軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

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儂ならこう考えると、かつてクレイトスの王都を陥落させた男は言った。

「制空権をとり、魔力を焼く竜を持つラーヴェをどうやって落とすか。まず、効率よく使えるのはアルカじゃ」

技術と魔術、何もかもが女神と竜神を斃すために作られたものばかりだ。

非難をおそれず、道徳心を捨てれば、使わない手はない。

「特にアルカが作った、クレイトスとは構造が違う転送装置」

だがあげられたものに、最初はぴんとこなかった。

「クレイトス領土内の転送装置はすべて王族の管轄下にあって簡単には動かせんし、改良も時間と費用がかかる。貴族どももうるさかろう。なら、アルカが作ったものを乗っ取って再利用すればいい。ちょっといじってクレイトスの、女神だけが使えるふたつめの転送装置のできあがりじゃ」

「クレイトスにはアルカよりもっと性能のいい転送装置があるのに、わざわざアルカに戦力をさいてまでふたつめを作る価値はあるのか?」

「あるさ。もうひとつは違う使い方をする。こんなふうに分解して、持ち運びを容易にして」

カニスに渡したのは一部だったらしく、別のものをロルフは取り出して見せた。

「携帯できる転送装置とかどうじゃ? 戦場のどこにでも軍が現れる」

アルカの転送装置にかかった魔術を書き換えられるように解析し、装置を分解して、持ち運んで組み立てられるようにする。そして組み立てた場所に、好きなだけ軍を送り込めるとしたら――ぞっとしたジルに、ロルフは笑った。

「使い捨てにしたのは転送元を辿られないため、あとは機密保持のためじゃろ。クレイトスはなんで誰もやろうとせんのか、儂は不思議じゃったよ。まあ、倫理だの不敬だのくだらん理由じゃろうが。それに、大きな問題があるからのう」

「転送に使う魔力だな」

転送は距離と物量に比例して魔力が必要になる。ラキア山脈をおりていったカニスとミレーによると、アルカで作った転送装置の魔力は教団員が毎日祈りを捧げる形で蓄えていたらしい。

「じゃがそれも解決した。魔力の吸収っつー非人道的な荒技でな」

「吸収した魔力の使用先はそれか……! どうするんだ、仕掛けられた装置を探すのか」

「いや、使い方が慎重じゃ。バンバン使えるならベイルブルグなんぞとっくに落ちとるはずじゃからな。今は仕掛けられた転送装置をさがす時間も惜しい。だから転送前の、もとを叩く」

ロルフは地図を広げた。

「魔力量を考えると転送する戦力は精鋭で、転送先までの距離が短いほうが望ましい。つまりサーヴェル家を、ラーヴェ防衛の要であるベイルブルグとノイトラール、レールザッツ。この三カ所に送りこめる効率のいい場所――ここのあたりじゃろ」

指さされたのは、ラキア山脈の北部だ。国境防衛のためにあるサーヴェル家の監視塔のさらに奥、北の砦があやしいとロルフは言う。

「兵や資源を集めやすいのはそこじゃからな。ラーヴェ側も警戒しにくい。国境防衛をクレイトス軍で固めてサーヴェル家の姿は見えんのは、こういうカラクリじゃないかと儂は思うんじゃがな」

「……陛下がいるのに喜んで出てこないなんておかしいと思ったんだ」

「喜んで出てくるのがそもそもおかしいって気づいてほしいな……」

「ま、本当に読みが正しいかと言われたら、正直確率は五分五分じゃ。だが、当たれば国境にもベイルブルグにも援軍は出せなくなる。それぞれに対応した戦力を出して押し返して、戦争は終わりじゃ。ラーヴェ帝国の最大火力をぶっ込む価値はあるぞ。どうする?」

どこで拾ったのか、小枝でそれぞれ示され、ジルとハディスの腕をゆさぶった。

「わたしは賛成です、陛下。やりましょう! わたし頑張ります!」

「君は情報戦にもう飽きてきただけでしょ」

「そ、そんなことはないですよ。あ、これがご褒美でもいいです!」

「そんなご褒美ないよ!」

「もちろんもう少し情報を集めるのもアリじゃ。ただ、アルカを取り逃がしたこと、国境に竜帝がいる情報はあっちにも伝わっとる。お前らのいう子狸なら、不確定要素込みでも先手を打ってきそうじゃが」

「あの横恋慕くんか……」

嫌そうな顔をしたあと、ハディスは諦めたような顔をした。

「わかった、のろう。戦力の配置がどこも攻め手にかけますよねっていう感じがむかつくし」

おお、とジルは目を輝かせる。そのジルを諫めるようにロルフがただし、と大声を出した。

「できるだけ竜帝は温存しろ。主戦力はお前じゃ、竜妃」

「え、いいんですか!? わたしの独壇場で!?」

「無茶だよ、いくらなんでもサーヴェル家の皆さんが出てくるでしょ」

「その辺は手を打っとく。ともかく、竜帝は置いとくだけじゃ。できるだけ守れ」

「わっっかりました!」

ジルは立ち上がって敬礼をしてから、ハディスに振り向く。

「おまかせください、陛下! わたしが守りますからね!」

お弁当よろしくお願いしますと元気よく続けると、やや引きつった顔でハディスが頷き返してくれた。

――それが、今から数時間前。

「他愛ない」

一番高く昇った太陽の下、雪が蒸発した監視塔の頂上。

縁に靴底を押し当て、右手に剣を、左手に鞭を持ち、ジルは斜面に転がったクレイトス兵たちを睥睨していた。