軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

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固まっているローに背後からジークとカミラが声をかける。

「ロー坊、いけ。いくしかない。陛下がやらかしたんだからお前にも責任はある」

「逃げたら余計怖いわよ、ほらファイト!」

「う、う、うぎゅ」

「わたしは別に、ローに怒るつもりはないぞ」

何やら勘違いしているらしい面々に、ジルは声をかける。そして嘆息した。

「よかった、無事で。心配したんだ。ナターリエ殿下、本当に有り難うございました。ローを守ってくださって」

「わ、私じゃないわ。むしろ、守ってもらったほうよ……」

「そうですか。すごいな、ロー。頑張った」

ローがナターリエのうしろからこっそり顔を出す。しゃがんでジルは手を伸ばした。

「おいで」

「うきゅー!」

感激したようにローがジルの胸に飛びこんでくる。ぎゅっと抱きしめると、さすがにほっとした。

だがしかし。

「それで、お前は陛下の心とどの程度つながってるんだ……?」

びくっとしたローがおそるおそるジルの腕の中で顔をあげる。

何を思ったか、両手を顎の下にそえて、きらきらしたまん丸い目で可愛く鳴いた。

「うきゅんっ☆」

「やっぱりわかってるな!? 陛下とお前、何かしら共有してるな!? いやラーヴェ様か!?」

「うきゅきゅきゅーーー!」

急いでローがナターリエのうしろに逃げ戻る。ナターリエがおろおろしながら声をあげた。

「ちょっと……! 何があったか知らないけど、こんな子どもの竜に!」

「ナターリエ殿下止めないでください、これは夫婦の問題です! ロー、逃げるな!」

「うきゅーーー!」

「――っいい加減になさい、竜妃と竜の王!!」

ナターリエの回りでぐるぐる回っていたジルとローは、びくっとその声に止まる。

肩を怒らせたナターリエがジルの鼻先に指を突きつける。

「いい、ただでさえうちは皇帝が幼女趣味なのよ! 威厳が皆無なの!」

「ごっ……誤解、があるかと。陛下は、決して幼女趣味では」

「あなた、自分の姿を鏡で見てご覧なさい! あれがこれと本気で結婚するなんて、どっからどう見ても幼女趣味でしょう!」

ぐうの音も出ない。ローまでしおらしく、ジルの横に並ぶ。

「なのに竜妃も竜の王もそんな威厳のなさ! 示しがつかないにもほどがある!」

「はい……」

「うきゅう……」

「なんなの、それで今からラーデアに行くとか! あそこは竜妃が治める土地なのよ、きちんとしなきゃ誰もあなたが竜妃だなんて信じないでしょ!」

「あっそれなんですけど詳細教えてください。竜妃が治めるってどういうことなんですか?」

尋ね返したジルに、ナターリエが固まり、周囲が静まりかえった。ああとカミラが額に指をあててつぶやく。

「そういえば誰もジルちゃんに説明してないのかしら。少なくともアタシはしてないわ」

「……俺もしてねぇな」

「……。知らないのに、なんで行こうとしたわけ?」

「竜妃の治める領地なら、わたしが軍を率いて鎮圧するのが本来の筋です。本当は陛下はそう命じたかったんじゃないかと。でも、できなかった。そうせよとヴィッセル皇太子殿下から無茶振りでもされればよかったんでしょうが……」

今思えばフェアラートの兵を叩きのめしたのは失敗だった。あれがなければ、ヴィッセルはジルにラーデアを鎮圧などできないだろうと甘く見て適当な軍を与えて軽率に追い出してくれたかもしれない。

「わたしはあまり策を講じるのは得意ではありません。ですが、ややこしい敵の策にはまったときにどうしたらいいかは知ってます。とにかく敵に嫌がらせをして煽る!!」

ヴィッセルはとにかくジルの動きを封じたがっていた。ハディスが帝城にいる間はジルも動きたくなかったが、ハディスがいなくなれば話は別だ。だから出てきてやった。その結果どうなってももう知ったことではない。ヴィッセルが喜んでいないならそれだけでいい。

力強く拳を握って断言したジルに、微妙な沈黙が広がる。こっそりカミラがジークに耳打ちする声が聞こえた。

「教えたのってあの狸坊や?」

「だろうな……」

「だからわたしは、ラーデアを鎮圧しにいこうと思ったんです。それだけです」

怒りとは別に、ハディスが出て行った理由もそこにあると思っている。ハディスは、ハディスが帝都にいる限り動けないジルを慮って自らラーデアに飛んだのだ。

(本当にパン屋の修行してる可能性もあるがな! 陛下だし!)

魔力は半分回復しているはずだが、その分また虚弱体質に戻り始めてもいるはずだ。ああもう心配だ、早く首輪をつけにもとい迎えにいかないといけない。

「じゃあ、竜妃の神器のことも何も知らないまま……?」

「竜妃の神器!?」

なんだ、その楽しそうなものは。ナターリエの言葉に目を輝かせたジルは叫ぶ。

「なんですかそれ! 竜妃ってわたしのってことですよね、わたしの神器!? 何それほしいです絶対!! あるんですか、ラーデアに!?」

遠くでジークが顔を背けた。

「あー……だから誰も知らせなかったんだな。無意識に本能が回避したわけだ」

「ひとりでラーデアに飛びこんでいきかねないものね、ジルちゃん」

「ほ……ほんとに知らないのね……」

ナターリエの確認にこくこく何度も頷く。

「そ、そんなに期待した目で見られても、顕現してるかどうか……封印もあるって話だし」

「封印! 本格的ですね! どんな封印ですか、魔術!?」

「そ、そうよ。それこそ女神クレイトスでも連れてこないと解けない魔術だって」

逆に言うなら、女神クレイトスなら解除できるのか。ふと思い出す。今、ラーデアにはクレイトス軍が向かっているという話ではなかったか。

(まさか――クレイトス軍の本当の狙いは、ラーデアじゃなく竜妃の神器か!?)

「そうか、ひょっとして陛下はそれも考慮してラーデアにパン屋の修業に……!?」

「ちょっと待ってパン屋って何!?」

「どうでもいいです、でもやっぱりラーデアで正解です!」

拳を振りあげてジルは叫ぶ。

「わたしの神器をゲットして、ついでに陛下を回収して、適当に鎮圧しましょう!」

「陛下がついでになったわよ。鎮圧に至ってはもう名ばかりね」

「隊長だからな」

「うっきゅう……」

やれやれ、というようにローが嘆息する。したり顔のそのうしろから、ジルは笑顔でゆっくりと言った。

「なお、神器は当然、陛下を締め上げるために使う」

「うぎゅっ!?」

「で、賢いローはわたしが何をしてほしいかわかるか?」

おそるおそる下からジルの顔を竜の王がうかがう。

そう、ローは竜の王だ。ハディスと同じ、黒と金の色を持っている。

「今、帝都の竜は陛下の命令で動けなくなっている」

「う」

「でもお前ならわたしたちをちゃんと、ラーデアまで竜で運べるんじゃないか?」

「ぎゅ」

「そうしたらわたし、嬉しくってローにおはようとおやすみのキスをしちゃうんだけどな」

「きゅーーーーーーーーー!」

そしてジルに甘やかされるとすぐ転ぶハディスの心である。