軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

203話 番外編ーファルビニアの戦い⑤

俺はブラックエルダーに変身してサモン(カスパー)を4体召喚した。

カスパーは黒いフード付きのマントにスッポリと身を隠し、大きな 杖(スタッフ) を持つ「闇に落ちた賢者」の魔物だ。

そして俺が変身したブラックエルダーは「死の賢者」と呼ばれるカスパー達の上位だが、見た目はほぼ一緒だ。

……ゲームの運営さん、手抜きですか。(相変わらずWIZ系に冷たい)

つまり、黒マント賢者が5人。俺を含めてだけど。

DK(デスナイト) は死の騎士という名前に反して、真っ白で統一された上級騎士のような立派な出立ちだ。(何だろう、涙が…。俺との差がありすぎな気がする)

その真っ白いヤツらの真ん中に黒い俺ら……。

「ううむ、それ、カオるんが判りづらくないか?」

「そだねー。サモンが窮地に陥っているのか、カオるんが危機なのか判別し辛い」

「ですが、この先はKBBよりカスパーの方が良いはずです。KBBはどちらかと言えば力重視の前衛タイプのサモンですから。カスパーは動きも滑らかで素速い、魔法防御も高かったはずです。僕らが近くに行けない場合も考慮すると、カオるんをカスパーで囲むのは有効です。カスパーとの区別は…、そうですね、カオるん、少しでも危機を感じたら大声と、両腕を上げて踊ってください」

「大声は兎も角、踊る? 腕上げて?」

「そうです。ほら、バフォダンスをしたでしょう? あんな感じで」

えぇぇぇ、ブラックエルダーでバフォダンス……。俺は腕を上げてちょっと踊ってみた。周りの目が、何故か冷たい。

バフォの時は皆ノリノリだったくせに、どうして。

「……、ええ、そんな感じで」

「プッ、あ、ごめ、うん。判るわ」

「ダイジョブー。アフォダンスがカオるんね。」

「ちょ、アネ、それはプフフフ」

アネ、「アフォが俺」みたいに言うな。ヤケになって踊り捲った。アー、ソレソレ。ホイさのさっさと。

カスパー達が若干引いている気がするが、気のせいに違いない。だって君らは俺のサモンだからね。

あ、もうひとつ、気になってたんだ。

皆マップ開いているよな?ステータスの方のマップ、あれを見ればアンデッドの見逃しは無くなるよな?

俺よりずっとゲームで戦いに慣れている皆に今更聞くのも失礼かと思ったが、気になったまま進んで後悔したくない。

どうせアフォと思われているんだ、今更聞いても「聞くは一時の恥」だ。恥ずかしいのはせいぜい一時。

「あのさ、タウさん、と言うか皆もだけど、マップは開いてるよな?」

何を当たり前の事を言うんだという皆の視線が俺に刺さる。

「昨日のさ、家の中にグールが隠れていたのとか、マップで判るじゃん? 人間かゾンビかもマップで判断出来るし……」

「カオるーん、それは無理だよう。こんなに小っさいマップで赤ボツボツだらけだよ?」

「蕁麻疹状態だな。赤い点が繋がりあってデカイ赤丸になってる」

あれ?やはり何か誤解があるような?タウさんが俺をジッと見つめる。

「……因みに、カオるんのマップはどうなっているんですか?」

「もうータウさん、マップはみんな一緒でしょお?」

「カオるんだけ違うん? 10年前もゲームではそこは変わらんよな?」

「カオるん?」

「あの、今は広げてあるから、この周辺半径10メートルくらいかな、そう、あの太い木くらいまで」

「広げる?」

「もう、カオるんはーw」

タウさんやパラさんは空中で右手を動かしていた。自分のマップを触っているようだった。

「驚いた。まるでスマホ画面のように広げたり縮めたり出来るのですね」

「お、掴んで引っ張ってステータスの外に出せるぞ」

「なるほど、僕らは最大の広範囲で使用していたのか」

「え、じゃあダンジョンでも見辛かったんじゃないか?」

俺のひと言に皆が頷いた。すごいな、そんなに小さく集約された地図で地下ダンジョンをズンズンと迷わず進むとは。

「反省させられます。僕らはゲーム脳過ぎました。ゲームでそうだったからこちらでもそうだと思いこんでいました。カオるんの発想は凄いですね」

「いや、俺がこっちに来た時はLAFやってた人は他に居なかったし、あっちゃん達も別のゲームだったから」

「なるほど、LAFに拘らずにこの世界で出来る事を見つけていったのですね」

「それでも凄いですよ、カオるん」

「だねー」

言って良かった。「言わぬは一生の恥」どころか、「一生の後悔」にならずに済んだ。

その後はタウさんの指示で、前に立つナイトのパラさん、アネさんは目の前の敵が判りやすいようにマップ範囲を狭めて拡大状態に、カンさん、ミレさん、リンさん、ゆうご君のエルフ陣は中くらいの大きさまで広げたマップに、皆に指示を出すタウさんはその都度マップを使い分けるそうだ。

さすがだ。俺はその使い分けが苦手だ。(と言うかたまにマップの存在も忘れる)

因みに俺は自分の周辺が見えるマップで良いと言われた。

俺らはいよいよ、山に入って行く。

「皆さん準備は大丈夫ですか?」

タウさんの声に皆が頷いた。

「カオるん、他に言い忘れはありませんか?」

何故、俺だけに聞く。うぅむ、無いな、無いはず。俺は頷いた。

「もし思い出したら、途中でも何でも仰ってください。カオるんだけでなく、皆さんもです。マップを見ても判る通り、ここからはアンデッドの数が半端ないです。お互い声かけは常に行う。異常を感じたら即帰還です。ここをブクマしてありますから、やり直しは容易いです。怪我をしたら即下がってください。無理はしません」

俺たちは今、山脈の麓にいる。

ファルビニア国の中央から真東あたる山裾だ。

「山肌はほぼ赤い点で埋められています。中でも北端に近い山の少し下、そのあたりが真っ赤です。恐らく神殿はそこにあるのでしょう。空を飛ぶ事が出来れば移動もラクなのでしょうが、LAFにはそれがありませんでした。カオるんは何か思いつきますか?」

皆が期待に満ちた目で俺を見る……、いや、ないから。

「無い。サモンも空を飛ぶヤツはいない」

「となると、地道に登山をするしかありませんね。それからカオるん、派遣魔法を使っていきましょう。報連相、あれは敵の情報をPTメンバーに瞬時に伝えるのですよね。山を登り始めたらそこら中にアンデッドがいると思いますので、ゾンビ、グール、スケルトン、スパルトイ、他にも見た事が無いと思ったら報連相を使ってみてください」

「わかった」

実は以前に俺の派遣魔法の話になった時に、死霊の森の手前の草原へ行き魔法を試した。

とは言え、そこで出た魔物は、ツノウサギ1匹とゴブリン2体だけだったのだが。

俺の派遣魔法は全部で6種類あった。

力仕事、整理整頓、仕分け、清掃、報連相、早帰りだ。

そのどれも、敵を倒すのには向いていない魔法だ。まずは『報連相』をツノウサギに向けて放って見た。

『ホーンラビット。角を武器として素早く突っ込んでくる突進型の魔物。肉は美味しい。角や毛皮も使い道がある。体内に極微量の魔力石を持っている』

ほおお、と俺が感心していると、周りも頷いていた。同じ情報が伝達されたのか?(と言うか誰情報だ?)

情報は頭に瞬時に浮かんだ感じだったので、俺は覚えていられるか不安だったが、PTメンバー全員に同じ情報が送られるのはありがたい。覚えて伝える手間が省ける。

その後にミレさんが「やるぞー」と言いツノウサギを倒した。

俺はその死骸に向かって『仕分け』を使った。ウサギは一瞬でツノ、毛皮、肉に変わった。

肉はダンジョンのドロップのように葉に包まれていた。

『力仕事』はどんな物でも持ち上げられるとあったが、掴み所の無い物は持ち上げるのは出来なかった。

例えば水とか、あとは巨大な岩、持つ所が付いていれば持ち上がったかも知れないが触っているだけでは持ち上がらなかった。

次にゴブリンが2体現れたので、『整理整頓』を使って見た。2体が並んで立っている。……これ、魔法が効いたのだろうか?

2体だと判りづらいな。ミレさんが2体をサクリと斬った。

『清掃』を使ってみたが、臭さは無くならなかった。空間浄化は謎のままだ。

『仕分け』を使った。……耳だけが残された。要らない部分が無くなっただけでも良しとするか。

そして『早帰り』を使って帰還した。全員が街へと帰還した。エリアテレポートとの違いは俺の周りに集まらなくても全員連れて帰還が出来ると言う面だな。

おっと、自分の思いに耽っていたら皆の視線が集中しているのに気がついた。

「カオるんは、アンデッドが出たら報連相を使うとだけ覚えていてください。他はその時に指示を出しますから」

「お、おう。わかった」

「まずは山を登っていきます。下側、南側にアンデッドが逃げないようにファイヤスクロールで山を燃やしますよ。了解は得ています。消火はアンデッド討伐後に考えます。突っ込んでくるヤツは斬り倒してください」

俺たちはアンデッドの山へと分け入った。

俺達に驚いて逃げ惑うゾンビやスケルトンをパラさんやアネさんが切り飛ばす。生えていた樹々も一緒だ。

パラさんらナイトが前方、ミレさん、ゆうご君、リンさんは少し広がりお互いに距離をとって左右の敵を、タウさんが俺の直ぐ前方で、カンさんは俺の後方、逃げ遅れたアンデッドを殺っていた。

俺はタウさんの指示通りにアンデッドの情報を報連相で伝達する。今のところ目新しい敵は見えない。

と言うか、ちょっとカスパーが邪魔で見え難い。密集隊系の指示を出したからだけど。カスパーの間からキョロキョロと敵を確認した。

「カオるん、じょーほーサンキュー」

「おう、ありがとなー。いや、メッチャ弱くね?コイツら」

「まぁでも数が多いですから」

皆、余裕だなぁ。皆のHPバーを確認したが誰も減っていない。

俺たちはタウさんの指示で、自分達が進む前方にはファイアを使っていない。

360度ファイヤを使ってしまうと自分達が火に巻かれてしまうからだ。しかし俺らの後方の山肌は思ったほど燃え広がっていない。

「魔物の火は魔物が燃え尽きるまで燃え続けますが、どうやら草木は直ぐに鎮火するようですね。魔法の炎だからでしょうか? 普通の火ならあっという間に延焼しているはずです」

「どっちにしろ魔物は焼いてくれて、俺らには迫らないのはラッキーだな」

「そうですね」

「さっきのカオるんからの報連相でアンデッドもドロップあるみたいだったな」

「まぁ、大した物ではないし、拾ってる場合でもないですから」

「だねー」

「さぁ、どんどん進みますよ」

足場の悪い崖状の斜面も、皆何事もない様に登って行く。

俺のカスパーもスイスイと登る。コイツらもしかして浮いているのか?

見た目だけブラックエルダーになっても、その魔物の魔法が使えるわけではない。俺は自分の足で登るしかないのだ。

あ、でも、俺の後ろのカスパーが俺の尻を押してくれた。案外いいヤツ。

山の中腹くらいまで来たのか。

本当にもうアンデッドの数が半端ない。俺らを見て逃げかけたヤツも後ろから来たアンデッドの大群に押されるような形で、俺たちに突っ込んでくる。

こちらとしては纏まった団体さんの方がある意味ありがたい。ファイアスクロールで燃やしやすいからだ。

しかし、どんだけ湧き出しているんだ。ファイアスクロールの消耗が激しいな。このままだとジリ貧だ、時間を掛ければかけるほど俺たちが不利になる。

皆の顔にも焦りが少し見え始めた。

どうする?どうしたらいいんだ?と思った時にタウさんの声が聞こえた。

「神殿が見えました。あれが、恐らく闇の神殿でしょう」

アンデッドや樹々の隙間から、クネッった建物が見えた。

死霊の森ダンジョンを低くしたような、建物だ。大きさもそれ程でもない。ただ、正面の大きな扉から、澱んだ空気と共にアンデッドが湧き出ていた。

ああ、あそこが、今回の騒動の元凶、『闇の神殿』か。