軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

狩猟大会 6

同時に矢尻は蜘蛛の目を捉え、すかさず右手を放す。

赤い目の間にしっかりと突き刺さった矢により、大毒蜘蛛は「シャアアア!」と叫び苦しむ様子を見せた。その場から動かなくなり、震えもがいている。

「や、やった……!」

「上手だったね、想像以上だ」

私の肩に再び手を置いたユリウスが褒めてくれて、ほっと息を吐く。緊張や震えが治まったのは、間違いなくユリウスの先程の言葉のお蔭だった。

失敗したとしても、絶対にユリウスが蜘蛛を倒してくれるから大丈夫だという安心があったから、落ち着いて矢を射ることができたのだ。

「ありがとう、ユリウス」

「俺は何もしてないよ。後はとどめを刺さないと」

ユリウスと共に苦しみ続ける蜘蛛の側に行くと、思っていたよりも大きくて毛むくじゃらで、毒々しい爪なんかにぞっとする。

「レーネが得意なのは火魔法だよね? 火をイメージしながら、ゆっくり矢に魔力を込めてみて」

「? 分かった」

はじめての指示を不思議に思いながらも、再びTKGを構える。これまではほんの少し意識するだけで、一秒もかからずに矢が現れていたからだ。

集中してユリウスの言う通りにしてみると、火でできた矢はぐんぐんと大きくなり、矢尻の辺りは轟々と燃え盛る火を纏っていく。

「えっ……えええ……!?」

熱っ! と反射で手を離しそうになったものの、私自身は熱を感じないようだった。

やがて火を纏う巨大な矢が完成し、動けなくなっていた大蜘蛛は怯える様子を見せている。私だってこんな矢を向けられれば、すぐに死を覚悟するだろう。

自分がこれほどの、なんというか超強そうな矢を生み出せるとは思っておらず、驚いていた。

「いいよ。放って」

ユリウスの声に頷き、矢を放つ。矢は大蜘蛛の身体の真ん中を貫き、爆音と共に火柱が上がった。

「…………」

あまりの威力に私は声も出ず、TKGを構えたままその場に立ち尽くしていた。

ユリウスのアドバイスがあったとは言え、私一人で大蜘蛛を倒したなんて、信じられない。

「レーネ、すごいじゃない!」

「お前もやるじゃないか」

「うんうん、びっくりしたよ」

けれど、みんなにも口々に褒められ、少しずつ実感が湧いてくる。「焦げ臭いから消しちゃうわね、服に臭いがついたら嫌だし」というミレーヌ様があっさりと水魔法で火を消してくれ、辺りは静かになった。

「やったじゃん」

「う、うん! TKGって本当にすごいね!」

興奮しつつそう話せば、ユリウスは一瞬きょとんとした表情で目を瞬いた後、ふっと口元を緩めた。

「まさか。レーネがずっと頑張ってきたからだよ」

確かにTKGには色々な効果がついているけれど、春先の私では絶対に無理だったし、矢を射ることすらできなかったはずだという。

これまで努力を重ねてきたからこそだと言われ、頭をくしゃりと撫でられ、胸が温かくなった。

ランク試験だけでは分からない部分でも、自分が成長していることを実感し、思わず笑みがこぼれる。

同時にワクワクしてもっと挑戦してみたいという気持ちが顔に出ていたのか、ユリウスは「でも」と続けた。

「今みたいな攻撃は魔力をかなり消費するから、自分の魔力量と相談しながら使わないとね」

「なるほど、気をつけます!」

普段自分の魔力量の感覚がさっぱりない私でも、ごっそり減った感覚がする。きっとこれほどの大技は使えても数回程度だろう。

やはりみんなも、こういった必殺技的なものをそれぞれ隠し持っているのだろうか。吉田も剣技に厨に……じゃない、お洒落な技名をつけていそうだ。

「あ、お仲間が怒ってるみたいだよ」

そんなアーノルドさんの声に顔を上げれば、土蜘蛛の大群がわさわさとやってきて、私達を取り囲んだ。そのおぞましい、気持ち悪い光景に眩暈がした。

「私、こういうの本当に無理なのよね。こいつらってなんで生きているのかしら? さっさと殺しましょう」

氷のように冷たい目をしたミレーヌ様が大きな溜め息を吐き、各々武器を構えた時だった。

「──何、この音」

突如、ゴゴゴゴと大きな地鳴りみたいな音がして、地震の如く地面が揺れる。ユリウスは誰よりも早く動き私を庇うように立つと、アイスブルーの目を細めた。

空気がぴんと張り詰め、魔力感知がからっきしな私ですら、重い魔力に息苦しさすら感じる。

「な、なに……!?」

私達を囲んでいた蜘蛛たちも、逃げ出すように散り散りにこの場から離れていく。

まさに蜘蛛の子を散らす、というのはこういうことだろうと、どこか他人事で妙な感動をした時だった。

「…………え」

目の前には雪山のような白く巨大な影が現れ、見上げた先では大きな二つの金色が光っている。

それが生物だと理解するのに、少しの時間を要した。

「レーネ!」

ユリウスにきつく腕を掴まれ引き寄せられてすぐ、私達が立っていた地面は音を立てて崩れ、足元から深い闇に飲み込まれていった。