軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

99話 自分で選べ

街を出発する時に自分を含めて全員に魔法をかけていた。

シールドとエンチャントアーマーとエンチャントウエポン。防御、防具強化、武器強化である。

先頭を菊田さん(ダークエルフ)、その後ろを部長(剣士)と新田さん(拳士)、そしてしんがりを俺カオ(魔法使い)のフォーメーションで密着して移動していた。

草むらからゴブリンが3匹飛び出して来た時は皆、ビクっとした。

が、何と!菊田さんが両手剣であっさり倒した。

菊田さん(ダークエルフ)、強くね?

すぐやめたって言ってたけど、レベルいくつくらいなんだろう。この騒ぎが落ち着いたら聞いてみよう。

「マップに黄色、出た」

先頭の菊田さんが静かな声で言った。各自がマップに目を向けた。

マップギリギリ右上の端っこに黄色が、……3つ?

こっちに移動してきている。そのすぐ後ろを赤い点が複数付いてきている。

ゴブリンに追われているのだろう。

結構な距離があるな。ふと思い出して“ヘイスト”をかけた。ヘイストは移動速度UPの魔法だ。

俺達は黄色い点に向かい静かに走り出した。マップで見えていても実際の距離はかなりある。そこがゲームと違うとこだな。間に合えばいいが。

視認可能な位置まで近づくと、道の向こうから三人の女性が必死の形相で走ってくるのが見えた。

「た、たすけて」

「死にたくない、助けて! 誰かあああ」

「おい、お、お、おいて 、いかないで」

三人はどうやらゴブリン7〜8匹に追われているようだった。

菊田さんが突っ込んだ。俺達三人も後に続いた。

三人は、開拓村から事務室へ向かった68人の内の3人、やまとの社員で間違いない。俺達に気がつき、転がるようにこっちに向かって来た。

菊田さんがあっという間にゴブリン五匹を殺り、部長が一匹斬り、残り一匹は新田さんが小さい声でキャーキャー言いながら殴り倒した。

新田さん、その“キャー”は楽しそうに聞こえるよ?

三人は地面に座り込んでヒィヒィと泣いていた。けど、待っている時間はない。

「このままやまとのビルへ戻りたいなら止めない。だが村へ戻るなら、とりあえず街まで送って行く。どうする?」

座り込んでいる3人に向かって言った。

「だって、ヒクッ……だっで、事務室にかえり、かえりたい」

「ひぃぃぃ、もういやああああ、がえる、うちにがえるうう」

「ヒクッ、ヒクッ、うううううわあああん」

ふたりは事務室か。泣いてる残りひとりはどっちだ?

「村へ戻るか、好きにするか、ふたつにひとつだ。どうする?」

「うううううううう」

相変わらず泣いたまま答えないのでそのまま置いて行こうと踵を返したら

「待って! 戻る 、村に戻るから! たずけで!」

本気で置いていかれるとわかったのかひとりが叫び、他の二人も涙でぐしょぐしょの顔を縦にブンブンふった。

俺はこの場所をブックマークして三人を連れて教会へ飛んだ。

教会の中庭で待っていたヨッシー達に三人を任せて、すぐにブクマしたポイントへ戻った。

「はやっ」

「石原さんたちに渡してきた」

3人を無事送り届けた事を伝えた。

「鹿野くん、MPだっけ、大丈夫なの?」

MP=マジックポイント、つまり魔力の事なのだが 、これが切れると魔法が使えなくなる。つまり戻りたくてもテレポートが出来なくなるのだ。

「ああ大丈夫。一応帰りの分は常に残すようにしてるから」

「急ごう、マップで動かない黄色い点がある。赤に囲まれている」

マップを見ながら黄色い点を見つけてはゴブリンを倒し教会へ運ぶを繰り返した。

結局、見つけて助け出せたのは17名だった。

68人中17人。

脱走組があまりに広範囲にバラけてしまった事、しかもゴブリンがそこかしこに沸いている中でだ。ゴブリンにとっては格好の餌だった。

まさに、餌だったのだ。死んだらマップには黄色く表示されない。大半は俺たちが来る前に終わってたようだ。

助かったのは、

1係が12名(1係の中では若いママグループらしい)

2係は2名 大塚、大久保

6係は3名 安田、中野、小川

の17名だった。

17名は一応自分で「戻る」を選んだ。

本心でないにしても、自分で開拓村に戻る事を選んだのだ。助けるのは今回限り、次はない。本当に、自分で、生きてほしい。

事務室に戻れば元の世界に戻れる、今の辛い仕事や生活から 抜け出せる、という甘い誘いで結局51人が犠牲となった。

犠牲者51名の内訳は、

1係 38名

2係 8名

5係 大倉、中谷、小島のお局三人衆

6係 春川、そして島係長

ただし、51人は遺体を発見したわけでない。本当に51人が帰らぬ人となったのかどうかは不明である。

ただ、最初の3人を発見した場所から黄色い点を助けつつ開拓村まで辿り着いた。

その間マップに映る黄色い点は漏れなくキャッチしたため、それ以上はフォローの仕様がなかった。

普通の時ならもっとゆっくりと探索範囲を広げる事も出来たが、ゴブリンの大氾濫が始まりかけている今は、これ以上の検索は難しかった。

街に危険が迫ってる中、仲間を危険にさらしてまで救いたいかと言えば、答えはNOである。

全員教会へ戻る事に同意した。

そして俺はギルドへ急いだ。

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次から少し閑話が続きます。

開拓村組の話です。