軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

告白に向けて 2

「ふうん」

ルカはあまり納得していない様子だったけれど、私の身体にぎゅっと腕を回した。

いちいち整いすぎた顔が近くて、あまりの眩しさに先程から目が半分程度しか開けられずにいる。

「分かった。俺も協力するよ」

「本当?」

「うん。プレゼントとか、買い物も付き合ってあげる」

「あ、ありがとう! ルカ」

私はあまり自分のセンスに自信がないため、小物までお洒落なルカの存在は心強い。

それにユリウスとルカは似ている部分があるような気がしていて、とても参考になりそうだ。伝えると二人とも怒りそうだから、絶対に口には出せないけれど。

「みんなもありがとう、お蔭で心が決まりました」

「良い報告待ってるよ。ユリウス、泣いちゃうかもね」

「おう! なんかこういう話、結構楽しいな。こいばなって言うんだっけ」

私は迎えが来たというアーノルドさんとヴィリーにお礼を言って見送ると、再び席についた。

一緒に帰ろうと約束をしているユリウスの用事が終わるまで、ここで待っているつもりだ。

ルカは変わらず私の隣で、ぴったりとくっ付いてくれている。よしよしと頭を撫でれば嬉しそうに目を細める姿がかわいくて、笑みがこぼれた。天使だ。

「……姉さんと一緒にいると安心するんだ」

「そうなの?」

「うん。だって姉さんは絶対に俺を裏切らないって、もう分かったから」

そう言えば以前、ユリウスも同じことを言っていた記憶があった。

もちろん私は絶対にルカを裏切ったりなんてしないし嬉しいけれど、いつの間にそこまでの信用を得たのだろうと気になる。そんな私にルカは続けた。

「屋上で俺が手を離した後、一緒に落ちてくれようとしたよね? あの時、姉さんは絶対に俺を見捨てないって確信したんだ。嬉しかったな」

確かにあの時ユリウスが助けてくれなければ、私はそうするつもりだった。どうやらその行動がルカの琴線に触れたらしく、こうして懐いてくれているらしい。

「俺も姉さんが死ぬ時は、一緒に死ぬからね」

「???????」

本当に待ってほしい。何がどうして、そんな考えに至ったのだろう。

「いやいや、全然死なないでほしいんですけども……」

「なんで? 家族なのに」

家族に連帯死制度があるなんて、聞いたことがない。その理論だとまだ見ぬ父まで一緒に死ぬことになってしまうため、どうかやめてほしい。

「ね? 姉さん」

にっこりと微笑むルカからは、やはり強いヤンデレのオーラを感じる。

以前の発言は私を油断させるための演技だと思っていたけれど、素の部分から来ていたのかもしれない。

私が死にかけた場合、さっさと見捨てて生きてとお願いしたけれど、笑顔で流されてしまった。

何故か突然ルカの命を背負ってしまった以上、一分一秒でも長生きしなければ。

「でも、姉さんがあいつと恋人になって、あいつとばっかりいるようになるのは嫌だな」

「そんなことない、ルカとも一緒に遊びたいよ」

「じゃあ今週末は俺とお泊まりしよう? 別々に暮らしてる分、少しでも一緒にいたいんだ」

本当は一緒に暮らしたいけど、と悲しげに長い睫毛を伏せるルカに、胸を締め付けられる。

その願いは叶えられないものの、お泊まりくらいならいくらでもしたい。私としてもルカともっとゆっくり話をしたり、食事をしたりしたいと思っていた。

「もちろんいいよ! お泊まり会しよう!」

「本当? 姉さん、大好き!」

私が頷くと、ルカはぱあっと表情を明るくさせる。かわいいなあと頬が緩むのを感じていると、ルカは私の指に自身の指をするりと絡めた。

「じゃあホテル、とっておくね。俺の部屋じゃゆっくりできないし」

父や平民嫌いの母がいる以上、伯爵邸に呼ぶわけにもいかない。そうするしかないだろう。

「でもお金とか……あ、私が払うから!」

「実は俺、今は色々仕事もやってて結構金持ちなんだ。だから姉さんは気にしないで」

「そ、そうなんだ……?」

確かにルカは賢いけれど、まさかそんなことまでしているとは思わなかった。

やはりユリウスとルカは気が合いそうだと思いつつ、まだ十五歳なのに大丈夫なのだろうか。

色々と気になることはあるけれど、楽しみだと笑みを浮かべるルカがあまりにもかわいくて、私のIQは一桁まで落ちてしまい、もう考えるのをやめた。

「夜は一緒に寝ようね。俺、慣れない場所だと怖くて一人じゃ寝られないんだ」

ルカはナイーブな一面もあるらしく、ここは私が姉らしく守ってあげなければと気合が入る。

任せてとルカの手を握り返そうとした瞬間、ぐいと後ろに身体が引かれ、視界がぶれた。

「お前さ、笑えない冗談はやめたら?」

いつの間にかユリウスがやってきていて、しっかり後ろからホールドされている。

ユリウスは冷ややかなまなざしをルカに向けると、はあと溜め息を吐いた。

「そのぶりっ子キャラ、似合わないからやめなよ。あとレーネを騙さないでくれない?」

「はあ? 俺のこと何も知らないくせに、勝手なこと言うなよ。事実なんだけど?」

「いやあの、落ち着いて」

いきなり一触即発状態の二人に、冷や汗が流れる。

この間は良い感じの雰囲気で三人で仲良くできる日も近いかもしれない、なんて思った頃もあったのに一瞬にして遠ざかってしまった。

「そもそも泊まりとか許さないから」

「姉弟なんだから良くない? 家族水入らずの邪魔しないでほしいんだけど」

「すみません、みなさん落ち着いて……」

「今のレーネの家族は俺だけど」

「はっ、下心まみれの目で姉さんを見ているくせに、何が家族だよ」

もはや話題の中心のはずの私は空気で、二人はばちばちと火花を散らしている。

「死ぬ時は一緒だよねって話をしてたんだ」

「その前に俺がお前を殺すから大丈夫だよ」

「いたたたた」

ルカはぐいと私の腕を引っ張り、ユリウスは私の上半身を後ろに引っ張っている。

「離してくれない?」

「うざ、お前が離せよ」

「いたたたた、あの、どっちも離してください」

これが大岡越前だったなら、どちらも母親だと認められないレベルだ。

結局ユリウスもルカも解放してくれず、私は言い合いを続ける二人の間に入り、三人で手を繋ぐという訳の分からない状況のまま玄関へ向かったのだった。