軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

187話 王都への旅

7人のバフォを乗せた馬車は山脈とクワモ高原の間を走る。

アンデッドを見つけるたび、馬車を停めてサバトダンスを踊りに行く。

「みんな同じすぎてつまらない。私べレスにする」

アネさんが変身を変えた…が見た目はバフォとほぼ変わらない。

「バフォと変わらないやんw」

誰かが突っ込んだ。(見た目一緒だから誰かわからん、声もくぐもってる)

「変わってるでしょ、バフォはツノと杖の先がクルンって丸まってるけど、べレスはピンと伸びてるの!」

ほら、と差し出した杖の先が馬車の幌を突き破った。

あ、という顔したべレス(アネさん)はバフォを見回し(多分俺がどれかわからなかったんだろう)、無茶振りをしてきた。

「カオるん、魔法で修復して」

「あの、ゆうごです、僕」

俺だとアタリをつけたバフォはどうやらゆうご君だったらしい。

それと修復魔法なんて無いからな。……もしかして俺がやめた後に出来たのか?

「修復魔法とかシステム追加されたんか?」

「いや、無いよ、そんなん」

「アネさん、無理言い過ぎw」

やがて日が暮れ始めた。

「さて、どうしましょうか。ここをブクマして全員帰還もありですが、夜間の方がアンデッドが活発になりそうですね。ここで野営すべきでしょうね」

「そうだなぁ、せっかく押し戻しているのに家に帰ってる間にウジャウジャと出てこられたら嫌だなぁ」

「今夜はここで火を焚いて夜通し踊りますか?」

何、それ。まさにサバトの図だな。

だがそれくらいしないと押し戻せないかもしれない。アイツら麓に降りてこないだけで山の中に潜んでいそうだし。

「カオるん、その辺りにファイアウォールを出してもらえますか」

「おう、ファイアウォール!」

馬車を背にして10mほど先に燃え盛る火の壁が出来た。ゲームではほとんど使ったことが無い魔法だ。高さ5m、幅が20mくらいだろうか?近づいて見るが本物の火のように熱くはない。

「ねぇ、全然熱くないんだけどー、これ役に立つの?」

アネさんが勇敢にも火に腕を突っ込んでいた。

「ああ、俺らには効かないですよ。マップの赤い点の奴らは触れると燃え上がるはずです」

タウさん、WIZでもないのによく知ってるなぁ、もしかしてセカンドがWIZだったりするのか?

「野営の準備をするのにも明るいし、一石二鳥でしょ?」

笑いながらタウさんがアイテムボックスからテントを出していた。

皆、変身は解いている。

作業がしにくいのと、食事が出来ないという理由だ。

「あ、俺らテント持ってきてないっす」

星影のラルフがテントを立てていたタウ話しかけた。

「俺も持ってない。泊まりになるって思ってなかったからな」

「カオるん、彼らを街に送ってあげて。星影の皆さんはまた明日馬車の操作をお願いします。カオが迎えに行きますから、今夜は街で寝泊まりしてください。カオるんは戻った時にテント持ってきてください」

「はい…」

タウさん相変わらず人使いが荒い、だが、何か安心感があるんでつい従っちゃうんだよな。

「一旦戻れるとはありがたい」

「スマン、カオ、頼む」

「はい、じゃあ戻るぞぉ。集まってー。エリアテレポート!」

俺がテントを持って馬車を停めた場所まで戻ってくると、馬車の前には焚き火が作られていて、お湯を沸かしていた。

お湯だけ?

てっきりみんな飯でも作ってると思ったのだが。

「カオるんーお帰り〜、お腹すいた」

「お帰りなさい、カオるん」

焚き火を囲むように、タウさん、アネさん、ゆうご君の3人がいた。

「あれ? 他の3人は?」

「ミレさんとカンタさんは火の壁のむこうでダンスタイムです。パラさんは王都です。報告と家族の様子を見に」

今夜は交代でバフォダンスって言ってたな。ミレさんとカンさんが最初なのか?

「あ、食事持ってきました」

そう言って俺はうちの店のサンドイッチとスープを出した。それからインスタントだが粉コーヒーの瓶も置いた。

「やったぁ! 夕ご飯〜」

「ね? 言ったでしょ。カオるんなら絶対持ってきてくれるって。ありがとう、カオるん、ご馳走になります」

「凄い、美味しそうですね。あの街のパン屋さんで売ってるんですか? 美味しそうです! いただきます!」

「どぞどぞ、まだまだいっぱいあるからな。いっぱい食え」

ゆうご君は背が高い割に痩せているな。痩せている子を見ると食わせたくなる。いや、子は失礼か。

「ね、ね、これ唐揚げだよ! 唐揚げ挟んであるー! でも惜しい、マヨが欲しかった」

「マヨネーズねぇ、売ってないんだよ。作り方知ってる子もいるけど腐りやすいからなぁ。うちで食べる時だけ作ってる」

「何ですって! 私、カオるんちに住む! マヨネーズ作れる子紹介して! 仲良くなって作ってもらう!」

「アネさん、そこは教えてもらう、でしょw」

「作ってもらうんかい」

「カオさん! これ、これ! コーヒー!!!」

ゆうご君がコーヒーの瓶を振り回す。

「うん、キャンプにはコーヒーかなと持ってきた。インスタントで悪いけど…」

俺の防災グッズの中のひとつだ。お菓子系はとっくに無くなったけど、飲み物系は残っている。

というのも、職場の給湯室から持ってきた物は開拓村と、うちで半々にした。うちのはさっさと消費したな。開拓村もあの人数だからすぐ無くなっただろうな。

俺の防災グッズでもココア系の甘い物は子供達に出してしまった。

コーヒーがあまり人気がなくて残っていたのだ。ゆうご君はコーヒー好きなのか。

「どうぞ」

「あの、あの三杯入れても?」

ゆうご君が自分のボックスから結構大きな木のカップを出した。

「何杯でもw」

「カオるん、私、お茶がいい」

「ええと……、ティーバッグしか無いんですが、紅茶と緑茶…」

「嘘! 本当に持ってた! カオるんマジ魔法使い! どっちも飲みたいー。サンドイッチだから紅茶! 食後の一杯は日本茶で!」

アネさんのカップに紅茶のティーバッグを入れて焚き火からお湯を沸かしていた鍋を下ろした。

あ、この鍋、縁が1箇所尖っていてお湯を注ぎやすい、やかんと鍋を兼ねているのか。

「食べ終わったらアネさんとゆうご君、ダンス交代をお願いします」

「はい」「オッケー」

「あのふたりもお腹を空かせているでしょうから」

なるほど、食事の間だけの見張りだったのか。

俺もサンドイッチを食べ始めた。

タウさんもゆうご君も話好きでないのか行儀がいいのかわからないが、静かな食事タイムになった。

「ねぇねぇカオるん、後でパン屋さんの場所教えて。ブクマしてあるんでしょ? クラマスー、食後に一瞬だけ、カオるんとブクマに行ってきたい。」

クラマスとは、クランマスター、血盟主の事だ。ゲームの時もアネさんはタウさんを時々クラマスと呼んでいた。

タウさんは仕方がないなと苦笑いをして俺を見て顔を縦に振った。

「ああ、そのサンドイッチは街のパン屋って言うか、うちの弁当屋で作ってる」

「うちの弁当屋? カオるんち?の?」

「……カオるん、弁当屋…なんですか? 稀人を弁当屋にするとは、あの街はかなり侮れないですね。最近色々な噂が流れてきてますがその街ってあの街の事か」

「その街とかあの街とかよくわからん」

タウさんは俺からすると頭が良すぎて時々話についていけず俺は迷子になる。

「悪ぃ、遅くなった」

テレポートでパラさんが戻ってきた。

「お帰りなさい」「お帰り〜、パラ」「お帰りなさい、パラさん」

「ちわっす、パラさん」

「おう、カオるんもお帰り。ん? 何だ、良い匂い……コーヒーか! まだあるなら俺にもくれ」

「あります…」

ゆうご君の顔が心なしか悲しそうに見えた。この世界にコーヒーは無いのか?王都にも無かったとしたら見つけるのは難しそうだな。

あ、そうだ。さっき気になるワードがあったんだ。

「さっきタウさんがさ、パラさんは王都に報告と家族を見にって、それってパラさんの家族? こっちで結婚した?」

「ヒデェな、俺をどんな男だと思ってるんだ。俺は家族思いの紳士な漢だぞw 日本の家族だ」

「え、それって、家族ごとこっちに来たって事?」

驚いた。

異世界転移が何故、どうやって起こったのか、たまに考えるが情報不足というか結局ぐるぐると思考がまとまらず放棄に至るを繰り返していた。

俺たちが職場ごと来たくらいだ、家族ごと来るのもありえるのか。

確か、パラさんは自営業だった気がする、家族が一緒にいたらそれもあるか……。

そう思ったのだが。

「家族ごとじゃないんだがな。俺は店を開けようかと家にいた時に飛ばされた。嫁は下のふたりを連れて近所の嫁実家へ朝から行ってた。上ふたりは小学校だ。」

パラさん、いつの間にか子沢山。

俺がゲームをやめる少し前あたりに、結婚したとか子供産まれたって聞いた気がする。

あの頃はもう俺もクランから遠ざかり始めてたからな。そっか、お子さんが4人。仲良し夫婦だな。

「俺はさ、王都から一番近い街に転移したんだ。すぐに王都の騎士に保護された。その時は小説でよくある自分だけ転移した俺TUEEEEEだと思ったよ。けど俺の他にもどんどんと連れて来られて、そこでタウさんと会った。驚いたぜ」

「ええ、僕も驚きましたよ。まさか知り合いに会うとは。それに同じように考えました。俺TUEEEEってねw」

「嫁と会えたのはもう少し後だな。嫁は俺が転移した街よりもう少し王都から遠かったんだ。周りの街々から王都へ稀人を集め始めて、嫁と再会した。」

「じゃあ、お子さんは? お母さんと別々になったのか?」

だとしたら最悪だ。

「いや、嫁は子供ふたりと一緒に飛ばされてきたそうだ。飛ばされる直前に意識を失ったそうだが、意識を失う時、下の子、陽葵はババが抱いていて、結奈はジジと遊んでたそうだ。嫁はテーブルの朝食を片付けていた時に気を失ったそうだ。陽葵の泣き声で目が覚めたら見た事もない場所にいたんだと。近くで結奈も気を失っていた。けど、ジジババはいなかったそうだ」

どういう事だ?

同じ空間に居ても転移する者とそうでない者がいるのか?うちの職場は102人全員がこちらに来た。

「あ、それで上の子達は?」

「ああ、嫁らと会った少し後に別の村から連れて来られた。結愛と結月とも会えて良かった。あのふたりだけあっちに置き去りより知らない世界とは言え一緒にいたいからな。」

「ゆあちゃん?達は学校ごとこっちに来たのか?」

「いや、その村に転移して来たのは結愛と結月の他に数人の稀人だ。結愛達の面倒を見てくれていたお礼を伝えた時に聞いてみたんだが、その人達はステータスは見えても職業はブランクだったんだよ。いや、嫁も娘らも同じブランクなんだがな」

どういう事だ……、わからない、この世界へ転移した理由、何らかの選別が起こっているのは確かだが。

「けれど家族と会えて良かったですよ。うちは嫁と娘達に未だに会えてませんからね。まぁ、うちは娘も大きいからどこに出てても頑張って生きていると信じてます。ああ、隣の国には居て欲しくないですね。近々探しに行きたいなぁ」

タウさんとこは家族に会えていないのか。

「うちも家族がどこにいるのかわからない」

「僕も…です」

アネさんとゆうご君もか。

食べ終わり、食後のお茶も終わったふたりが炎の壁の向こうのふたりと交代した。

ミレさんもカンさんも家族と会えていないそうだ。

「パラさんだけ家族ごと転移したのか。もしかしてパラさんが勇者で主人公なのか……」

ぶはっ!

パラさんがコーヒーを盛大に噴き出した。

「ちょっ、カオるん、ヤメロ、あははは、俺は勇者じゃないぞ。ただの職業ナイト、騎士だかんなw」

「そうですね。リンダさんも家族と会えてます。今王都で家族で住んでいます。旦那さんとお子さん3人。旦那さんは一般人でしたね」

ますます解らなくなった。

異世界に転移なんて神さまの力でもって行われたんだろうし、人間の俺が考えても解るわけがない。

よし、放棄しよう。いつものように考えるのをやめた。

さて、山から湧き出るアンデッド対策だが、タウさんの案で、昼間は移動途中で休憩を多く取り身体を休める、夜間は3時間おきにバフォダンスを披露する。

「カオるん、山に向かって魔法を撃って!」

「何を?」

「ブリザでもライトニングでもフローズンでも!何でもいい。バフォの力を見せてやれ!」

「ほーい」

という訳で、夜間はダンスと威嚇、昼は移動と休憩で北へ北へと進んで行った。

もちろん、星影を迎えに行くたびにマルたんで癒されて、作りたてのサンドイッチを渡された。(アイテムボックスに入っているのはどれも作りたて状態なのだが)