軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

44 一連の結末①

「ザイトヘル伯爵! お助け下さい! わたくしと結婚を希望されているのでしょう!? わたくしは貴方の元に嫁ぎます!」

そう叫んだリリアにギョッとする。

名指しされたザイトヘル伯爵は、とても愉快そうにリリアを見た。

「これはこれは。本当に凄いお嬢さんだ。その度胸は買うがね? 私はもうすでに君への婚約の打診は取り下げているのだよ。そうだろう? ローガスト伯爵」

ザイトヘル伯爵の言葉に、ようやく顔を上げたローガスト伯爵は、とても疲れたような表情で頷いた。

「はい……先日のパーティの後、直ぐに打診は撤回されました……」

「聞いてないわよ、お父様!?」

父親の言葉に、リリアが目を見開いてそう叫ぶ。

「お前は元々嫌がっていただろう。だから言わなくても気にしないと思ったのだ。どうせお前は私に隠れて、色々と画策しておった頃なのだろうて。一切伯爵の事を聞きもしなかったくせに」

恨みがましい視線で、そう言ってローガスト伯爵はリリアを見て言った。

「そ、そんな……」

万策尽きたかのように、その場に座り込んだリリアは、衛兵に引っ張られるようにして立たされる。そして私をキッと再度睨み付けた。

「いつも人の顔色を窺って、言うことを聞くしか能がなかったくせに、なんで今になってこんな事を! 黙ってやられていれば良かったのに!」

私にそう叫びながら、リリアは衛兵に連れ出されていく。

その姿を私はただ黙って見つめていた。

「シンディよ、他にも色々聞きたいことがある。良いか?」

陛下の言葉に私は向き直り、頷いた。

「勿論でございます。ですが、ここからのお話は、皆様にお聞かせするのは憚れます。申し訳ございませんが、ここでお開きとさせて下さいませ」

会合の終了を告げると共に、ザイトヘル伯爵に向き直る。

「ザイトヘル伯爵、此度は貴方様への謝罪の場となる所、このような形となり、誠に申し訳ございませんでした。重ね重ね謝罪申し上げます」

ザイトヘル伯爵に向かって頭を下げながら、丁重に謝罪する。

「シンディ妃殿下がお気にすることではないですよ。逆に、見事な手腕に感服したものです。頭をお上げ下さい」

その様子を見てザイトヘル伯爵は、私にそう言ってくれた。

「ただ……」

私の後ろに目を向けた伯爵は、そう切り出す。

「この後、両陛下とお話しする時に私も同席させて頂きたい。貴女をお助けすることが出来るやもしれません」

ザイトヘル伯爵の意図が分からず、私は躊躇する。それに、これからの話は、今後の私の進退にも関わることだ。

何の関係もないザイトヘル伯爵に同席されるのは、抵抗を感じる。

その気持ちを感じ取ったのか、ザイトヘル伯爵は、困った顔で伝えてきた。

「これは申し訳ない。王家の内情に踏み込むつもりはないのですよ。ただ、これから貴女様のお立場が不利になるようでしたら、お力になれないかと思ったまでです」

ザイトヘル伯爵はそう言った後、小声で私にだけ聞こえるように伝えてくる。

「私は、貴女様に協力した者の一人なのでね」

その言葉にビックリして、ザイトヘル伯爵の顔を凝視する。

「お困りになった時は、いつでもお呼び頂ければと。私も両陛下にお伝えしたい事がありますので」

ザイトヘル伯爵の言葉に、少し戸惑う気持ちはあるものの私は頷いた。

私に協力したとは、一体どういう事なのだろう?

でも、今はそれを問いただしている暇は無い。

私は、他の招待客を見送った後、両陛下の待つ部屋に向かった。

****

「陛下並びに王妃様、お待たせし申し訳ございません」

招待客を丁重にお見送りした後、私は両陛下の待つ、謁見の間にやってきた。

「よい。むしろアレの後始末をさせてしまい、手間をかけた」

「もったいないお言葉でございます」

陛下の言葉を丁寧に受け取る。

「では、きちんと話を聞かせてもらおう。そなたは学生時代より、あの二人が恋仲であったことは知らなかったのか?」

「はい。かつてローガスト伯爵令嬢はわたくしの親友と思っていたほど、信用しておりました。彼女はサイモン様と通じているような素振りは、一切見せませんでしたから」

「そうか……」

気の毒そうに陛下は私を見た。

王妃様も同様だ。

「そなたは、あの一連の事を全て自分で調べたのか? 非合法の薬屋の事、そして購入した薬草とその内容までしっかりと把握しておった。それにアレらの密会方法まで。どうやったのだ? 影から先程報告を受けたが、そなたは影が知り得る以上の事を知っておったようだが」

聞かれると思った。

もし聞かれたなら、その時は話してもいいと予めヴァルに言われていたのを思い出す。

「わたくしの専属護衛騎士のおかげでございます。その騎士は元聖騎士であり、かつて仲間であった現聖騎士の方の能力もお借りし、色々な事を知る事が出来ました。ただ……」

そこで一旦言葉を切り、両陛下を見る。

「聖騎士は聖教会所属にて、その特殊能力は極秘とされております。今回は特別に専属騎士との繋がりにて力をお貸し下さったまで。その聖騎士の事に関しては、これ以上の事をお伝えする事は出来ません」

はっきりとそう伝えた。

いくら王家といえど、世界をまたぐ聖教会に干渉する力はない。

まして、そこの所属である特殊能力を持つ聖騎士団についての情報は、極秘事項だ。

どうしても力が借りたい時は、王家でも聖教会に頭を下げて協力をしてもらうしかない。

それ程、聖教会の力は絶大であった。

リック様を見ていると、そんな偉大な方に感じなかったけれど……

「なんと! そのような騎士がおったのか! その騎士は何故、聖騎士を辞めたのだ? 聖騎士の方がより多くの特権を得るであろうに」

「その騎士の能力は開花しなかったと聞いております。ゆえに教会を出て、王宮騎士になったと」

きちんと言っておかなければならない。でないとヴァルを取られてしまう。

「その騎士はわたくしの専属護衛騎士として、剣を遣わしております」

王家の決まりで、自分だけの護衛騎士と認めるという風習。

この事で、仕える相手が代わる事を防ぐ。

勿論、それには双方の合意が必要。

これにより、ヴァルを他の王族に取られる心配はない……はず。

「そうか……」

陛下は案の定、とても残念そうにそう言った。

「では後でその者に褒美を遣わそう。どのような者か会ってみたいしな」

先程の会合の場で、サイモン様の後ろで睨みを利かせていた騎士ですよ。

心の中でそう答えた。