軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

5.冒険者ギルド

私とウェイド辺境伯は、一緒に街の中を歩く。辺境伯、ということなのだから田舎のようにも思うが、意外と街は栄えている。

人も多いし、建物も多い。それに、ここで暮らしているみんなが幸せそうにしていた。王都では忙しそうにする人や、生活に困窮する人。そんな方たちが数多くいた。

街を見るだけでも領主の手腕は分かるというが、本当にその通りだと思う。

「ウェイド辺境伯〜!」

「おっと、どうした坊主。アイスなんか持っちゃって、ママに買って貰ったのかい?」

パタパタと少年が歩いてきて、キラキラとした瞳でウェイド辺境伯を見る。しかし手には二個のアイスがある。この子一人で食べるには、少し気合いがいりそうな気がするけれど。

「うん! ママに買って貰ったんだけど、ぼくのじゃないんだ! ママがウェイド辺境伯と領地を助けてくれた女の子に渡してって!」

少年の言葉を聞いて、私とウェイド辺境伯は目を見開く。しかしウェイド辺境伯はすぐに笑って、少年の頭を撫でた。

「そりゃ嬉しいな。ありがとう、せっかくだし貰っとくよ。ママにもめちゃくちゃ喜んでたって伝えてくれないかい?」

「分かった! また遊ぼうね、ウェイド辺境伯!」

「もちろんだ。今度はかくれんぼでもしよう」

少年は満足そうにしながら、母親の元へと駆けていく。ウェイド辺境伯は嬉しそうに眺めた後、こちらに向いてアイスを渡してくれた。

「ほら嬢ちゃん。いいだろう、うちの領地は」

私はアイスを受け取る。ほんとに……初めての気持ちだ。誰かが感謝をして、何かをしてくれるだなんて、想像したことがなかった。

私はこくりと頷き、少し離れてしまった少年に向かって叫ぶ。

「ありがとうございます! アイス、嬉しいです!」

どうやら声が少年にも届いたようで、振り返って手を振ってくれていた。

なんだか、これだけで心が満たされた気がする。すごく落ち着く。

「え……?」

途端、ぽんとウェイド辺境伯が私の頭を撫でてくれて驚きの声が漏れてしまう。私はウェイド辺境伯を見上げる。

優しげな表情を浮かべていた。

「君もちゃんとお礼が言えた。当たり前のことだけれど、何かしてくれたらお礼を言う。領民はそんな当たり前のことをしているから、みんな優しいんだ」

「そ、そうですね」

頭を撫でられたのなんて、前世含めて子ども時代ぶりだった。

少し気恥ずかしいけれど、満たされている。

「よし! ギルドはもうそこだよ。少し強面の人もいるけど、みんな優しいから安心してな」

私はこくりと頷く。そして、私たちは冒険者ギルドの中に入っていった。私自身、冒険者ギルドに入るのは初めてだ。

冒険者業とは関係ない聖女をやっていたし、貴族のご令嬢は基本的に冒険者にはならない。例外もいるかもしれないが、私は少なくともそうだった。

ギルドの中は、数多くの冒険者がいた。確かに屈強な人や、強面の人が多い。酒場も併設されているから、そんな人達が楽しそうに盛り上がっている。

「みんな! 俺たちの英雄を連れてきたぞ!」

ウェイド辺境伯が叫ぶと、パッと冒険者たちが私たちの方を向く。

私は緊張してしまっていたわけだが、そんなものは杞憂だった。

「お前か俺たちの英雄は! 本当にありがとな!」

「おかげで死人も出なかったし、怪我人を治療する時間が確保できた! お前のおかげで大勝利ってわけよ!」

大量の冒険者たちが寄ってきて、私はもみくちゃにされていた。

「う……よ、よかったです……!」

私はどうにか言葉を発する。しかし、私の言葉に冒険者たちは更に盛り上がった。

そんな中、ウェイド辺境伯は笑いながら言う。

「はい! それまで! シセが大変なことになっちゃってるから、いったん離れようね〜!」

ウェイド辺境伯の言葉に、冒険者たちは納得して離れていく。

「はぁ……はぁ……」

私はもう息もたえだえ、といったところである。汗を拭いながら、私はどうにか笑顔を浮かべる。

ふとウェイド辺境伯は私を見て、少し考える。

「シセ……君は結界魔法以外に何か使えるのかい」

私はその問いに小首を傾げてしまう。

「いや、もし君がよかったらなんだけど。俺たちも何か、一緒に依頼を受けられたりしたら楽しいかなって。あ、もちろん危ないところとか、遠方にはいかないよ」

そう言いながら、ウェイド辺境伯は笑う。

「それに、ギルドのみんなも君が顔出してくれていたら喜ぶからさ」

ギルドの依頼、か。確かに興味はある。ずっと冒険者は私とは違う世界のように感じてきた。

せっかくならやってみてもいいかもしれない。

「私、やってみたいです。魔法も……色々使えます。回復、バフ、デバフ、攻撃とか」

私の言葉を聞いて、ウェイド辺境伯は目を丸くする。

「君……それ、魔法でできること全部できるってことだよね?」

「は、はい。一応ですが……」

「なるほど……これは、俺の出る幕はないかもな」