軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第58話:プレオープン告知と極楽の寝湯

ゴルルルルルルルルッ!!!

すり鉢状の巨大コンクリートミキサーが、凄まじい竜巻を巻き起こしながら絶賛空回り(アイドリング)を続ける中。

完成したばかりの巨大露天風呂の前に立つルミナが、満面の笑顔でドローンカメラに向かってピースサインを決めた。

「みんなー! 重大発表です! ケントさんが作り上げたこの極楽リゾート……明日、ついに『アビス最下層スーパー銭湯』としてプレオープンしまーす!」

ドローンのレンズ越しに、チタンの間接照明に照らされた湯けむりと、立派な岩風呂が映し出される。

『うおおおお! 行きてぇぇぇ!』

『最下層に行くまでに命がいくつあっても足りんww』

『ついに完成か! おめでとう親方!』

『プレオープンってことは 無料券(クーポン) ある?』

同接200万人のリスナーはお祭り騒ぎだ。

***

しかし、この「プレオープン告知」は、地上の各国の首脳陣にとって「最悪の死の宣告」であった。

「オーマイガー……。プレオープン(軍事行動開始)だと? つまり明日、あのICBMの発射管(※ただの温泉の煙突)と、謎の超巨大・竜巻兵器(※ただのミキサー)が同時稼働するという事か……ッ!」

「世界が終わる……我々は、明日滅亡するのだ……」

ペンタゴンの長官は十字を切って祈りを捧げ、世界中の政府機関が絶望のどん底で頭を抱え、発狂していた。

***

そんな地球規模の終末論など露知らず。

当のテロリスト(現場監督)とその一味は、すでに湯浴み着を羽織り、プレオープン前の「テスト入浴」を心ゆくまで満喫していた。

「あぁ〜……極楽、極楽……。夜勤明けのサウナからの露天風呂、これぞ大人の贅沢だな」

ケントは湯船の端にある浅いスペースで、仰向けに寝転がりながら最高のリラックスタイムを謳歌していた。

「ちょっと親方! ミキサー回しっぱなしで何くつろいでるんですか!」

隣の湯船からツッコミを入れる 東雲(しののめ) 霞(かすみ) 。しかし、その顔はすっかり上気し、ちゃっかりと一番風呂を満喫している。

「いいんだよ、コンクリの材料(砂利)を入れる前に、少しミキサーの空回しテストをしておきたかったんだ」

ケントは目を閉じたまま、自分の寝転がっている浴槽の構造を語り始めた。

「それよりエリート君、この『寝湯』の入り心地はどうだ? 人間が一番ダラけられる絶妙な『ナナメの角度』に石を組んであるんだ。お湯の浮力と合わせれば、腰の痛みが完全に消え去る現場の知恵ってやつさ」

「なるほど……。しかも、お湯が常に浴槽のフチからザバーッと溢れ出るように『パズルみたいに石をズラして』組んであるから、浮いたゴミや葉っぱが勝手に外へ流れて、いつでもピカピカのお湯に入れるのね……って、なんでただの石積みのパズルでそんな神業みたいなスパができるのよ!?」

霞が呆れ半分、感心半分でため息をつく横で。

「……ふにゃぁぁ……寝湯、最高じゃぁぁ……。お湯に浮いておる……吾輩、もう一生ここから動かんぞ……」

「ケントさん……私、もう体がとろけちゃいますぅ……」

隣の寝湯スペースでは、コア公とルミナが並んで仰向けになり、だらしない顔で完全に液状化していた。ダンジョンの絶対的管理者も、大人気VTuberも、絶妙なナナメの角度と完璧な水圧の前にあっけなく陥落である。

さらにその奥のサウナ室からは、

「「「うおおおおッ! 親方の作ったサウナ最高ォォォ!!」」」

「「「水風呂キンキンだぜぇぇぇッ!!」」」

と、何十億円ものボーナスで買収された特務部隊の筋肉たちが、国家の危機など完全に忘れて「ととのう」ことに命を懸けていた。

『コア公ちゃんとルミナちゃんが完全に溶けてるww』

『あの二人、もう地上に戻れない体になっちゃったね』

『国家の最高戦力がサウナでガンギマリしてて草』

『寝湯の石の組み方までプロの犯行』

平和すぎる地下の光景に、コメント欄もすっかり和んでいた。

***

「ふぅ、芯まで温まったな」

ケントはパシャリと顔を洗い、ザバーッと湯船から立ち上がった。

「さて、ミキサーの空回しテストも良好だ。そろそろ、あのすり鉢の中に『コンクリートの材料(砂利)』を放り込みに行くか」

タオルで体を拭きながら、ケントが呑気にミキサーの方へと歩き出した――その瞬間だった。

『ターゲットの対空・竜巻兵器、今なら無防備だ! 中心部から破壊するぞ! これより全機、スラスター全開で強襲ダイブする!!』

『『『 了解(ラジャー) !!』』』

上空で待機していた日本政府の最強機動兵器(パワードスーツ部隊)が、推進器から猛烈な炎を吹き出し、超音速の隕石となって最下層へと突撃を開始した!

そして彼らが真っ直ぐに狙いを定めたダイブの 終着点(ターゲット) は、くしくもケントが材料を放り込もうとしていた『超巨大コンクリートミキサー』のド真ん中であった。

「ん? なんだあの光……おっ。空飛ぶロボット(羽虫)ども、わざわざ自分からミキサーの竜巻の中に飛び込んでくれるみたいだぞ。解体の手間が省けて助かるな」

「親方ァ!? あれ材料(砂利)じゃなくて、国家の最新鋭の機動部隊ですってばぁぁっ!! なんで軍隊が集団でコンクリートの材料に志願してるのよぉぉッ!」

霞の絶叫がこだまする。

一方、ミキサーの竜巻のド真ん中へと突っ込んだパワードスーツ部隊は、内部の金属ブレード(羽根)の構造を見て、通信機越しにパニックを起こしていた。

『隊長ォォ! ダメです、これ対空兵器じゃありません! ただ材料を粉々にして混ぜるだけの、アホみたいに巨大なコンクリートミキサーですゥゥゥッ!!』

『なんだとォォ!? 罠だ! 我々を砂利(コンクリの材料)にする気かァァァッ!!』

『うわあああ! 竜巻の遠心力で抜け出せないィィィッ!!』

ただ遊園地の土台を作りたかっただけの平和な現場監督と、巨大ミキサーを最終兵器と勘違いして自ら『粉砕機の刃』へと突っ込んだ国家の最強部隊。

すれ違いの頂点に達した最強部隊の命がけのダイブが、今、無自覚なミキサーのすり鉢へと自ら吸い込まれていく――!