軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

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『分断されたな』

「ああ。でも支障はないよ。そのほうが戦いやすい」

まだ暗い空を見あげながら、ハディスはラーヴェに応じる。

ひとりきりだ。元々少ない人数だったが、綺麗にハディスだけリステアードたちと引き離された。囲まれていることには気づいていたが、おそらく最初からこうすることを見越して攻撃してきたのだろう。深夜から始まった押しては引く攻撃は、見事にハディスを孤立させた。

「ナターリエは? ローザはもう南国王の宮殿に着いてるはずだ」

『いんや、まだ連絡はないな。……それにしても、攻めてこないなぁ。サーヴェル家ならこう、もっとガッと食いついてくると思ってたんだが』

「そうだね。兵もサーヴェル家の私兵だけみたいだ。国軍も出てきてないし」

言いながら、ふと気づいた。もし、あちらがまだハディスがラーヴェ帝国側にローを通じて指示を出せることを知らないとしたら――ハディスさえ足止めすればラーヴェ帝国軍は動かないと考えているとすれば、辻褄は合う。

ただ、それはすなわち。

『黙ってくれてんだな、嬢ちゃん。まあ、ローザを見られたらどーせばれるけどな』

「……。僕は信じない。どうせ開戦が嫌だとかそんな理由だ」

『はいはい、わかってるよ。……変なことになってないといいけどなぁ、嬢ちゃん』

「へ、変なことってなんだ」

三角座りをしていたハディスの胸から、ラーヴェがするりと出た。

『だぁってさーお前を悪者にして、実家に情けをかけさせるってさ。竜妃の力を削ぐ作戦としてはあまりに感情論すぎないか? まー女神らしいっちゃらしいんだけど、なんかある気がするんだよな、それ以外にも。女神は散々竜妃に負けてるから、いい加減何か対策立ててもおかしくないだろ』

「……ジルは竜妃をやめたいだろうから、いいんじゃないか。なんでも」

『お前さあ、こういうとき変な意地はるのやめたほうがいいと思うぞ』

「変な意地なんか張ってない。僕は――」

言い返そうとした言葉が、詰まった。ちょうど気にしてしまったのも悪かったのだろう。同じことに気づいたラーヴェが、ハディスと同じ方角を見る。南の、遠く離れた方角だ。

竜妃の神器の気配が、消えた。

『……おい、ハディス……』

何かあったのか。それとも、なんらかの方法で竜妃の指輪をはずしてみせたのか。

「……気にしない。今、僕が気にすべきはそこじゃない」

『だけど、女神が嬢ちゃんになんかしたとしたら』

「竜妃の指輪があろうがなかろうが、ジルは僕が選んだ竜妃だ」

立ちあがったハディスに、ラーヴェが目を丸くしたあと、苦笑いした。

『……そうか。そうだな。うん、それでいいんだよ』

「なんだ、意味ありげに。いいから準備しろ。くるぞ」

『あー俺の出番か、ついに』

「兄上に居場所を知らせるにもちょうどいい。それに、義父上になるひとだ。礼儀は尽くす」

するりとラーヴェが右腕に巻き付いて、姿を変える。

銀色に輝く天剣を握ったその瞬間を待ち構えたように、空から魔力が降ってきた。夜空の星をすべて降らせたような膨大な量だ。

さすがサーヴェル家。

笑ったハディスは、地面を蹴って飛び上がる。そして背中に向けられた拳を、振り向きもせず天剣の柄で弾き返した。普通ならそれだけで地面に叩き落とされるところだが、相手は体勢も崩さず蹴りが飛んでくる。よけて距離を取ったところで、ラーヴェが呆れた声をあげた。

『天剣に素手で戦いを挑むか、普通!? いくら魔力があるからって、度胸ありすぎだろ』

「さすが、今の一撃をよけられるとは素晴らしい反射神経ですな」

にこやかな声に、ハディスは目を向ける。

屋敷に招いてくれたときと同じように、ビリー・サーヴェルはにこにこしていた。ただし、その肉体は、以前見たふくよかな紳士のものではない。

『じょ、嬢ちゃんの父親、だよな……? 体積変わってないか!?』

魔力による筋力の増強だ。骨格も変えているかもしれない。

「一応、確認したいのですが。ビリー・サーヴェル辺境伯で間違いないですか」

「そうですよ、竜帝陛下。初めましてではありません」

周囲の気配をさぐりながら、ハディスはビリーと向かい合う。口角があがった。

「おひとりで?」

「ええ。領民たちもきたがったのですがねえ。何せ竜帝です。誰がいくか選別も血で血を洗う争いになってしまって。年甲斐もなく我こそはと声をあげる者やら、血気盛んな若者やらで収集がつきません。私ひとりの歓待になってしまいますが、ご勘弁ください」

「お気遣いなく。あなたとぜひもう一度お話をしたかったので、十分です」

「はて、何かご用がありましたかな」

「本音で話せなかったでしょう、ここまで。ぜひおうかがいしたいことがあって」

にっこり笑って天剣の剣先を突きつけると、鍛え抜かれた上半身をさらしたビリーは隙のない構えをとった。それを見据えて、ハディスは大事な言葉を口にする。

「娘さんを僕にください」

「断る」

清々しいまでの即答だ。そのまま、互いの魔力が衝突した。