軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第15話 すべて自己責任でお願いするわぁ

父さんから教えてもらえなかったため俺は使えないが、黒魔法の中には死者を操るいわゆる死霊術と呼ばれる魔法も存在するという。

恐らく目の前の骸骨系アンデッドは、この学院の誰かが生み出したものだろう。

「ほんとうに酷いわぁ……いきなりレディの首を斬るなんて……ていうか、魔法使いとは思えない速さだったんだけど……」

言いながら、その骸骨は頭蓋を首の上にはめ込んだ。

頭蓋を左右に振って、コキコキ、という音が鳴る。

どうやらくっ付いたようだ。

「レディなのか?」

「どこからどう見てもレディじゃないの!」

どこからどう見てもただの骸骨だが。

「しかし不思議だな。どこから声が出てるんだ?」

当然ながら声帯などあるはずもない。

俺はまじまじとその骸骨を観察する。

すると骸骨はくねくねと身体を揺らして、

「いやん……いくらあたしが可愛いからって、そんなに見つめられると恥ずかしいわふぎゃっ!? こ、今度は両脚がっ……両脚が切断された!? 何するのよぉっ!?」

「動きが気持ち悪くて、つい」

骸骨は大腿骨をくっ付け、立ち上がった。

「……あなた、可愛い顔して結構容赦ないのね……うふふ、でもそんなところもいいかもぶぎゃぁっ!?」

今度は頭蓋を縦に真っ二つにしてみた。

「ねぇ何で!? あたしに恨みでもあるの!?」

「ふむ。その状態でも声を出せるのか。面白いな」

「初対面の骸骨で実験しないでくれるかしらっ!?」

叫びながら、ぱっかりと割れた頭蓋を両側から押さえる骸骨。

あっという間に切断面が綺麗に消えてしまった。

「もしかして加護に近いものが働いているのだろうか? ……骨の一部を取り除いたらどうだ?」

「もうやめてよ!?」

おっと。

そういえば、こんなことするためにここに来たわけではなかったな。

「ここが学院の事務だと聞いたのだが」

「……そ、そうよぉ。あたしはラタリア。見ての通りの美人事務員よ」

もしかしてこの骸骨、鏡を見ることができないのだろうか?

「他に事務員はいないのか?」

「残念だけど、あたししかいないのよぉ。この学院、教員も生徒も少ないから。もっとも、あたしの仕事が速すぎて全部一人でやれちゃうっていうのもあるんだけれど」

「その割には校舎も備品もボロボロだな」

「お金がないからしかたないのよぉ」

「掃除すらしてないようだが?」

「か弱いレディにそんな重労働はできないわぁ」

レディかどうかはともかく、確かに非力そうではある。

何せ筋肉ない。骨だけだ。

訊けば、彼女はこの学院の学院長によって使役されているらしい。

恐らく人を雇うとお金がないのだろう。

「ほんと、最悪な雇い主なのよ! 骨使いは荒いし! 給料は低いし! おまけに素敵な出会いもないし!」

むしろちゃんと給料を貰えていることに俺は驚いた。

「あ~あ、誰かここで一緒に働いてくれないかしらぁ? ちらちら。……いずれあたしと恋に落ちてくれるようなイケメンで……ちらちら……ちょっとくらいSっ気があった方が、案外あたし的には好みかも……ちらちら」

なぜか俺の方を何度も見ながら願望を語るラタリアだが、彼女は骸骨だし、好みの相手もきっと骸骨なのだろう。

しかし骸骨のイケメンというのは、一体どんな骸骨なのか。

疑問に思ったが、別に興味はないので俺はとっとと入学試験のことを訊くことにした。

「試験なんてないわよ?」

「なに? じゃあ生徒を募集してないのか?」

「確かに募集はしてないわね。だけど入学は制限してないわぁ」

骸骨――ラタリアが言うには、どうやらこの学院は入学試験を行っておらず、入りたい者は誰でも入ることができるのだとか。

「そもそも黒魔法を学ぼうなんて子がほとんどいないし、むしろこっちから入学をお願いしたいくらいなのよぉ」

話には訊いていたが、そんなに不人気なんだな。

「しかもせっかく来た生徒は、あたしを見て逃げてっちゃうし……ほんと、失礼しちゃうわね」

「天井から逆さまに現れるからだろう」

まぁあの程度で逃げ出すようでは、とてもこの学院ではやっていけないだろうが。

「とにかく、入学したいというなら歓迎するわぁ」

手続きも何もないらしい。

かなり適当だ。

講義もないのだとか。

「だけど学院の施設は自由に使ってもらって構わないわぁ。全部ボロボロだけれど。でもここの図書館、黒魔法についての貴重な文献が沢山あるのよぉ。たまに危険な魔導書が隠れてたりするからその辺は気をつけてね。下手したら呪われたり、異界に引きづり込まれたりしちゃうから。当然、何かあってもすべて自己責任でお願いするわぁ」

他にも学院内には危険なスポットがたくさんあるらしい。

よく生徒の変死体が見つかるとか。

「ちなみにここに来る途中、トイレから声が聞こえてきたんだが、あれは?」

トイレに入ろうと思ったのだが、嫌な予感がしてやめておいたのだ。

「トイレのメリーちゃんね。あたしのお友達よぉ。でも安心して。あの子、良いゴーストだから。たまに悪戯でお尻にカンチョーしてくるけど」

ふむ。

死霊術を覚えたら、真っ先に浄化するか。

わざわざ学院の外のトイレを使うのは面倒だしな。

「もし必要だったら、寮も部屋が余ってるから好きなところを使ってちょうだい。ほら、あそこに見えるでしょ?」

ラタリアが指差す方向を見ると、とりわけ年季の入った幽霊屋敷のような建物が見えた。

……他の学院の寮を使った方が良さそうだな。