと何だろうと、レーネが俺以外に構うのが腹立つんだよね」

独占欲っていうのかな? なんて疑問をユリウスは口にしたけれど、私に聞かれても困る。

恋愛初心者の私は、こんな状況ではもう呼吸をするだけで精一杯だった。

じっと見下ろされているのが落ち着かなくて恥ずかしくて、いつもみたいな雰囲気になってほしいと思った私は何か冗談を、と必死に頭を働かせる。

「弟にまでやきもちなんて、私のこと好きすぎない?」

「そうだよ。知らなかった?」

そうしてへらりとした笑顔を向けたものの、真顔でそう返されてしまった。

どう考えてもボケ方を間違えてしまったと内心頭を抱えながら、胸が痛いくらいに高鳴るのを感じる。

流石に私がいっぱいいっぱいだと察したのか、ユリウスは小さく笑うと、私の上から隣へと移動した。

添い寝のような状態になり、どうやら今夜は本気でここで眠るつもりらしい。

「こんなところで寝たら、絶対になんか言われるよ」

「朝にはちゃんと部屋に戻るから大丈夫」

確かに私の心配なんて杞憂になるくらい、ユリウスは上手くやってしまうのだろう。

丁寧に毛布をかけてくれるユリウスには何を言っても無駄だろうし、寝かしつけをしてもらうくらいの気持ちでいることにした。

「ユリウスは何の競技に出るの?」

「代表リレーと剣術だよ。優勝するから見にきてね」

何の躊躇いもなくそう言ってのけるあたり、流石だと思う。私が借り物競走とアーチェリーに出ることになったと話すと、ユリウスは楽しげに笑った。

「借り物競走ね。俺は一年の時、アーノルドと仮装競争に出場させられたな」

「えっ、一昨年もあったんだ! 何の格好をしたの?」

ユリウスとアーノルドさんはクラス中の女子生徒に懇願され、断れなかったという。

ルール上、仮装は何でも良いと聞いている。実際の競走としての順位と、仮装のクオリティの総合ポイントで最終的な順位が決まるらしい。

「準備とか面倒だったし、上半身裸で風呂上がりの仮装って走ったら一位だった」

「関係者全員どうかしてるよ」

仮装に関しては運営側の独断と偏見による部分が多いとは聞いていたけれど、もはやそれしか感じられない。真剣に仮装をした人たちに心から謝ってほしい。

とは言え、以前ちらっと見たことがあるけれど、ユリウスの上半身は腹筋も割れていて、まさに肉体美という言葉がぴったりだった。美の暴力で全てを解決してしまうのは反則すぎる。

「ごめんね、もうレーネ以外には見せないから」

「そんな心配してないし、見る予定もないんですけど」

「冷たいね。でも俺はレーネが少しでも露出なんてしたら体育祭、中止にさせるよ」

「厄介すぎない?」

あまりにも勝手すぎるのがおかしくて、なんだか笑えてきてしまう。

けれどユリウス・ウェインライトという人は、これまでどんなことだって許されてきたのかもしれない。それほどに完璧で、圧倒的な存在だった。

「ふわあ……」

ユリウスの穏やかな良い声を聞いていると、だんだんと眠気が込み上げてくる。

好きな異性と一緒のベッドでもしっかり眠れてしまう自分に少し悲しくなりながら、ユリウスにベッドサイドの灯りを消すようお願いした。

やがてふっと暗くなり、毛布越しにユリウスの腕が身体に回される。

「おやすみ、レーネちゃん」

「おやすみなさい」

ドキドキはするのにどこか落ち着いて、不思議な気持ちになりながら、私は眠りについた。

──翌朝、私が目を覚ました時にはもう、ユリウスの姿はなくて。寂しいなんて思ってしまったことは、絶対に内緒にしておこうと思う。