軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

4.セカンドライフの始まり ※ここから短編版の続きです

ウェイド辺境伯は一人の使用人と一緒にせっせと部屋にベッドを運んでいる。

重そうに、うーと汗を流していた。

「あの……手伝いましょうか?」

私は死にそうになっているウェイド辺境伯が心配で、恐る恐る声をかける。しかしウェイド辺境伯は首を横に振って、今できる最大の笑顔であろうものを向けた。

というか、もっと部下を使えばいいのに……行動からも人から好かれるのが分かる。

「いいよいいよ! というかごめんね。今空き家もなくてさ、それに嬢ちゃんだけじゃ心配だし、俺の家の空き部屋で暮らすことになっちゃって」

「本当にありがとうございます……すごく嬉しいです」

ウェイド辺境伯はやっとの思いでベッドの設置に成功する。満足そうにしながら汗を拭っていた。

ぐっと伸びをした後、こちらをちらりと見る。

「喜んでくれたら俺も嬉しいよ。あ、そういえば嬢ちゃん、名前聞いてなかったね。まあ……別に本名じゃなくていいよ。どう呼べばいいのか分かればそれでいいからさ」

私は少し悩む。正直バレてしまっても良いし、なんならもうバレていると思うから本名でもいいのだけど。

ともあれ配慮してくれているのだから、私もその配慮に乗っかっておいた方が良いだろう。

「シセ……と呼んでください」

私が名前を言うと、ウェイド辺境伯は何度か頷く。そして、パッと明るく笑った。

「うん、分かったよ。よろしくね、シセ」

ウェイド辺境伯が私に手を差し出してくる。あまりにもスムーズな行動に、私は動揺してしまっていた。まあ、今の私は中身がアラサー女なだけで、見た目は少女なのだ。

でも、多分ウェイド辺境伯はどんな女の子でも簡単に落としてしまうような気がする。

「よろしくお願いいたします」

私はぎゅっと手を握る。同性の手とは違って、ごつごつとしていて硬い気がする。だけど、とても力が強いとかそんな単純なものじゃなくて、ちゃんと優しさを感じた。

「ちなみに、部屋の設備は自由に使って貰って良いよ。使用人さんたちも、納得して君の手伝いをしてくれるはずだよ。なんせ、この領地を救ってくれたんだからね」

ちらりとウェイド辺境伯が後ろを見ると、部屋の出入り口の扉が軽く開いていた。そこから、先程の使用人と一緒に覗き見をする他の使用人たちの姿がある。

使用人は私と目が合うなり、サムズアップして笑顔を見せていた。

ふふ、若干使用人さんたちもウェイド辺境伯の影響を受けているかも。

そんな中、ふと私はウェイド辺境伯に伝えなければならないことを思い出す。

「ウェイド辺境伯、お伝えしたいことがあります」

そう言うと、ウェイド辺境伯は小首を傾げる。

「実は、結界を維持するには眠り続ける必要があるんです。手を離すにしても、五時間程度が限度だと思います」

私が結界を維持する方法、のことだ。なかなかに不便ではあるし、それがキッカケでルヴィン王子には散々な言われようだったけれど。

しかしウェイド辺境伯は特に追求するわけでもなく、ふむと頷いた。

「なるほど、だからベッドなのか。分かったよ、しっかり留意しておく」

あまりにも素直に納得してくれたので、少しばかり苦笑してしまう。やはりこの人はルヴィン王子よりも何倍も賢い人間のようだ。

「五時間か……それなら、君と色々と交流することができそうだ。ほら、せっかく一緒に暮らしているんだ。ご飯食べたり、遊んだりとか」

「……ほんと、違いますね」

「え? どういうこと?」

「なんでもありません」

ほんと、つくづくルヴィン王子と比較してしまう。まあ年齢的にも比較するのは可哀想かもしれないが、それでもである。

ウェイド辺境伯は時計をちらりと確認した後、私に言ってくる。

「時間はまだあるし……余裕も持つとして、少しギルドに行かないか? ほら、君が来るまで魔物の対処は冒険者ギルドがやっていたって言ったでしょ? お礼がしたいって、色々言われてるんだ」

私にお礼……と聞いて、きょとんとしてしまう。その様子を見た彼もきょとんとする。

「え……どうかしたのか? あー……もしかしてあれ? 人見知りってやつ? あー気にしなくていいよ。みんな優しいからさ」

ウェイド辺境伯の良く分からない配慮に、私は吹き出してしまう。私が少し固まってしまったのは、全然そういう意味じゃない。

「いえ、違います。その……お礼をされるって経験があまりなくって」

少し悲しいことではあるが。でも、聖女っていうのはそういうものだと思う。

誰かに感謝されるわけでもなく、ただ酷使されるだけ。

「……大変だったんだね。大丈夫だよ。俺も、みんなも。ここにいる人達はシセにすごく感謝しているし、ちゃんと言葉にして伝えるから」

「あ……はい」

私は多分にやけてしまっているだろう。でも、嬉しい。

「それじゃあ行こっか。ちゃんと、ヒーローの紹介はしとかないとね」

こうして、私たちは冒険者ギルドに行ってみることにした。