軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

ランク試験(一年冬) 2

「お守りなんだ。見栄えはそんなに良くないけど、手作りだから気持ちはこもってます」

このピンク色のお守りは勉強の合間、ちくちくと夜なべして作った。日本でよく見る形のお守りにしたため、ユリウスからすると見慣れないかもしれない。

先日のデートや日頃のお礼をしたいと悩みに悩んだ結果、お守りを作ってみたのだ。

私が買えるユリウスが欲しいもの、というのは思い付かず、とにかく気持ちを込めることをメインにした。

「しかもなんと、私とお揃いでして」

照れながらも「じゃーん」と、自分の分の水色のお守りを取り出してみせる。するとユリウスのアイスブルーの目が、少しだけ見開かれた。

私がピンクでユリウスが水色のつもりで布を用意したけれど、やっぱり私達はこっちの方がしっくりくる。

何より、ユリウスはこっちの方が喜んでくれるという確信があった。

ユリウスは差し出したお守りを手に取ると、まるで宝物に触れるように指先でそっと撫でる。

「ありがとう、レーネ。すごく嬉しい」

「本当? 良かった!」

「多分レーネが想像してるよりずっと喜んでるよ、俺」

子供みたいな眩しい笑顔に、小さく心臓が跳ねた。

ユリウスへの恩返しとしてはまだまだ足りないものの喜んでもらえたようで、つられて笑みがこぼれる。

「大事にするね。俺も絶対にSランクに戻るから」

そう言ってユリウスはお守りを唇に軽くあててみせるものだから、つい動揺し笑われてしまった。

◇◇◇

それから五時間後、全ての筆記試験を終えた昼休み、私とヴィリーは二人仲良く頭を抱えていた。

「やべえ、全然分からなくて半分も埋めれなかったわ。しかもその半分勘だったし」

「私も魔法史やばい気がしてる……あああ……」

頑張らなければ結果は出ないものの、頑張ったからと言って、必ず結果が出るわけではないのが世の常。

3時限目までは何とか耐えた気がしたけれど、4時限目の魔法史はかなり危険な気がしてならない。

そもそもこの世界のことすらさっぱり分かっていないと言うのに、その歴史なんて私にはまだ早すぎる。

とは言え、Sランクになるためにはいずれ満点近く取らなければならないのだ。テストが返ってきたら復習を頑張ろうと決めて、気持ちを切り替える。

そうして元気にサンドイッチを食べ始めると、ヴィリーに「お前の切り替えの速さすごいな」と褒められた。

「レーネちゃん、あんなに頑張ってたから大丈夫だよ。あ、このデザート好きだったよね? あげる」

「ありがとう! ラインハルトは手応えどうだった?」

「僕はまあまあかな。とりあえずCランクをキープしたいなとは思ってるけど」

「ラインハルトこそ頑張ってたし、Bもいけるよ!」

膨大な魔力量を持つラインハルトは、それだけでかなりのアドバンテージがある。その上、努力もかなり重ねているため、誰よりも伸び代があるだろう。

とは言え、ラインハルトも自身の魔力量の数値は分からないようで、今度調べてみたいと話していた。

そんな中、ヴィリーが「セオドアもすげーんだよな、魔力量」と王子へ視線を向けた。確かにすごそうだ。

「セオドア様は魔力量の数値、ご存知ですか?」

「87」

「えっ、すごいですね!」

「…………」

元々王族は魔力量が潤沢らしく、その中でも王子はトップクラスだという。周りのレベルが桁違いすぎて、普通が何なのか分からなくなりそうだ。

ちなみに最近、王子と吉田はよく一般の食堂で昼食をとっていた。私達と一緒に食べるためなのかな、なんて私は勝手に都合の良い解釈をしている。

「吉田はどうだった? 筆記試験」

「まあ、それなりだ。お前はとにかく試験が終わって家に帰るまで、気は抜くなよ。そこまでがランク試験だ」

「はい! 気を付けます!」

前回のランク試験では誘拐され閉じ込められるというとんでもない事件があったため、今回はヴィリーとテレーゼにぴったりとくっついて常に行動している。

とは言え、ジェニーも前回ユリウスにしわ寄せがいってしまったことで、もうあんな行動には出ないはず。

「次は技術試験だし、そろそろ行きましょうか」

「そうだね」

そして私は気合を入れるため、みんなと元気にハイタッチをしてから食堂を後にすることにした。

「この後も頑張ろうね! はい吉田! タッチ!」

「……一体、何の意味があるんだ」

嫌々手を出す吉田、笑顔のラインハルトの後、王子は既に手を出して待っていてくれて、大変かわいかった。

その後、無事に技術試験と魔力測定を終えた私は、緊張しながら教室で発表の時を待っていた。胸元のブローチを隠すように手で覆いつつ、周りの様子を窺う。

「ゲホッ、ゴホッ……やばい今ので心臓吐いたかも」

「怖すぎだろ」

「やっぱりこの瞬間は緊張するわよね」

「そうか? 俺はもう開き直ってる」

何においても秀でているテレーゼですら、多少は緊張するらしい。一方、ヴィリーはもうダメだと諦めたのか椅子に思い切り背を預け、呑気に欠伸までしていた。

「神様仏様……どうか間違ってCランクに……」

──学園祭も、みんな頑張ってくれた。私だって、これ以上ないくらい頑張った。やはり結果はほしい。

「やったわ! 2つも上がった!」

「どうしよう、Eランクまで落ちた……」

やがて教室のあちこちで声が上がり始め、それぞれのブローチの色が変わったのだと悟る。

「おっ! 結果出たみたいだな」

「や、やっぱりヴィリー、代わりに見て!」

「またかよ、って俺は青じゃん! あぶねー、耐えた」

Cランクをキープしたらしいヴィリーに向き直ると、私は固く目を閉じ、恐る恐るブローチから手を避けた。