軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第16話 ちゃんと試験に受かったしな

「師匠! 探しましたよ!」

「勝手にどっか行かないでよ! まだ話は終わってないんだから!」

「そ、そうです!」

黒の学院から出て、さてこれからどうしようかと思っていると、また三人組に見つかってしまった。

「赤魔法ですよね!?」

「青魔法よね!」

「緑魔法ですっ!」

まだその意味のない議論を続けていたのか。

俺は溜息を吐きつつ言う。

「どれかを選ぶつもりなどない。最初からすべての学院にも通うつもりだぞ」

三人は目を剥いた。

「さ、さすがにそれは無茶っすよっ?」

「そうよっ! 一人で三つの学院に通うなんてっ……」

「二つの魔法を習得しようとする人ですら、まずいないんですよ……っ?」

ふむ。

どうやら彼らは三つだけだと思っているらしい。

「違うぞ。俺は赤、青、緑、黄、白、黒、計六つの学院すべてに入学するつもりだぞ」

「「「……は?」」」

「六つともちゃんと試験に受かったしな」

正確には黒の学院には試験がなかったが。

「「「ええええええええっ!?」」」

諸々の入学手続きが終わった。

それぞれの学院が独立しているためだろうが、同時に複数の学院に入学することについて、どこからも何も言われなかった。

ちゃんと六つすべてから学生証を発行してもらえたし、たぶん問題ないだろう。

学院によって多少の差異はあるものの、基本的にはどこも三つの 学級(グレード) に分かれているらしい。

ファーストグレード:実技では戦闘訓練や上級魔法までの習得を、座学では魔法術式の基礎の習得を目指す。

セカンドグレード:教授が指導する研究室に入り、専門分野の学習、訓練、研究を行う。

トップグレード:将来の教授候補で、研究室を与えられて自由に研究ができる。

もちろん入学したばかりの生徒たちは全員、ファーストグレードだ。

ちなみに課程は二年間あり、成績によって留年したり逆に飛び級できたりするという。

「……ふむ。講義が被ってしまうな」

「それはそうっすよ、師匠! だから六つも同時になんて無理だって言ったんです!」

早速、俺は大きな問題に直面してしまっていた。

それぞれの学院における講義の時間が被ってしまったのだ。

当然ながら俺の身体は一つしかないため、同時に受講することはできない。

「だが出席点はそれほど高くないようだな。試験で高得点を取りさえすれば、授業に出る必要はなさそうだ」

「いやいや、授業に出ずに試験は無理ですよっ?」

「心配はない。講義内容については、誰かにノートを見せてもらえばいい」

幸い三つは当てがある。

もちろん、カイト、クーファ、コレットの三人である。

あと黒の学院にはそもそも授業自体がないので、残るは二つだけだ。

「……ま、まぁ、師匠のためならそれくらいはしますけど……」

とりあえず今日は赤の学院の講義を受けるつもりだった。

講義室に入ると、どこかで見た顔があった。

「っ……お前はっ……」

誰だったっけな?

こっちをめちゃくちゃ睨んできているが、ちょっと思い出せない。

まぁ別に誰でもいいか。

特に実害はなさそうだしな。

俺は彼の前をスルーして奥の座席へと向かう。

「おいっ! 僕を無視するんじゃない!」

ふむ?

どうやら話しかけて欲しかったらしい。

「あっ、お前、試験のときの負け犬じゃねーか」

と、そこで遅れて講義室に入ってきたカイトが彼を指差してそう言った。

「だ、誰が負け犬だっ! 僕は君に負けた覚えなどない!」

「師匠に負けたじゃねーか」

「ふむ。思い出したぞ。確か、入学試験のときにミスリル製の人形を破壊できずに泣いていた少年か」

「泣いてなんかない! そ、それにあれは何かの間違いだ! 【上級職】の《魔導師》であるこの僕ができないことを、ただの《魔術師》にできるはずがない!」

どうやら俺のことを勝手に【基本職】の《魔術師》だと思っているらしい。

「俺は《魔術師》ではないぞ」

「っ……や、やはりか。道理でおかしいと思っていた。まぁ同じ新入生とは言え、その歳だからな。《魔導師》でもおかしくは――」

「いや、《魔導師》でもない」

「なっ? だとすれば、まさか《魔導王》っ? い、いや、でもこの都市の学院長以外に《魔導王》がいるなんて、聞いたこともないし……」

《魔導王》は【最上級職】だ。

その言葉を聞いた生徒たちの「まさか……」という視線が集中してくる中、俺は告げた。

「俺は《魔導王》でもない。ただの《無職》だ」

「……は?」

ちょうどそのとき、講義室に講師と思われる男性が入ってきた。

彼はざわめく講義室内を少し不思議そうに見回した後、

「……では、これから授業を始める」

何事もなかったかのように最初の講義をスタートさせようとした。

「ちょ、ちょっと待ってくれっ」

それを遮ったのは先ほどの少年である。

「さ、さっきのは本当なのかっ? いや、本当のはずがないっ! お前の職業が《無職》だなんて……」

「本当だぞ」

「嘘を吐くな! 《無職》が魔法を使えるわけがないだろう!?」

俺と少年が言い合っていると、そこへ講師が割り込んできた。

「ロイス。彼の言っていることは本当だ。私も驚かされたが、正式な鑑定書でも確認済みだ」

どうやら少年はロイスという名らしい。

てかこの講師、よく見ると入学試験を監督していた試験官だ。

「そ、そんな馬鹿な……あ、あり得ない……」

「私もそう思う。だが、恐らく何らかの原因により、正しい鑑定ができていないだけだと私は考えている。あの試験のときに見せた魔法からして、実際には《魔導師》なのだろう。明らかに彼は〈赤魔法・上級〉のスキルを持っている」

「なるほど……」

……ふむ。

そんな考え方もあるにはあるのか。

だが俺、〈赤魔法・上級〉のスキルなんて持ってないぞ。

術式をいつも自力で構築してるしな。