作品タイトル不明
❄最終話:氷たちは氷たちらしく、幸せに。
ハブリエルが将来を見据えて動き始めました。
ルーカスもランヴェルト様の跡を継ぐための授業を増やしました。
「子どもたちがどんどんと成長していくな」
「ええ。最近の二人は、すごく大人びた顔をしますよね」
自分たちが子どもたちと同じ歳のときは何をしていただろう、なんてことを夕食の席に向かいつつ話していました。
そこから話がどう転がったのか、顔合わせのときの話になっていきました。
「あのとき、本当にラッキーだと思ったんですよね」
「ら……ラッキー…………」
「はい。だって、愛だの恋だのって本当に理解できないと思っていたんです、あの頃は」
そう話しつつ、食堂に入ると、既にハブリエルとルーカスが席についていました。
「何の話?」
ルーカスが首を傾げて、聞いてきました。
ルーカスは自らは話さないものの、話を聞くことはかなり好きなようで、私たちの会話に興味深そうに耳を傾けていることがあります。
「私とお父様が出逢った日のことよ」
「聞いたことない」
珍しくハブリエルも会話に参加してきました。ランヴェルト様が感動で震える唇を右手で押さえています。そこまで?とは思うものの、ここ最近のランヴェルト様はとにかく感情豊かです。
お義父様が「今が思春期なんじゃない?」とかすごく適当なことを言っていたのを思い出しました。
「私たちが契約結婚だったのは知っているでしょ?」
そう言うと、二人がこくりと頷きました。
なんとなく瞳が煌めいていて、物語がどうなるのか楽しみに聞いている子どものように見えます。とても珍しい現象です。
「初対面でね、『お前を愛することはない』って言われたのよ」
「「…………」」
ランヴェルト様の名台詞をドヤ顔で言うと、ハブリエルとルーカスがぽかんとした表情になりました。そして二人で顔を見合わせると、ボソリと呟きました。
「…………父上、最低」
「……………………父上、カス」
「ぬぉあ!?」
急なる暴言にランヴェルト様が衝撃を受けていました。
「母上はなんで結婚したのですか?」
ハブリエルが不思議そうに聞いてきました。
なぜ、結婚したのか。
なぜ…………。なぜなんでしょうね?
「あ! ランヴェルト様を見ているのが、なんだか面白くて」
「「なるほど」」
「まて。なぜ二人とも納得した」
息子たちの深い頷きに、ランヴェルト様は不服らしいのですが、そこは仕方ない気がします。
ランヴェルト様は可愛いので。
「私も、そんな相手がいいです」
「うん。私も」
ハブリエルもルーカスも、私と同じ感覚のようです。愛だの恋だのはよくわからないけれど、面白い人は好き。
「褒められているのか、褒められていないのか、わからない!」
「「「褒めてます」」」
「三人同時に言うなっ!」
ランヴェルト様のツッコミで、その場にいた全員が笑い声を上げました。
家どうしの契約結婚で、「お前を愛することはない」と言われたので「そうなの?私もよ」と言い返したら、なぜか溺愛コースに進み、子供にも恵まれました。
私たちは私たちらしくあり続けていますし、とても幸せです。
こんな結婚の形も、ありですよね?
―― fin ――