作品タイトル不明
55.大変なこと
「っ……!?」
ギルドマスターとの会話を続けている最中、突然結界付近で巨大な反応がした。あまりにも邪悪な反応……だったが、あまりにも一瞬だった。
誤探知か……? とも思ったが、しかしそれにしては反応が大きすぎる。恐らく魔族と見て間違いないが、これほどまでの反応は感じたことがない。
「……何かあったのか?」
「大丈夫かい、シセ?」
ギルドマスターが怪訝な表情を、ウェイド辺境伯が心配そうな表情を浮かべて私の顔を見てきている。
「少しというか……結界内にかなり大きな反応を感じまして。しかしあまりにも一瞬で判断が取れず……」
「魔族か?」
ギルドマスターの問いに、私はどうにか頷く。
「恐らくは……けれど、本当に判断に迷う時間だったので……誤探知の可能性も拭いきれません」
この状況下では、決して断言することはできなかった。本当に何かの間違いかと思う刹那の時間だったのは間違いないので、それだけでギルドを大きく動かすようなことはできない。
「ふむ。しかし反応があったからには放置することはできないな」
「そうですね。ここは私が出向いて確認をしてきます」
「すまない。よろしく頼むよ」
私はそう言って、すぐに転移魔法の準備をする。ウェイド辺境伯は心配そうに私の方を見て言ってきた。
「俺は着いていった方がいいか……?」
「いえ。念のため、ウェイド辺境伯は待機していてください」
考えるに、もしこの反応が間違いないのであれば、恐らく相手は魔力反応を隠蔽できるような存在だ。ともなれば、あれほどまでの反応を制御できるということは、かなりの手練れとみていいだろう。
ウェイド辺境伯の優しさはありがたいが、さすがに領主に万が一のことがあったら困る。直近で領地も拡大しているのだから、もしものことがあれば大混乱に陥ってしまうだろう。
ひとまずここは私単独で行っておくべきだ。
「分かった……頼んだよ、シセ」
私は頷いて、転移魔法陣をくぐる。転移場所は反応があった場所ピンポイントである。ここで何かがあったのは間違いないが……。
「……あれは」
そこには、馬車の残骸が転がっていた。そしてすぐに理解する。この馬車がルヴィン王子が乗っていたものであると。
私は近づき、中を確認してみる。
「いない……が、少なくとも襲われたのは間違いないか」
ルヴィン王子の身など気にするようなことでもないが、しかしこればかりは別である。領地内に巨大な何かが迫ってきているのは間違いない。
これは……かなり大変なことになりそうだ。