軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第24話 魔導サーキュラーソーと、極上水圧

キュィィィィィンッ!!!

絶望の迷宮の最深部に、現代の建設現場でしか聞けないような、甲高いモーター駆動音が鳴り響く。

全長三十メートルの無機物魔獣『ミスリル・タイタン』。

その腕が振り下ろされれば、小山すらも一撃で粉砕される。

だが、ケントは迫り来る巨大なミスリルの拳を前にしても、全く逃げる素振りを見せなかった。

「よっと。まずは『配管』の長さを揃えるために、関節部分からカットしていくぞ」

ケントは自作の『魔導サーキュラーソー(丸ノコ)』を構え、タイタンの拳に向かって刃を押し当てた。

ガガガガガッ!! キュィィィィィンッ!!

激しい火花が散る。

常識的に考えれば、神話の金属であるミスリルにガラスの刃が勝てるはずがない。

しかし、この丸ノコの刃は、Sランク『黒曜竜』の超硬質ガラスを加工したものだ。

「あのトカゲのガラス板、熱に強いうえに摩擦係数も低いから、丸ノコの刃としては最高峰なんだよ。さらに雷の魔石のトルクで、超高速回転を生み出してるからな!」

ズバァァァッ!!

ルミナと、配信を見守る数百万の視聴者の目の前で、信じられない光景が広がった。

絶対防御を誇るはずのミスリル・タイタンの右腕が、まるで発泡スチロールでも切るかのように、スパンッ! と綺麗な断面を見せて切断されたのだ。

「ひゃああああっ!?」

『ええええええええ!?』

『ミスリルが豆腐みたいに切れたぞ!?』

『打撃無効なら切断すればいいじゃない、ってマリー・アントワネットも言ってた』

『言ってねーよwww』

右腕を失ったタイタンが、音なき咆哮を上げて踏み潰そうと足を上げてくる。

「おっと、暴れると切り口が歪むだろ。まっすぐなシリンダー管が欲しいんだから、じっとしててくれ」

ケントはひらりと身をかわすと、今度はタイタンの両足、そして胴体へと、踊るような足取りで丸ノコを滑らせていく。

キュィィィン! ズバァンッ! ガラガラガラッ!

ものの数十秒。

人類が軍隊を率いても傷一つ付けられないはずのSランク魔獣は、ケントの狂気的なDIYツールの前に、ただの『綺麗にカットされたミスリル製の 配管(パイプ) の山』へと姿を変えていた。

「よし、完璧だ。寸法通りの極厚ミスリルパイプと……お目当ての『特大の雷の魔核』も無傷でゲットだぞ」

俺は足元に転がった、青白くバチバチと放電する巨大な魔核を拾い上げ、満足げに笑った。

『…………』

『Sランク魔獣の討伐タイム、約四十秒』

『討伐っていうか、完全に【資材の解体作業】だった件』

『これ、ギルドの連中が見たら泡吹いて倒れるぞww』

『あんなデカい丸ノコを片手で振り回すおっさんの腕力も大概バグってるんだよなぁ』

ルミナは口をパクパクさせながら、綺麗に筒状に切り分けられたタイタンの残骸を見つめた。

「け、ケントさん……これ、本当にパイプになっちゃいましたね……」

「ああ。これで水圧の問題は完璧に解決する。さっさとログハウスに戻って、ポンプの改修工事を始めよう!」

***

一時間後。

極楽ログハウスの裏手で、ケントは回収したミスリルのパイプと雷の魔核を組み合わせ、新たな『超高圧純水ポンプユニット』を完成させていた。

「ルミナちゃん、バルブ開けるぞー! シャワー出してみてくれ!」

「はーい!」

脱衣所にいるルミナが、香炉樹のシャワーヘッドの蛇口をひねる。

プシャァァァァァァッ!!!

「わぁっ!! すごいすごい!! 前よりもお湯の勢いが強くなってる!!」

「ミスリルのシリンダーなら、どれだけ圧力をかけても絶対に破裂しないからな! これで高級ホテルのような『打たせ湯』レベルの強烈な水圧も楽しめるぞ!」

「あははっ! 最高です、ケントさん! もう一生ついていきます!!」

ルミナの歓声と、シャワーの勢いよく出る音が、ログハウスの庭まで響き渡る。

インフラのパンクという絶体絶命(?)のピンチは、ケントの規格外の買い出し(魔獣解体)によって、わずか数時間で、よりオーバースペックな快適環境へのアップデートへと変わってしまった。

『シャワー直ってよかったねwww』

『Sランク魔獣の命と引き換えに得た、極上の水圧』

『人類の脅威<<<ルミナちゃんのシャワー』

『平和すぎる。ここが最下層だなんて絶対に信じないぞ俺は』

こうして、また一つ最下層のログハウスは「完璧なオアシス」へと近づいた。

しかし、この異常すぎる平和と繁栄が、地上から欲に目が眩んで降りてくる『招かれざる客たち』のターゲットになるのは、もはや避けられない運命だった。

――数日後。

ログハウスの 絶対安全領域(セーフゾーン) のすぐ外に、ついに第一の侵入者がその汚いブーツを踏み入れることになる。