軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

SS⑫ 魔法修得

異世界に転移して8年目の頃、マルクが10歳の時の話です。

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マルクがいよいよ冒険者デビューをする。

出会った時のマルクはまだ2歳でガリガリに痩せていて、抱き上げる時も骨が折れるのではとヒヤヒヤしたものだ。

体重も300gくらいしか無かったんじゃないか?と以前にあっちゃんに話したら、「そんな訳あるか!」と冷ややかな目で見られた。

まぁ、軽かったのは確かなのだ。

そんなマルクがとうとうギルドで冒険者登録が出来る歳になった。

もちろんギルドへは俺もついて行った。(後ろからそっと見守ったとも言う)

ちなみにパラさんのところの末娘である 陽葵(ひまり) ちゃんもマルクと同い年だ。

2歳のあの頃から陽葵ちゃんの方が大きかったんだよなぁ。それは10歳になった今でもだ。

大丈夫だ、マルク、男はこれからドンドン伸びていくからな!(根拠なしだが)

因みにパラさんも陽葵ちゃんの後をつけてギルドまで来ていた。というか、うち、やまと屋はギルドから歩いて5分もかからないのだ。

俺とパラさんが見守る中、マルクと陽葵ちゃんはカウンターで冒険者登録が出来たようだ。

冒険者の登録証(鎖のついた銅板)を貰って、自分の首にかけていた。

顔はピカピカの笑顔だ。うん、わかるぞ。俺も初めて貰った時は(49歳だったが)嬉しかったからな。

「あとで金の鎖に変えてやろう」

「いや、カオるん、金は柔いぞ。すぐ切れる。ミスリルチェーンかアダマンタイトのチェーンのがいい」

「そうだな。ミスリルもアダマンタイトもどっちも鉱石は持ってる! 鍛冶屋で急いで作らせるか!」

「俺らはアイテムボックスがあるからしまっておけば無くさないが、陽葵はステータスにアイテムボックスの表示が無いからな。この世界の人間のマルクはステータス自体が無いだろ? 無くさないように俺らがしっかり考えてやらないとな」

「おう! そうだな」

パラさん、かなりの親バカだな。(俺も人のことは言えないけどな)

「お父さん、見て見てぇ」

「お父さん見て、これ、貰ったー」

ギルドから出てきたマルクと陽葵ちゃんが首に下げた冒険者の銅板を自慢げに俺達に見せる

「おお、凄いなぁ」

「今日から冒険者だな」

やまと屋に戻ったマルクと陽葵ちゃんは、冒険者証を皆に見せて回っていた。

俺とパラさんは早速鍛冶屋へチェーンの注文に行ってきた。

鍛冶屋の親父さんに用途を説明した時に大きなため息を吐かれたが、意外と親切ではあった。

「ミスリルは目立つ。子供らが付けるならアダマンタイトにしておけ。見た目はイマイチだが頑丈だ」

そうだな。目立つとマルクが(チェーンごと)拐われるかも知れない。もちろん服の下に付けさせるが、ギルドの窓口で提示する為に出さないとならないからな。

そこで悪い奴に目をつけられても困るし、地味なアダマンタイトにしよう。

パラさんも頷いていた。

そう言えば、ダンは俺と出会った時には既に冒険者だったし、アリサもいつの間にか登録を済ませていた。二人ともチェーンは何を使っているんだろうか?

「おやっさん、チェーンをあとふたつ……、いや50本追加で作ってくれ。一本だけ急ぎでな」

「俺も今回6本、作ってくれ。一本は急ぎだ」

パラさんも家族分を注文していた。

ギルドでもチェーンを販売すればいいのに。ランクアップする度にチェーンも変えるとかありだよな。

まぁ、マルク達は最初からアダマンタイトチェーンだが。

ランクEの冒険者が受けられる依頼は街中の仕事だ。俺も初めては掃除だの荷運びなどの依頼を受けて地道に経験を積んでいった。

マルクも陽葵ちゃんも既にやまと屋(弁当屋)の仕事に関わっている。やまと屋は教会やスラムからバイトとして子供をよく雇う。

マルク達と変わらない子供、たまにもっと幼い子が働く時もある。

そういう子達に囲まれて暮らしているので、早くから手伝いをするようになる。

幼いうちは手伝いのお駄賃として 現物支給(オヤツ) だったが、ここ2〜3年はキチンとバイト代を銅貨で支払っていた。

「お父さん、暫くバイトを休んでいい?」

「ん? ギルドの依頼を受けるのか?」

「そう! ヒマちゃんと。早くランク上げたいからいっぱい受ける」

「沢山受けるのはいいが、無理すると怪我をするぞ?」

「うん。大丈夫。ちゃんとゆっくり丁寧に、でしょ?」

「ふたりだけで行くのか?」

「店長、僕もちょっと店舗の輪から外れていいですか?」

シュロが壁に貼ってある丸い紙を指差した。

リビングの壁には大きな丸い紙がふたつ、貼ってある。ひとつは『今週の家事当番』、もうひとつは『やまと屋ローテーション』だ。

シュロの言う「店舗の輪」というのは、弁当屋のローテーションの事だ。

「いいけど、どうした? 何かあったか?」

「マルクとヒマリの街中の依頼に付き合おうと思って」

おお、それは良いぞ。ふたりだけだと少し(かなり)心配だったのだ。

「シュロ、スマンな。よろしく頼む」

「はい、まかせてください」

シュロは冒険者を目指していないのでランク上げはしていない。それでもDまでは、いってる。

あっちゃん達にもあとで相談をするが、マルクと陽葵ちゃんがDにあがるまで、シュロは弁当屋から外れてもらおう。

「私もヒマな時は手伝うねぇ」

ジェシカも気にしてくれていたようだ。

その後、皆にも話して了解をえた。

この世界、魔物がいるこの世界では、最低でもランクDになっておいた方がよいのだ。(あくまで最低でもだ)

いつ、何の魔物が氾濫するかわからないからな。

今日の夕飯はマルクと陽葵ちゃんのギルド登録の祝いで少しだけ豪華になっていた。

やまと屋のみんなから二人はお祝いを貰っていた。

もちろん俺も用意してある。

俺は袋に入れてリボンをかけたものをマルクと陽葵ちゃんに渡した。二人はさっそくガサガサと開けた。

袋からブランクスクロールに魔法を詰めた物が出て来た。

「ウエイトライトだ、あと、エンチャントアーマー?」

「ヘイストとシールドも入ってるよ」

「街中の仕事で使えそうな魔法を詰めた。仕事によってだが使ってくれ」

「ありがとう! 父さん!」

「カオおじさん、ありがとう」

パラさんからはミスリルダガーを貰ったようだ。

「よく切れるからな。自分の手を切るなよ」

「そういえばさ、カオるん、魔法書は余ってないの?」

「幾つか残ってるけど、リンさんが覚えられそうなのあるかな」

「いや、私じゃなくてさ、マルクと陽葵ちゃん。やまと屋でも何人かはライトやシールドを覚えているでしょ?」

リンさんに指摘されて思い出した!

この世界に転移した最初の年、神殿の女神像がゲームの倉庫だったと発見した後だ。

倉庫の中にあった魔法書の中でも「シールド」や「ライト」は日常でも便利だと言う事で、当時のやまと屋にいた中で数人に魔法を修得して貰ったんだ。

特に夜になると碌な明かりのない世界だったから、『ライト」はとても重宝した。

何しろ、トイレや風呂が外にあるんだ。ライト(明かり魔法)が使えるだけでも生活していく上でだいぶ楽になったのを思い出した。

今では当たり前になっているのですっかり忘れていた。

ゲームでは魔法を覚えられるのはWIZだけだった。しかしこの世界では神殿で『魔法修得』の女神像が発見されてからは、魔力が多少でもある者は修得可能となった。

地球から転移してきた稀人も最初は使えなかったが、この世界特有の『生活魔法』を訓練して使えるようになると、魔法修得に必要なくらいの魔力量が蓄えられたようだった。

ゲームでWIZ職でないパラさん達も、生活魔法を覚えると、WIZ魔法であった『ライト』や『シールド』も覚えられるようになった。

ただし、魔力量に限度があるのか、ゲームで言うところの低レベル魔法までしか修得は出来ないようだ。

俺が持っている魔法書で言うと、『ライト』『シールド』『ヒール(回復小)』『ファイア』くらいだ。

魔法書の在庫が少ないので試していないが、恐らく『アイスダガー』や『ウインドカッター』あたりもいけるのでは、と思っている。

アイスダガーやウインドカッターは攻撃魔法だ。WIZ職でない者が覚えても意味がないので、パラさん達はあえて修得をしていない。

ふと視線を感じて顔を上げると、マルクと陽葵ちゃんの瞳が期待に満ちて輝いていた。

俺は苦笑いをしながら、アイテムボックスから魔法書を出した。

「シールドとライト、あとヒール」

テーブルの上に魔法書を重ねて置いた。

「あと、ファイア、アイスダガー、ウインドカッターがあるが、魔法職に進まないなら覚えても…」

「俺、魔法使いになるんだ! 父さんと一緒のWIZになる!」

「私もぉ。私は回復が得意な魔法使いになるぅ。お父さんがよく話してるよ? カオおじさんは凄いWIZだって。私もカオおじさんみたいになるんだぁ」

「僕……俺、のが父さんと一緒のWIZになるんだ!」

あ、あれ?何か嬉しい。けど、恥ずかしい。

今までパラさんやリンさんみたいな前衛で活躍する冒険者が大人気だった。WIZになりたいって子は初めてだ。

ん?パラさんの目がちょっと怖いぞ?

リンさんやあっちゃん達は何か変な顔をしてヒソヒソしている。

「……カオっちと一緒って……方向音痴なWIZって事?」

「ちょっと間抜けなウッカリWIZ……」

「…目指したらすぐ追い越すんじゃ…」

おい、聞こえてるぞ?

いや、いいんだ。俺を追い越していいんだ。俺は大したWIZじゃないからな。

よっし、ふたりには今持ってる魔法を覚えさせよう。別に立派な冒険者にならなくてもいいんだ。

魔法が使える弁当屋でいい。(てか、出来ればそっちの方がいい。危険な目にはなるべくあわないでほしい)

ファイア、アイスダガー、ウインドカッターも出した。

「今覚えられそうなのはこの辺かな? 今からちょっと教会に行って魔法を修得しようか」

魔法習得の女神像なら王都まで行かなくてもこのムゥナの街の教会の中庭にある。(神殿の中庭でもあるが)

俺はマルクと陽葵ちゃんを連れて女神像まで飛んだ。(パラさんは自力でついてきた)

二人は早速、渡した魔法を修得したようだ。

「ライト! ライトライトライト」

「シールドシールドシールドシールド」

マルクは女神像の真上にライトを付けて回っている。陽葵ちゃんは女神像にシールドをかけた後、足元の花にもシールドをかけた。

それを見たマルクがその花の上に小さなライトを放ってた。

子供の発想力は凄いなと、大人はただただ感心させられたのだった。

攻撃魔法以外を散々試してようやく気が済んだふたりとパラさんを連れて家へと戻った。

翌日から、シュロやジェシカの助けを借りつつ、二人はギルドの依頼を順調にこなしているようだった。

俺は、弁当屋の合間に死霊の森ダンジョンへと来ていた。目的は魔法書の入手だ。

マルクにもっと色々な魔法を覚えさせたいと思ったのだ。

俺がアイテムボックスに所有している魔法書は、先日二人に覚えさせた物しかなかった。(種類の事だ。同じ物ならまだ数冊残っている)あれ以外の魔法書を入手する方法は二つ。

ひとつは王都で入手。

もうひとつは死霊の森の地下ダンジョンでの入手だ。

手っ取り早いのは王都の店で買う、のだが、俺にとっては至難の業だ。金はある。しかし、店の場所がわからない。

王都のギルドで聞けばいいのだが、問題は聞いた後だ。

果たして、方向音痴の俺に辿り着け得るだろうか。無理だ。

カンさんかミレさんに「一緒に来て」と頼めばいいのだが、生憎今二人は他の国にいる。

となると、残る手は、死霊の森の地下ダンジョンだ。

死霊の森ダンジョンは、40階建てなのだがちょっと変わっている。建物の半分が地面に埋まったダンジョンだ。

22Fから始まって40Fまでが地上、21Fから下は地下ダンジョンと呼ばれている。

地上部分はフロアによってドロップが決まっているが、地下部分はランダムにドロップする。

魔法書は低確率になるが地下ならどのフロアでも入手可能だ。

なので、ソロ(サモン付き)で行けて、出来るだけ行きやすいセーフティゾーンの近くがいいな。

9Fのフロートアイにするか。それだと10Fのセーフティで家から簡単に行き来できる。

フロートアイという魔物は巨大な目玉のモンスターだ。フロートアイと目を合わせると身体が麻痺して動けなくなる。

ほぼ目玉の化け物なので視線を合わせないのは難しく、冒険者には嫌われている。後ろに回ろうとしても、クルリと後ろを向いてしまうからだ。

しかしWIZには問題ない。

何故なら大概のWIZは魔法防御が高く、麻痺攻撃を弾く事ができるからだ。目と目があっても大丈夫。麻痺しないので、何なら真正面から目玉の中心をプスっと突ける。

そしてフロートアイは物理攻撃には弱い。俺くらいのWIZでもSLSでサックリと殺れる。

もちろんMPを吸いまくってからだ。こいつはMP(魔力)も多いので、マナスタッフでMPを吸いまくってからSLSでトドメだ。

あと、マナスタッフでボインボイン殴るとボヨンボヨンと弾むのも楽しい。(左手の杖でドリブルしつつ、右手のSLSでブサリ)

俺は毎日、弁当屋の仕事の後にフロートアイの元に通った。

マルクがギルドの依頼をこなしている間に、俺はせっせと目玉退治に精を出した。

なんだかんだと3ヶ月は通い、結構な数(種類)の魔法書が手に入った。

エンチャント系が7種類。(うち2つは既にあり)

シールド、ライト、ヘイスト、ブレスドアーマー、ブレスドウエポン、テレポート、ウエイトライト。

ヘイストとテレポートは使えるな!スピードアップと瞬間移動だ。

デバフ系が3種類。スロー、マナドレイン、テイムモンスター。

デバフは相手(魔物)にかける魔法だ。スローは使える、俺も好きで良く使う。テイムモンスターは苦手だ、失敗して魔物によく手を噛まれる。

マナドレインは相手のMPを吸える。俺はマナスタッフがあるから使わないがマルク向きだな。

回復系が4種類(ヒールは既に修得済み)。ヒール、グレートヒール、キュアポイズン、リムーブカーズ。

リムーブカーズは必須だな。石化や麻痺など、WIZ自体は防げるが固まった仲間をいかに早く復活させるかが自分も助かる鍵になってくる。

あとはキュアポイズンの毒消だ。ポーションでも毒消はあるが、いざという時の為に魔法もあった方が良い。

攻撃系が4種類出たがファイアは修得済み。ファイア、ライトニング、アイスランス、イラプション

お、イラプションが出てた。あの地割れの魔法だ。正しい使い道はイマイチわからんが、兎に角絶対持っていたほうがいい魔法だ。

俺は攻撃はサモン任せなので、ライトニングやアイスランスの強さはわからん。マルクが自分で使いつつ学んで行けば良い。

それと、自分が持っていない魔法書も出たぞ!これはあとで、女神像で覚えてこよう。出たのは『アイスメテオ』と『アブソールバリア』か。

どんなんか、わからぬ。

アイスメテオは名前から何となく想像がつく。メテオ(隕石)のアイス版だな。きっと隕石の代わりにデカイ氷が降ってくるんだろうな。

覚えはするけど、使わなそうだな。

アブソールバリアはどんなんだろう?バリアと言うからにはシールドの一種だろうか?まぁ、修得すればステータス画面で確認が出来るはずだ。

さて、死霊の森地下ダンジョンで集めた魔法書は全部で14種類あった。マルクの冒険者ランクがDになった時に、お祝いとしてまず4冊渡そう。

ヘイスト、ブレスアマ、ウエイトライト、スローあたりがいいか。初級WIZが良く使う魔法だからな。

残り10冊は、そうだな…。

毎年2冊ずつ渡そう。11歳から15歳までの5年間。全部を一気に渡すとWIZの道を進まねばならないと、マルクのプレッシャーになるかも知れないからな。

今はWIZになろうと思っても、ギルドの依頼を受けているうちに気が変わるかも知れないからな。

剣士になっても弓師になっても、弁当屋でも鍛冶屋でも、お父さんは応援するからな。

あ、ニートはちょっと、いや、ニートでもいいか。誰にだってやる気が起きない時はあるさ。無理することはない。

「ひとりで何をニヤついているのさ、気持ち悪いw」

ひとり想いに耽っていたので突然話しかけられて驚いた。

ニヤついてなんて…とモゴモゴしながら顔を上げると、リンさんだった。

「魔法書は集まったのかい?」

「まあな」

「そっか。相変わらず子供に甘いおとっさんだw」

「そんな事ないぞ、いっぺんに渡さないつもりだし…」

「はいはい。ついでに、ほらこれ」

リンさんから杖を渡された。2メートルほどある魔法使いのスタッフだ、しかも俺が持ってないやつ。

「アンタにやるんじゃないよ、マルクにだ。アンタはもう自分の杖は持ってるだろ? これはラスバザールの杖だ」

「ラスバザール? 何だ、それ?」

「アンタがゲームをやめた後、ゲームの新シナリオで出るようになった武器のひとつだ。何となく捨てずに取って置いたんだが、うちは誰も使わないからね、マルクにやるよ」

「おお! すまんな。有り難い」

アイテムボックスにしまい、一覧から杖をクリックして詳細を確認した。

『ラスバザールの杖 水系、雷系の威力が増す。持っている間は魔力、体力の回復速度が増す』

おお、かなり良い物だ。これは、マルクが成人してWIZの道を進むのなら、その時に渡そう。もちろん強化してだ。

またデス狩りが必要だな。うん。