軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第55話:最新兵器の建材化と、裏切りのアート

カランカランッ……。

クーリングタワーの猛吹雪によって機能停止し、ケントの足元に落下してきたカッチカチに凍りついた鉄の塊。

それは日本の防衛省が莫大な予算(一台百億円)を投じて開発した、最新鋭の軍事用偵察ドローンであった。

「おい筋肉ども。この不法投棄された鉄屑、よく見たらかなり上質なチタン合金じゃないか? 表面のコーティングも一級品だぞ。現場にゴミを捨てるのは許せんが、使えるものはリサイクルしてやるのがSDGsってやつだ」

「おっ、マジっスね親方! それ、防衛省の最新鋭『零式・特装ドローン』じゃないですか!」

特務部隊の屈強な男たちが、泥だらけの顔をパァッと輝かせて凍ったドローンを囲む。彼らはつい数日前まで、このドローンを運用する側にいた国家の最高戦力である。

「ついに国から、露天風呂用の建材(差し入れ)が届いたんスね!」

「防衛省の奴らも気が利くじゃないッスか! 親方! こいつを解体して、露天風呂のオシャレな装飾に使いましょう! 絶対に映えますよ!」

一台百億円の国家機密を前に、満面の笑みで祖国を裏切る筋肉たち。

そのあまりにも清々しい社畜化(ホワイト現場への洗脳)っぷりに、現場監督補佐の 東雲霞(しののめかすみ) はスパナを落として頭を抱えた。

「あんたたち、ちょっとは躊躇しなさいよ! それ、一台で都内にタワマンが建つレベルの軍事機密よ!? なんでただの景観オブジェにしようとしてるのよぉっ!」

霞の悲痛な叫びも虚しく、ケントはすでに工具箱を漁っていた。

「よし、ちょうど露天風呂の照明周りに良いアクセントが欲しかったところだ。さっさと手バラシ(解体)して組み上げるぞ」

ケントの視界に、対象の構造を丸裸にする青い立体設計図が展開される。

彼は熟練の職人のように目を細め、チタン合金の接合部の最も弱い部分を的確に見抜いた。

「どんな頑丈な鉄屑も、関節の隙間に『ハイスライムの酸』をちょっと塗って、ハンマーでガツンと叩けば、接着剤が剥がれるみたいにパカッと外れるんだよ」

ガンッ!

ケントが特殊なハンマーで軽く叩くと、強固なチタンの装甲はいとも簡単にパラパラと崩れ落ちた。さらに彼は、雷属性の魔石をくっつけた自家製の『魔導ノコギリ』を手に取る。

「あとは雷の魔石をくっつけた『特製ノコギリ』で、バターみたいにスパッと切るだけだ。この鉄屑、裏側がピカピカしてるから……」

バチバチバチッ!

まばゆい閃光と共に、最新鋭の兵器はあっという間に美しい流線型の「間接照明のカバー(ランプシェード)」へと姿を変えた。

それを巨大露天風呂の岩肌に設置し、下から柔らかな魔石の光を当てる。光はチタンのピカピカの表面で美しく反射し、立ち込める温泉の湯けむりを幻想的にライトアップした。

「よし、完璧だ。ピカピカの裏面に光を当てて、温泉の湯気を照らすんだ。これで夜の露天風呂も最高の雰囲気になるぞ!」

『うおおおお! めちゃくちゃオシャレな間接照明できた!』

『高級旅館の露天風呂かな?』

『元・国家の最新兵器(現在:オシャレなランプシェード)』

『親方に掛かれば、百億円の軍事ドローンもただのニトリの照明器具よww』

『特務部隊のニコニコ裏切り笑顔で腹痛いww』

ルミナのドローンカメラが、幻想的に照らされた大浴場と、その隣で「吾輩、早くあの中で泳ぎたいぞ!」と羽をパタパタと振るコア公の姿を映し出す。

世界中のリスナーは、国家の威信がただの「映える装飾品」へと成り下がる痛快なDIYショーに大歓声を上げていた。

***

しかし、地上。日本ダンジョン管理庁の特別対策室は、阿鼻叫喚の地獄絵図と化していた。

「……あ、ああっ……!!」

防衛省のトップが、血の気を失った顔で震える指をモニターに向ける。

そこに映っているのは、通信が途絶える直前に『偵察ドローン』が死に物狂いで送信してきた、最下層の断片的な映像データだった。

モニターには、地獄の業火のように煮えたぎる巨大な熱水(※42度の快適な温泉)と、もうもうと立ち込める蒸気。

そして、その熱水に向かって、バチバチと恐ろしい雷光(※照明を取り付ける魔導ノコギリ)を放つ謎の処刑器具を持った男と、狂ったように笑いながら何かを放り込んでいる屈強な男たち(※間接照明を設置して喜んでいる特務部隊)の姿が映し出されていた。

「間違いない……。奴ら、空調設備に見せかけた『絶対零度のトラップ』で先遣隊のポッドを捕獲し、凍りついたパイロットたちを生きたままあの巨大な『溶鉱炉』に放り込んでいるんだ……っ!」

軍事的なバイアスと極度の恐怖は、幻想的な露天風呂の設営風景を、「世界で最も残酷な処刑場」へと完全に変貌させていた。

「テロリストめ、我々の精鋭をよくも……ッ! そしてあの屈強な男たちは、洗脳された我々の特務部隊ではないか! 悪魔め! 奴は人間の心を持っていないのかぁぁぁッ!!」

完全に装飾品アートへと加工されるドローンの最期の通信映像は、地上本部に「味方が生きたまま溶鉱炉でドロドロに溶かされている」という最悪の絶望を植え付けてしまった。

高官たちは頭を抱えて泣き崩れ、会議室は絶望のパニックに包まれる。

平和すぎるアビス最下層と、恐怖に支配される地上。

軍事兵器すらも「映える間接照明」にしてしまう圧倒的なDIY力による極限のすれ違いは、いよいよ国家を暴走させていくのだった――。