軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

159話 29Fで挫折か(実際は8階だけど)

『29F』へ上がって来た。

「まずは29Fの敵を確認するぞ。星影とカオ、頼む。ヤマカー達はここで待機だ」

ゴルダの指示で俺たちは動き始める。

新しいフロアを進む時はドキドキするな。ゲームだと攻略組がネットに載せた情報を利用していたので、こんなにビビる事はなかった。

何が出るかわからないってこんなに怖い物なのか。攻略組って凄かったんだな、まぁ、あれはゲームだけどな。

「出たぞ」

ゴルダの低い声で我に帰った。

ちょっ、ヤベェ。

蜘蛛!

だけど大きさが、あ、スピード速い!こっちに来る!!!デカっ!近づくとさらにデカさが増した。

体の部分だけで俺の背を超しそうだ。長い脚を伸ばすと7〜8メートルくらいになるか?しかも、あのギチギチ言わしてる口?牙?

いやあああああ、アレ、無理くない?あんなんに目の前に来られたら即逃げるぞ、俺は。いや、今すぐ逃げさせて?

俺が後ずさる。

「リザイア!」

ゴルダの声とほぼ同時にリザイアが弓を放つ。

パヒュン、パヒュン、パヒュン

2射ともクモの胴体に当たったが、最後の1射は脚の間の地面に刺さった。

クモは一瞬止まったが、矢が刺さったままこちらに向かって来た。矢はクモの体の表面に浅く刺さっただけのようだった。

ゴルダとラルフが長いクモの脚に斬りかかる。

近い近い近い!

「あ、あ、あ、ひぃやあああああああ! す、す、スモール! スモール、スモール、スモール」

魔法が効かない!違う違う違う違う、スモールじゃなくて何だったか!スコール!スモー、スモーク、ちゃう、遅くなるやつ遅くなるやつ、アワワワ

「カオさん! スロー使えませんか!」

それえええええ!

「スロオォォォ」

クモむけてスローを放った。

あ、動きが遅くなった。スローモーションのようだ。ふうううううう、ありがとう、キック様。

ゆっくりと動くクモにゴルダとラルフが何度か斬りかかり倒した。

ホッとしたのも束の間、通路の向こうから壁伝いにまたクモがやってきた。

ザザザザザザッ

パヒュンパヒュン

クモは壁から天井へと移動し矢を避けながらこちらに向かってくる。

通路の天井からクモが飛びかかってきたが、ラルフとゴルダは瞬時に左右に飛び退いた。

地面に降りたクモをフィルが盾で抑え込む。ラルフの盾にクモの牙がめり込み、そこから盾がメキメキと割れ始めた。

すかさず盾を手放し後ろへ飛び退いたフィルだったが、クモがクルリと体を後ろに向け白い何かを尻から吹き出した。

「ケツから糸出したああああああああ、あ、スロー! スロー!」

慌ててクモにスローをかけた。動きが鈍ったクモをゴルダが一刀両断した。

「くっそ 取れねえ」

フィルはクモの糸を頭から被っていてもがいていた。だが、クモの死体が地面に沈むとフィルの身体に巻き付いた糸も消えた。

「とりあえず一旦階段まで戻るぞ」

階段まで走った。階段は何故かモンスターは近寄ってこないので、数段降りてそこで落ち着いた。

ふぅ、クモ怖かったな。山さん達も青白い顔をしていた。

「虫ダメえええ、無理」

いつもやる気満々のナオリンも珍しく弱音を吐いている。

「あんな大きい蜘蛛なんて反則じゃないですか?」

「あれ……ジャイアントスパイダーかな…」

キックの言葉にゲームを思い浮かべる。

いたな、ジャイアントスパイダー。でも初期のモンスターでレベルも低かったはず…。

ゲームではサクサク倒していたが、やはり現実というか実物大はケタ違いに怖い。しかも動きは速いしケツから糸吐くし、もう本当に無理。

「ダメだ。この盾はもう使えねぇ」

フィルの盾はクモの牙が食い込んだところから割れてしまっていた。

「一旦、退くしかないか」

ゴルダも撤退を考えていたようだ。

「そうね、こんな狭い通路だと弓も役に立たないわ」

「だな。フィルの盾も壊れちまったし胴体もあんなに硬いんじゃモタついたらこっちが終わりだ」

「そうだな。クモの懐まで入らないと一撃を入れられん」

ゲームだとジャイアントスパイダーは柔らかいイメージだったんだが、この世界の蜘蛛は硬いのか。

ゴルダ達は28Fのゴレ戦で貸したダマ剣を使ってるんだが、ダマ剣でもクモの胴体は斬りづらいみたいだ。

「クモって石ゴレより硬いんだな」

「いや、ストーンゴーレムの方が硬いぞ?」

「え? だって…」

「ああ、蜘蛛系の魔物は魔力を使った防御力が高いんだ。だから硬いというか魔力で弾かれる感じだ」

「どっちにしろ一度戻る。武器装備を整える必要もあるしスパイダーの対策も考えねばならん。これでは地図作りどころではないからな」

「そっか」

それがいいかもな。

「ところでクモのドロップは何だったんだ?」

あ、俺ビビってたから拾ってないわ。クモは何か落としたんか?

ゴルダがリザイアに近づきながら握っていた左手を開く。

「あら、魔石ね」

なにぃぃぃぃぃ!魔石だと!

俺はゴルダの開いた手のひらに顔を突っ込んで覗き込んだ。

ゴツい手のひらの真ん中に500円玉サイズの水晶のような半透明の石が乗っていた。平べったくツルリとした見た目の石だ。ゲームの魔石とは見た目が全く違う。

「それ、魔石なん?」

「ああ、クモが落とした」

「一個だけ?」

「全ての魔物が落とすわけじゃないからな」

魔石。欲しい。

WIZにとって魔石は命、魔石がないと発動しない魔法もある、発動の失敗率も上がる。

そう、俺の大好きなカンタマ(カウンターマジック)も魔石必須の魔法だ。

女神倉庫に五千くらいあったが足りない。一万以上は持っていたいし、常に補充したい。

俺はスマホの充電は常に98%にしたい派だ。80%を切って79%になってしまった時の心細さと言ったらない。

それと同じ原理だ。魔石を『一万個持っていたい』俺にとって、五千個なんてスマホ80%と同じだ。

出来れば一万五千、いや、二万くらい持っていたい。

スマホだって充電可能なら200%にしたいくらいだったからな。

「クモ、殺ろう! 俺はこのフロアを制覇するぜ!」

「え、ちょっとカオくん、何言ってるの」

山さんが慌てて俺を止める。

「いや無理だろう。フィルの盾も無いし」

「大丈夫だ、盾ならある。これでいいか?」

俺はアイテムボックスからオークシールドを出してポンと地面に置いた。ついでにオークソード、オークメイル、オークマント、オークヘルムも出した。

オーク畑と呼ばれていた狩場にこもっていた時期があり、そこでドロップした物だ。

オークシリーズは結構持っていた。盾、剣、鎧に帽子とマントの5種類でオークセットだ。確か、オーク系のドロップは魔力系に長けていたはずだ。

俺はもとからWIZであり魔防は高かったので使わなかったが、他の職のプレイヤーは低ランクの時は割と使うと聞いた。

それにオーク畑のドロップはオーク村だと高値で売れたので、資金稼ぎにはもってこいだったのだ。

あれ?先日ゴルダに渡した中にも入っていたはずだ。

聞いてみると、Aランク程になると自分達の武器装備を既に持っているので、今回は使わなかったそうだ。

俺はアイテムボックスからオークセットをとりあえず4人分出した。

オーク剣は3本で、リザイア用にオークボウを出した。

あ、盾も三個でいいのか。

「ええと、ゴルダやラルフ達が今どんなのを装備してるかわからんけど、これ魔力系が高い(かも知れない)からちょっと使ってみてくれ」

フィルは直ぐに手に取って装備を替え始めた。

「見た目より軽いな」

オークメイルを身につけオーク盾とオーク剣を持ったフィルは着心地や剣の振り具合を確認しているようだった。

オークセットって見た目黒一色なんで、言っては悪いがちょっと G(ゴキ) っぽいな。あ、スマン。

それからマントを羽織り、ヘルム被った。

……ヘルムを被るとさらにGっぽさが増す。俺は絶対着ないぞ。

一式身につけたフィルを見て、ラルフ達も直ぐに装備を替えていた。

「あら、この弓いいわね」

リザイアはオークボウを気に入ったようだ。

「盾も見た目はガッツリしているのに想像以上に軽い」

フィルはオーク盾も気に入ってくれた。

ラルフも装備を終えた。…………黒い集団が出来た。

「戻るにしても今一度、この装備を試してからにするか」

「そうね」

「うむ」

よかった。とにかく俺は少しでもこのフロアを進めたいのだ。マップが出来たら魔石取りに通いたいんだ!

山さん達を階段に残して、ゴルダ、ラルフ、フィル、リザイア、俺の5人は29Fを再び進み始めた。

果たして。ビックリするほどオーク武器装備は蜘蛛に効果があった。

まずリザイアのオークボウだが、矢に火魔法効果が付いた。

矢はリザイアが元から持ってきた物だったにもかかわらず、オークボウで放つと火魔法が発現した。

しかもさっきは蜘蛛の防御魔法で弾かれて外れるか浅くしか刺さらなかった矢も今度は深く突き刺さる。

しかも刺さったそこから燃え始めたように蜘蛛の胴体の中から火が噴き出ていた。

蜘蛛は1〜2射で仕留める事が出来た。

フィルが持ったオーク盾も蜘蛛の魔法防御を上回っていたようで、盾で弾き返す事が出来た。

蜘蛛の尻から出される糸攻撃も剣や盾で簡単に弾く事が出来た。マントやヘルムも蜘蛛の攻撃をものともしなかった。

結果、4人は出てくる蜘蛛をサックリと倒す事が可能になり、このフロアの地図作成を続ける事となった。

階段まで山さん達を迎えに行き、全員で29Fを隈無く回った。

山さん達のゲーム装備の効果がわからず、念のためオーク装備にチェンジしてもらった。

うわぁ……。黒い集団。俺のWIZローブも黒かったんだ。

山さん達は『30F』の階段前で地図作成を始めた。

魔石は蜘蛛10匹で4〜5個か。悪くはない。絶対来よう。

今回のドロップはギルドの物なので、俺の魔石と混ざらないようアイテムボックスに入れずに肩掛け鞄に入れておいた。

マップ作成で29Fを徘徊したのは2時間くらいか。魔石はザッと数えて百個くらい出た。

1日8時間籠って四百個、10日で四千個、1ヶ月通えば一万二千か。

とりあえず半年くらい通うか。

ガチ装備でサモン出して狩りまくればもっといきそう…いや、29Fまで上がるのがキツイか…。ダンジョン29Fのブクマさせてくれぇぇぇぇ。

俺が妄想を炸裂させている間に山さん達は29Fの地図の描き移しを終わらせた。

そして俺たちは『30F』へと上がっていった。

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◆やまとダンジョン◆

22F(1階):魔物なし

23F(2階):スライム ドロップなし

24F(3階):ゴブリン ドロップなし

25F(4階):オーク 肉

26F(5階):ノールン 林檎、バナナ、オレンジ、レモン他

27F(6階):オウルベア ハチミツ、毛皮

28F(7階):ストーンゴーレム 硬い石

29F(8階):ジャイアントスパイダー 魔石