軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

恋を知る 4

吹き出した私にユリウスは「かけるなら俺にしてよ」と訳の分からないことを言いながら、すぐに取り出したハンカチで口元を拭いてくれる。

私はお礼を言うのも忘れ、驚きを隠せずにいた。

「いや、いやいやいやいや」

「どうかした?」

「91って何?」

「俺の魔力量だけど」

大したことのないようにユリウスはそう言ってのけ、すぐに店員に新しい私の飲み物を頼んでくれる。

この国で一番の魔法使いで98なのだから、91がどれほど規格外なのかということは私にも分かった。その上まだ成長中だなんて、恐ろしすぎる。

ユリウスがすごいというのは分かっていたものの、ここまでチートな存在だとは思っていなかった。学園内どころか、国レベルの魔法使いではないだろうか。

「その実力や才能から、既に魔法師団や騎士団からもスカウトされているんですよ」

「ええ……」

先輩の先輩も苦笑いをしており、やはりユリウスは学園では収まらないほどの有名人らしい。

「俺、結構すごいんだよね。好きになった?」

「好きと言うより、怖くなりまして……」

「出た、それ」

こんな人が私を好きだなんて事実が、一番怖い。

誰だって芸能人のような雲の上の人が平々凡々な自分を好きだと知ったら、怖いと感じるに違いない。

「ま、俺のことはもういいよ。レーネのこの魔力なら、どの程度のことができますか?」

「この数値だと、複数属性を組み合わせた魔法も使えますよ。魔法付与に関しても中級までなら余裕かと。もちろん技術面のスキルも必要になってきますが」

「えっ? 本当ですか?」

そもそも過去、ひとつの魔法の威力すら超絶しょぼかった私は無理だと思って、複数の属性を組み合わせる魔法などチャレンジすらしていなかった。

「はい。今のレーネさんなら、必ず」

笑顔で深く頷いてくれた先輩の先輩に、胸が高鳴る。

やはり、これまでできなかったことができるようになるというのは、いつになってもワクワクしてしまう。

「ありがとうございます! 私、頑張ります!」

「陰ながら応援していますね」

それからも色々とアドバイスを受け、私は何度もお礼を言うと、先輩の先輩と別れカフェを後にした。

いつの間にかごく自然に手を繋がれており、二人で久しぶりの王都の街中を歩いていく。

「ユリウス、ありがとう。色々知れたことで、これからはもっともっと頑張れる気がする!」

「それはよかった。ランク試験の自信にもなったね」

「うん! まさかこんなに上がってたなんて……」

「俺の愛、伝わった?」

「そ、それはもう……お陰様で……」

「あはは」

ユリウスは間違いなく冗談だと思っているけれど、こちらとしては事実のため、変な汗が出てくる。

相変わらずユリウスは道行く人々の視線を男女共にかっさらっており、小さな女の子なんて見惚れた末に手に持っていたキャンディを落としてしまっていた。

その罪深さに恐ろしくなりつつ、私は帰ったらまた勉強を頑張ろうと気合を入れ直す。

「それにしてもユリウス、すごかったな」

「そうみたいだね」

「どんなことだってできそうだし、どんなものにもなれそうだもん。ユリウスは将来、何になりたいの?」

そして何気なくそう尋ねればユリウスは歩みを止め、何故か無言になった。

口元には一応笑みは浮かんだままではあるものの、何かまずいことを聞いてしまったかと、不安になる。

「…………」

「ユリウス?」

「ああ、ごめん」

やがて少し困ったような表情をしたユリウスは、小さく肩をすくめてみせた。

「目的を達成した後はどうしようかなんて、一切考えてなかったなって思ってさ」

「……そうなんだ」

やはりそれも、以前言っていた「復讐」に関することなのだろうか。気になるものの聞いてはいけない気がして口を閉ざしていると、それが顔に出てしまっていたのかユリウスはくすりと笑った。

「気になるって顔してる。レーネが俺のこと、気にしてくれるのは嬉しいな」

「気にならない方がおかしいよ」

「レーネが俺のこと、好きになってくれたら教えるよ」

ユリウスはそう言っていつも通りの笑顔を向けると、再び私の手を引き、歩き出した。

◇◇◇

その後も「デート」として買い物をしたり、小さなお祭りの出店を見て回ったりと、とても楽しく過ごした。

ユリウスの細やかな気遣いや話術により、私はずっと笑っていたように思う。ランク試験への緊張なんかもふっ飛ぶくらい、本当に楽しかった。

そして今は、思わず背筋が伸びるような高級なお店にて昼食をとっている。間違いなく学生がふらりと入るような場所ではないものの、ユリウスは手慣れた様子で、本当に17歳なのかと突っ込みたくなった。

「な、何もかも美味しすぎて永遠に食べられそう……」

「この店のメニュー、全部頼もうか?」

「本当にやりそうだからやめて」

ほっぺたが落ちそうになりながら、見た目からして華やかでキラキラした料理をいただいていく。

いつも思うけれど、ユリウスはすべての所作も恐ろしく綺麗だ。貴族はみんな幼い頃から学んでいるようでみんな綺麗だけれど、その中でも特別な気がする。

「ユリウスって、かっこ悪い瞬間とかないの? 棚の角に小指をぶつけて苦しんだりとかしない?」

「あはは、なにそれ。俺としてはもっとかっこいい所を見せたいんだけどな。……あ、そうだ」

ユリウスは何かを思い出したように、顔を上げる。

「冬休み時期に公爵家主催の狩猟大会があるんだ。今までは面倒で断ってたけど、レーネのために出ようかな」

「狩猟大会?」

「うん。ベルマン山で」

なぜわざわざ寒い冬に山の中で……と思ったものの、冬には雪兎や氷狼といった美しい見た目の魔物が多く現れるんだとか。それらの毛皮なども貴重で高価らしい。

男性達は女性達に狩ってきた自身の獲物を捧げ、一番珍しい獲物、大きな獲物、たくさんの獲物を捧げられた女性がその年の「雪の女王」となるんだとか。

男女共に人気のイベントらしく、毎年多くの人が参加するという。確かに自分のために男性が戦い、その獲物を捧げられるというのは、ときめくのかもしれない。

「去年はヨシダくんも騎士団長のお父様と出てたはず」

「さすが吉田……って、ハッ……まさか吉田も女性に獲物を捧げて……!? ジェラシーなんですけど」

「必ずそうする必要はないし、家族の女性に捧げる人もいるからね。ヨシダくんは後者な気がするな」

「あ、確かに」

「て言うか俺には嫉妬してくれないのに、ヨシダくんに嫉妬するのはなんなの? おかしいよね?」

頬をつねられ、スミマセンと必死に言葉を紡ぐ。

吉田には癖の強い美女と美少女のお姉さんがいるし、二人に捧げていそうだ。