作品タイトル不明
19. イケメンマッチョの将軍様が作りました
残念ながら魚の干物ではなく、その日の夕食は鶏料理だった。
ロイドがレティシアの口元に運ぶ姿を、ヴェリアルが少し離れた場所から、じ――っと見ている。
魔法帝が嬉しそうに、それも敵国の将軍から、「あ――ん」してもらう姿に思うところがあるのだろうか。
《わが主が、すっかり腑抜けてしまった。嘆かわしいこと、このうえない》
先ほどから、うるさくて仕方なかった。
「ネコ用の特別メニューだが……少し時間があったので、俺が作った」
ロイドが言う。野外宿営の多い生活で、料理はわりと得意らしい。
普段レティシアが食べているおやつも、時々ロイドの手製だと聞いた時は、さすがに度肝を抜かれたものだが……。
《よりによって、こいつが作ったのか……。ふん、戻ってきて損したな。プロの料理人ならともかく、野営ついでの田舎料理など……む?》
いちいち文句を言いながら、ヴェリアルが不満げに鼻を鳴らし、一口食べた。
《……むむむむ!?》
しばし固まり、もう一口。
《うんまぁあああッ!!》
気付けば皿に顔を突っ込み、端まできれいに舐めとっている。
《な、なんだこれは!? 美味いとかそういう次元ではないぞ!?》
「……随分とうまそうに食うな」
夢中で皿を舐める不細工なネコを、ロイドが珍しそうに眺めている。
(頭の ア(・) レ(・) な、計算高い将軍なんじゃなかったのか?)
《……》
答えはない。レティシアは無言でヴェリアルを見た。
いつ移動したのだろう。ロイドの足元で、まるでネコのようにゴロゴロと喉を鳴らしている。
(一日で帰るんじゃなかったのか?)
《魔力の回復には時間がかかる。お前がこれ以上騙されないよう、監視も必要だからな。しばらく滞在させてもらう》
(嘘をつけ。ロイドの飯が目当てだろう)
《聖獣たる吾輩を侮辱する気か? 断じて違う!》
(ふぅん? ならばロイド特製、食後のデザートは必要ないな)
《あっ、ください》
すぐさま前言撤回。
しっぽが揺れ、ヴェリアルはロイドの手料理を、嬉しそうに頬張った。
(お前に、聖獣としての誇りはないのか)
《この柔軟さが、吾輩の良いところだ》
すっかり胃袋を掴まれたヴェリアル。
一日のはずの滞在は二日経ち、三日経ち……そして一週間経ってもなお、滞在し続けることになるなんて。
このときのレティシアは、思いも寄らなかったのである――。