軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

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できる男という主張はまんざら嘘でもないらしい。

隠し通路に敵の姿はなく、ジルたちが最後に行き着いたのは、巨大な地下室だった。倉庫がわりにでも作ったのか、壁棚があり燭台らしきものも隅に見えるが、どれも埃を被っている。いくつか小さな部屋も併設されていた。奥に階段があり、頭上に取っ手が見えた。

「ジル先生、この上、あかない。なんか塞がってるのかも」

ここから兵士たちが入ってこないようハディスが塞いだのだろう。前に出たジルがそっと手を触れると、それらしい魔力の反応が返ってきた。

「魔力圧を同じにしないと動かないやつだな。おそらく出口だ。わたしがあける」

「ジル先生、その前にここをひとまずの拠点にするのはどうでしょうか。今のところ追跡されている気配はないですし、ここは出入り口が頭上のと、あの扉だけです。数名交替で見張りを立てて、まず休みましょう」

負傷した生徒たちを気にするノインに、ジルは頷く。ルティーヤが声をあげた。

「なら少数で斥候を出そうよ。この上が校舎ならまず保健室と食堂で物を調達するんだ。でなきゃろくに休めもしないでしょ。先生、扉をあけるなら僕も行く。蒼竜学級、ついてこい」

「それなら俺が行く。校舎の構造は金竜学級のほうがよくわかってる」

「忍び込むのはうちのほうが得意だよ。それにもしここが攻められたとき、僕がいないほうがいいでしょ。怪我人だっているんだから」

むっとノインが口をへの字に曲げた。だが反論はできないらしい。ふんとルティーヤが勝ち誇ったように笑ってから、ジルを見て、限界まで眉をよせた。

「何だよ、先生。その顔」

「いやあ、青春だなって……若いって素晴らしいな」

「先生、僕らより年下でしょ。いいからあけて、さっさと行く」

ふてくされたルティーヤにせかされた。それも成長を感じられて嬉しい。

(なのに兄のほうはな……)

ちらりと脳裏をかすめるだけでも腹が立つなと思いながら、魔力圧を調整する。すうっと頭上の出口が浮かび上がり、自動的に開いた。

そっと顔を出したジルは誰もいないことを確認して、ルティーヤを含む数名の生徒たちと外に出る。運のいいことに、食堂厨房の床だった。元は食料庫か何かだったのかもしれない。すぐさまルティーヤがノインに声をかけ、見張りを立てて食堂から地下に水やら食料を運ぶ作業に取りかかる。

疲労困憊した生徒たちは喜んでいたが、窓の外から見える空は、定期的に竜が飛んで回っていた。敵の姿がこうもないのは、竜の攻撃に巻きこまれないためだろう。だが、ジルたちも見つかればどうなるかわからない。

ジルはそっと食堂の外を見る。するとルティーヤに肩をつかまれた。

「斥候にいくなら僕も行くから」

「俺も行きます、食料の運び込みは終わりました」

「いや、でもお前たちのどっちかは残らないと生徒たちが不安がるんじゃ――」

「「行く」」

そう言われても困る。そんなジルに、生徒たちが声をかけた。

「平気だよジル先生、さっきの魔術で出入り口を閉じといてくれたら、ソテー先生もくま先生もいるし」

「コケッ」

ソテーまで元気よく返事をされて、渋々ジルは頷いた。

「わかった、なら三人で行く。いいか、わたしの命令は絶対だからな」

「わかってるよ。保健室こっち」

「そっちは渡り廊下を通ることになる。二階にあがっておりるほうが人目につきません」

「は? 遠回りだろ、そっちは。時間をかけるほうが危険だってこともわかんないわけ?」

「喧嘩も禁止だ!」

ジルに言われてふたりともようやく黙った。

幸いにも敵には見つかることなく、保健室に辿り着いた。とりあえず持てるものすべてを持って、引き返す。ついでに周囲を確認することも忘れない。崩落して埋まってしまった廊下を横目に、ノインがつぶやく。

「あちこち壊れてる……竜が壊して回ったんでしょうか。学校がこんな……」

「ざまあみろだよ。そうだ僕、ここ退学してジル先生の作る学校に入ろうかな」

「えっジル先生。学校を作られるんですか?」

学校の有り様に暗い顔をしていたノインが目をぱちくりさせた。

「ああ。今のわたしの目標なんだ。まだ先の話になるけどな」

「なあ。僕、手伝ってあげようか。そうしたらすぐ叶うよ。次期ライカ大公が生徒になるなら媚びる奴は出てくるし。金も人脈も権力もおまかせあれってね」

ルティーヤの申し出に、医療品の類いを背負い込んだジルは笑う。

「申し出はありがたいがやめておく。生徒に借りを作るのはよくないしな」

「……じゃあ、生徒と先生じゃなくなれば、いいわけ?」

「それはまあ、そうだな。お前が大人になって助けてくれるっていうなら、ありがたい」

「……。あのさー先生、彼氏がいるってほんと?」

「なんだ、唐突に。女子から聞いたのか」

足を止めて振り返る。ルティーヤは斜めに視線を落として目を合わせない。ノインはなぜかうろたえたようにルティーヤとジルを見比べていた。

「そういえば勝ったら教える約束をしてたな。でも説明、難しいんだよなぁ……あまり言いふらしたいものでもないし、しかも現在進行形で相手とこじれてる……」

「……ひょっとして、政略的なやつとか? なら僕」

『あーあーあーあー、生徒諸君にお知らせでーす!』

遠い目になっていた背中に、現在進行形でこじれている相手の声が浴びせられた。