軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

183話 王都からの知らせ

今朝は珍しく西門の弁当が売れ残った。

どうやら冒険者達の大半はダンジョン行きのバス、じゃない馬車に乗るために南門へ行くかららしい。

6時発のダンジョン馬車に弁当を売るために6時5分前に南門へテレポートをしているが、こちらはかなり混雑している。

3台並んだ馬車にギッチリと冒険者が詰め込まれている。弁当販売の場所を見直した方が良いかもしれない。

地下ダンジョンから戻った3日目にギルドから呼び出しがあった。

たぶんこの間の報奨金の件だろう。

ついでに弁当売り場の件も話してこよう。

実は昨夜開いたやまと屋会議で、弁当の販売はギルド前と店内の2箇所にする事が決まった。

もちろん6時ちょい前に南門(ダンジョン馬車)へは行くつもりだ。

ゴルダから報奨金を貰ったあとにその話をすると、ゴルダは少し考えた後にギルドの職員を呼び、何かをやり取りしていた後おもむろにこちらに顔を向けた。

「ダンジョン行き馬車だが、ギルドの裏道にする。お前はギルド前で弁当を売ればいい。欲しいやつは買いに行かせる」

なるほど、それはありがたい。

「なら、早速貼り紙するわ。門と…ギルドの掲示板とうちの店内に貼っとけばいいか。あとで貼りにくる」

「こちらからの依頼だが、お前さんの魔法を込めたスクロールを作って欲しい」

「ん? いいぜ、何の魔法だ?」

「カーズリムーブと言ったか、石化を解く魔法だ。この先必要になるだろう」

「ああ、そうだな。わかった。何枚くらい必要だ?」

「ひとまず50、その後はおいおい。金額はこれでどうだ」

ゴルダから金額が書かれた紙を見せられた。……が、適正価格なぞわからぬ。うん。ゴルダ、信じているぞ?

「ああ、これでいい。……と、この下のヒールとかスローって」

「そっちは急がない。出来ればそれも作って欲しい」

なるほど、地下ダンジョン用かな?いや、地上で使うのか?

俺も身内用にもっと作っておこう。その前に女神さまんとこでブランクスクも沢山作らねば。

あ、スクと言えばで思い出した。

「あ、そう言えば渡したドロップの中にスクロールがあっただろ? あれ、どうなった?」

「ああ。強化スクロール。王都に送った。申し訳ないが現物は戻ってこないだろう。検証後に王都から報奨金で戻ってくる。さっき渡した中にその分は入っていない」

俺は構わない。俺の普段使い(?)の武器は強化済みだしな、それ以上強化しないといけない敵とは戦うつもりもない。

「皆は?」

「キック達にも報奨金は渡した。スクロールの件も了承済みだ」

「うん、そっか。俺も別にいいぜ」

「それから、地下ダンジョンの件だ。少し話していいか?」

うげっ。ボスまで行く話かなぁ。

ちょっとと言うか、あまりと言うか、すごく嫌だなぁ。地下ダンジョンは俺にとってあまり魅力がないんだよな。ドロップが金銀、宝石、あと何だっけ石…鉱石?

魔石も出たけど、魔石は地上でも採れるからなぁ。それと魔法書か、それも俺はいらんし。

それよりも地上ダンジョンで果物採りたい。

「地下は金貨や宝石、魔法書などお宝が出る。冒険者達には魅力のあるダンジョンだろう。しかし、街からすると今は地上の方が利がある。だが個人の冒険者を止める事は出来ない。だから今のうちに、メダルを獲る冒険者がいないうちに、アンデッド対策はするつもりだ」

「アンデッド対策って?」

「まず、慣れさせる。今は地上ダンジョンが賑わっている。が、そもそもそのダンジョンがあるのは死霊の森だ」

おお、そうだった。

マップで赤い点は見た事あるが、実際に死霊の森で魔物に出会した事はまだない。

「今まであの森は入らずの森として外から見守っていただけだが、今回の道整備にしろダンジョンの解禁にしろ、森の魔物もそろそろ動き始めるだろう」

「動き始めるって、氾濫?」

「いや、そこまで大事ではない。単にダンジョンの入り口側に寄ってくるだろうという事だ。だから死霊の森のアンデッド討伐の依頼を打って行く」

「確かに。まず地上のアンデッドくらい倒せないと、地下は難しいな」

「ああ。だから星影やレッサたちも森のアンデッド討伐に回ってもらった」

なるほど。

後々の地下ダンジョンのために銀武器の依頼も王都や近場の大きな街の鍛冶屋へ出しているそうだ。

ゴルダ大変だな。ギルド長って先々の色んな事を考えて同時に動いていかないとならないのか。

この街ってそんなに大きくないからギルドの職員さんも多くないだろうに業務ちゃんと回ってるのかな?もしかしてギルドってブラック企業なのか?

ギルドに事務職として就職出来ないかなと考えた事もあったけど、就職しなくて良かったかもな。

そうして10日ほど経ったある日、街に鐘が鳴り響いた。

カーンカンカンカン、カーンカンカンカン

「何だ? あの鐘」

「緊急地震速報?」

いや、それは無い。無いよね?俺は咄嗟にマルクを抱き上げて抱え込んだ。

確かゴブリンの氾濫の時も街中に鐘が鳴っていた。まさかまたゴブリンか!

「ねぇ、あの鐘……ゴブリンの時も鳴ってたよね?」

あっちゃんが真っ先に気がつく。

「嘘だろ、またゴブリンの氾濫か?」

「先日あんなに大量に燃やしたばかりなのに?」

山さんの悲痛な叫び、アイテムボックス持ちとしてゴブリンの死体運びをやらされたからな。子供達の顔も真っ青になっていた。

「また……ゴブリン」

「えでも、あれはカンカンカンカンだろ? 今のはカーンカンカンカン」

「カーンカンカンカンは何の合図?」

「一緒じゃないの? 隠れろ?」

「いや、逃げろかな」

俺がギルドに聞きに行こうかと立ち上がりかけた時、昼警備のバズッドさんがリビングへ早足で入ってきた。

「カオ、ギルドの職員が呼びに来たぞ」

俺は職員に連れられてギルド、ゴルダの元に向かった。

ゴルダから話を聞かされた。

事の起こりは鐘の鳴る少し前、王都から到着した早馬の騎士が持ってきた親書だ。

ギルド間の通信魔道具は短時間しか使えない、王都は早馬を出した事だけを魔道具で伝え、詳細は人に運ばせた。

騎士が運んできた情報、それは国の北西側から大規模なアンデッドの氾濫が発覚したとの事だった。

「え、それ……俺が聞いてもいいのか? 俺、ギルドの職員じゃないけど」

「構わん、どうせ直ぐに知らせる事になる。手間を省く」

「北西の山からアンデッドが続々と降りてきています。王都から騎士団が次々と派遣されています」

「あの、話の腰を折ってすまんが、俺、この国の地理がよくわからん」

ゴルダは棚の中から大きな羊皮紙を取り出し机に広げた。それは大雑把に書かれた地図だった。

「ここがこの国、エルアルシアだ。上、北側は地の終わりと呼ばれている高い崖が左右に続く。その1番右、ここが王都アルシードだ。アルシードは大きな港もある国一番の都だ。右側、東一帯が海だ。この沿岸沿いには王都ほどでは無いが大きな街がいくつもあり栄えている。

反対側、西側は巨大な山脈が連なり、隣の国と隔たりを作っている。越えるのは厳しく、隣の国へ行くには海側から大回りするようになる。

下側、南は森や山が多く、下へ行くほど街や村は減って行く。南端の海沿いだが波が荒く土地も崖状になっていて舟も停めるのが難しく村もない」

地図を見ながらゴルダの説明を聞く。

つまりこの国、エルアルシアは縦長の長方形っぽい国で、北側は崖、東側が海で栄えている、西側は高い山脈で隣と遮られて、南側は海が荒くて寂れていると。

「俺らの街はどの辺だ?」

「この街、ムゥナはここだ。ここに死霊の森がある」

ゴルダが指した先は、エルアルシア国のど真ん中あたりか?

「この国は北から東にかけて栄えています」

騎士の人が指差す。

「国土の四分の1の右上に村や街のほとんどが集まっている。死霊の森はその一帯の左下に位置する」

「ええ、死霊の森から下は小さな村がいくつかあるだけですね」

「いや、今はもう廃村だ」

うわぁ、俺たち危なかったな。

あとちょっと外れていたら迎えに来て貰えなかったかもしれないな。

「で、今回この北西端からアンデッドが溢れて来たのを近くの村が発見、村民は辛うじて逃れましたが村はもうダメですね」

「一番近いギルドから報告が来て王都からも応援が出たのですが、進行を食い止めるのでいっぱいです」

「数が多いという事か……」

「数がというより範囲が広すぎるのです。いえ、数も多いですが、北西端だけでなく、ここ、ここから下へ向かって」

騎士が指差した場所は西側の山霧地帯、隣の国との間に長く長く連なる山脈を上から中くらいまでだ。

「一点からでなく、山脈に沿ってアンデッドが降りてくるのか!」

「はい、このムゥナの街の西側もパラパラですが出始めています。自分が西側を縦に下りながら各街に親書を届けて来ました。一応ここが最後で後はこの街の駐屯騎士団に就くように指示を受けています。」

「それにしても、何で山からアンデッドが? よくある事なのか?」

「いや、無い」

俺の質問にゴルダが即答した。騎士が俺の方を見て、何か言いづらそうだが口を開いた。

「その……あくまで噂なのですが、ファルビニア王国が闇の神殿を突いていると少し前から聞こえていました」

「ファルビ……? 闇の神殿?」

「ファルビニア王国、この山脈の向こう側の国だ。闇の神殿はファルビニアの東、山脈にあると噂されている場所だ。確か立ち入る事も触れる事も禁じられた場所と聞いたが」

「その……どうやら、あちら側に落ちた稀人に闇の神殿を攻めさせていると」

「竜の尾を踏んだか……」

「竜が出るのか」

「例えだ。おおかた神殿を突いて溢れたアンデッドが手に負えなくなったのだろう」

「向こう側だけに溢れてくれればよかったのですが、どうやら山脈を越えてこちら側にも流れ始めたようで」

「止め方は? 溢れ出るのを止められないのか?」

「わからぬ。あちら側の事だからな」

俺の頭を怖い事がふとよぎった。

「ゴルダ、あの、うちのダンジョンは大丈夫か? 死霊の森ってアンデッドだよな? 地下からモリモリと溢れてこないよな?」

ゴルダがふっと笑う。

「大丈夫だ。そこは見張らせている。最近は森のアンデッドも定期的に処理している。うちは誰かさんのおかげで色々とありがたい物があるからな」

ゴルダは少し考えてから何かを決心したような顔になった。

「この辺りはうちで止めるぞ。」

うちってどこのうち?ギルドの事?そこに俺らも含まれている気がする。だが、弁当屋の皆を守るためには頑張らねば。

「アンデッドは足が遅いのが救いだな」

いや、速いやつもいたよ。

ギルドの職員が呼ばれて部屋に数人入ってきた。

「いったんダンジョンは閉鎖し、潜っている冒険者には前線に出てもらう。開拓村は街への避難。スラムも内側に入れろ。」

「山からバラけてやってきてるって事は、地道に倒す作戦か」

「そうだな。少しずつアンデッドの前線を押し戻す」

「ふぅ、それしかないか。山に帰ってくれないかなぁ」

俺は店へ帰る事にした。

鐘の音で冒険者がギルドに集まってきていたが、ダンジョンへ行っている冒険者が多いため、集まったのは少数だった。

ギルド職員が貼り紙をしていた。

俺は店に帰ると急いで皆を集めて鐘の音の説明をした。