軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

700 マイルの休日 2

「じゃあ、早速、護衛依頼を出してきますね!

上手く行けば、私がいなくても出漁できるようになるかもしれませんよ!」

「「「「「「おおおおおおお〜〜っっ!!」」」」」」

* *

「着きました……」

漁村から町まで、みんなの足で2~3時間の距離である。マイルひとりであれば、1時間もかからない。

そして、そのままハンターギルド支部へと向かう、マイル。

「こんにちは~! お久し振りです!」

ガタガタッ!

職員達も飲食コーナーのハンター達も、反射的に、皆が一斉に立ち上がった。

「「「「「「 海棲魔物(シーサーペント) を狩っちゃう少女隊だあああァッッ!!」」」」」」

* *

「……では、受注ではなく、依頼を出したいと?」

「はい! あ、私からの依頼じゃなくて、漁村の人達からの依頼です。

私の方が足が速いので、代理で来ました!」

マイルと受付嬢の会話を、全神経を耳に集中して聞いていた職員とハンター達は、それを聞いて、ふうっと身体の力を抜いた。

漁村からの依頼であれば、大したものではない。Dランク辺りの者が生活費稼ぎと経験のために受けるような依頼である。

しかし、そういう依頼も、若手にとっては生活のために、そして成長のために必要な、大事な仕事である。

それに、あの漁村はこの町に安くて新鮮な魚介類を提供してくれる、大事な村である。

更に、この町のハンターには、あの村の出身者が含まれている。

なので、ベテランハンターはマイル達の話から興味を失ったが、DランクからCランク下位辺りの者達は、引き続き耳をそばだてて話を聞いていた。

「では、御依頼の内容をお願いします」

「はい。明後日、漁村にて。拘束期間1日、夜明け前から日没過ぎまで。前夜と当日の夜は、村で無料宿泊。食事も付きます。前日に、少し事前訓練があります。

人数、5~6人。腕が良いなら、4人でも可。

依頼料、ひとりあたり小金貨5枚……」

Cランク中堅から上位の者達も、再び興味を持って、マイルと受付嬢の会話に耳を澄ませた。

ハンターの足であれば2時間も掛からずに行ける、大した危険のない漁村での仕事で、ひとりあたり1日 小金貨5枚(5万円相当) ……。

こんな美味しい仕事は、滅多にない。これならば、Cランクどころか、Bランクの者でも受注を希望しそうである。

「そして依頼内容は、外洋に出る漁船に乗って、襲い来る 海棲魔物(シーサーペント) 達を 片(かた) っ 端(ぱし) から退治して、獲物として持ち帰ることです」

「「「「「「えええええええええ〜〜っっ!!」」」」」」

ギルド内にいる者達が総立ちになって叫んだが、……まぁ、当たり前であろう……。

「あ、あああ、そ、そそそ、その……」

「やっ、やめろ! 二度も幸運が続くものか!!」

「……死ぬ! 死んでしまう!!」

まともに喋れない受付嬢と、自殺行為の馬鹿げた依頼に対して否定的な言葉を吐く、ハンター達。

「……嬢ちゃん達が、死を覚悟した年寄り達と共に一世一代の賭けに出て、見事幸運を掴み取ったことは知っている。あれで荒稼ぎしたってこともな……。

だが! たまたま一度勝てたからといって、賭け事を続ければ、すぐに身ぐるみ剥がされちまうというのが相場だ。

そして支払わされるのは、金だけじゃなくて、 自分達の命(・・・・・) だぜ……。

前回はなぜか船底を食い破られなかったから生きて帰れたみたいだが、普通は船を沈められるから、いくら腕の立つヤツが乗っていたって、意味がねぇよ。

悪いことは言わねぇ、自分の命を大事にして、……そして他者を自殺に巻き込むな!!」

前回の『外洋殴り込み船』のことを知っている年配のハンターの指摘に、うんうんと頷く、職員やハンター達。

しかし……。

「あ、船は 海棲魔物(シーサーペント) に食い破られることのない鋼鉄製で、戦闘は甲板上に乗り上げてくる 海棲魔物(シーサーペント) を漁師さん達を護りながら斬りまくるだけですから、Cランク上位くらいの人なら4~5人いれば大丈夫かと……。

参加する漁師さん達は、怪我をしようが死のうが文句は言わない、という方達だけですから、もし護りきれなくても、ペナルティはありません。今回は私も付いていますから、あまり心配はありませんし……。

今回受けていただいた方達には、今後、私抜きで受注していただくためのお試し、練習だと思ってもらえれば……」

「……」

「「「…………」」」

「「「「「「………………」」」」」」

広がる静寂。

……そして、数秒後……。

「俺達が受ける!」

パーティメンバー達とアイコンタクトで意思確認を行ったらしきひとりの男性が、そう声を上げた。

30代前半の、がっしりとした体格の男性。パーティリーダーらしく、その装備から、前衛の剣士であろうと思われる。

メンバーは、5人のようである。

「アレは、運でどうにかなるようなもんじゃねぇ。

……つまり、前回のアレは、嬢ちゃん達の実力によるもの、ってこった。

そしてこんな話を持ち込むってこたぁ、嬢ちゃん達にとっちゃあ、あれくらい大したことじゃねえってことだよな?

そして、その役割を他のハンターに任せて、自分達はさっさと次の仕事に移りたい、っていう程度の、 大したことのない仕事(・・・・・・・・・・) 、だと……。

大漁確実、そして嬢ちゃんの馬鹿げた容量の収納魔法。

……そういうコトだよな?」

「ご名答です!」

にっこりと微笑んで、そう答えるマイル。

「……それは、うちが受ける!」

「いや、うちが!」

思ったより危険が少ないのではないかと気付き、他のパーティも受注を名乗り出たが……。

「遅いぜ! 既に俺達が受注済みだ!」

最初に申し出た男性が、そう言ってせせら笑う。

しかし……。

「いや、まだ嬢ちゃんの依頼は受け付けすらされていねぇじゃねえか。

正式に受け付けられて、依頼票が作られて、ボードに貼り出される。受注は、それからだろうがよ。

……つまり、おめぇのさっきの言葉は、正式に受注者募集が始まる前のフライングで、無効だってことだ。まだ、受注者は決まってねぇよ!」

「……なっ、ななな……」

確かに、指摘された通りである。

それを理解してしまい、焦る男性。

余計なことを言わず、依頼票が貼り出された瞬間に引き剥がして、黙って受注すれば良かったのに……。

自分に見る目があることを自慢しようとしたために、こんなことになってしまった。

……自業自得である。

「いや、しかし優先権は俺に……。そっ、そうだよな! なっ!!」

受付嬢にそう言って懇願しているが、受付嬢はただ困ったような顔をしているだけである。

「そっ、そんなあぁ……」

少し揉めているが、求められている能力さえあれば、マイルと村人達にとっては何の問題もない。

なので、受注希望者殺到の引き金となってくれた男にちょっぴり感謝する、マイルであった……。