軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

528 戦いの肖像 1

「……ん?」

薄暗い中、階段を下りていたマイルが、ふと怪訝そうな顔をして立ち止まった。

「どうかしたの?」

「あ、いえ、ちょっと紅茶の香りがしたような気がして……」

「さっき4人で飲んだばかりじゃないの。あんた、目と耳だけじゃなくて、鼻もいいから……。

さっさと下りなさい!」

レーナに急かされて、再び階段を下り始めたマイル。

そして、1階の食堂へと進み……。

ふわぁ……

今度は、はっきりと分かる紅茶の香りに包まれた。

そして、暗闇でもある程度見えるマイルの眼に、その姿が映った。

「マ……、マルセラさん……。それに、モニカさん、オリアーナさん……。

ど、どうしてここに……」

そう言って絶句するマイルに、テーブル席に着き紅茶のカップを手にしたマルセラが、少し怒ったような、悪戯っぽい顔で答えた。

「……どうして? アデルさん、あなたまさか、アデルさんの一世一代の晴れ舞台に、親友であるこの私達が駆け付けないなどと、まさかそんなことを考えていたりはなさいませんわよね?」

そして、モニカとオリアーナがそれに続いた。

「かぶりつきの特等席で、じっくりと拝見させてもらいますよっ!」

「それに、『アスカム女子爵を、無事連れ帰る』というのが、私達が王女殿下から受けた任務ですからね」

「……あは。あはは……」

それを聞いて、泣き笑いのマイル。

「誰かさんのせいで、またまた威力がおかしなことになった私達の魔法が、お役に立つでしょう。

さ、参りましょう……」

「自爆エンドは駄目ですよっ!!」

そういえば、エクランド学園時代にこの フカシ話(おはなし) もしたなぁ、と思い出したマイル。

マイルを先頭に、その両脇にレーナとマルセラ。それに続き、他のメンバー達。

マイルがドアノブを握り、そっとドアを押し開けて外に出ると……。

「じゃあ、行きましょうか!」

6人の女性達が待ち構えていた。

「テリュシアさん……、と、『女神のしもべ』の皆さん……」

「神の御使い様が戦いに行かれるというのに、『女神のしもべ』を名乗る私達が一緒に戦わないわけにはいかないでしょう?」

そんなことを言うテリュシアに、顔を赤くして、何だか様子がおかしいレーナ。

「……お姉様……」

(((あ~……)))

マイル達は、だいたい察した。

「「「誰よ、この人!!」」」

そして、ツンデレーナのデレを初めて見たマルセラ達、呆然。

「ま、後輩達が世界のために命を張ろうっていうのに、手伝わずに放置して死なせたなんて既成事実作ったら、私達の評判が下がるからね!」

「また、あなたはそんな言い方をして……」

ウィリーヌを 窘(たしな) める、フィリー。

そして、リートリアは……。

「あはは! でも、成長した私の姿をマイルさん達に見ていただく機会は逃せませんよ!

お父様は、泣いて引き留めようとなさいましたけど……」

((((あ~……))))

そりゃそうである。

そこで娘を引き留めないような父親はいない。

むしろ、それを振り切って来られた方が不思議である。

剣士のウィリーヌと槍士のフィリー、そしてオーラ男爵家の娘、魔法金砕棒使いのリートリアの言葉に、少し呆れながらも、微笑むマイル達。

今更、『死地に赴くのは、私達だけで充分です!』とか、『皆さんは、すぐに避難してください!』とか言う気はない。

そんな言葉で逃げ出すくらいなら、始めからこんなところへ来るはずがない。

そのような言葉を掛けることは、勇気ある彼女達に対する侮辱である。

それに、マイル達は、死ぬ気はない。

生きていれば、また魔物との戦いに戻ることも、籠城している城塞都市に救援に向かうこともできる。

……でも、死ねばそれまでである。

他の戦場に赴くことも、多くの人々を救うこともできなくなる。

最低でも、Bランク以上の魔物は通さない。

しかし、死ぬつもりはない。

到底両立させることなどできそうにないことであるが、それでも、どちらも諦めるつもりはない。

……心強い仲間達が共に戦ってくれるなら、不安はない。

13人に増えた、女性ばかりの集団が、未だ薄暗い大通りを進む。

(この場面のBGMは、『時の 異邦人(エトランゼ) 』挿入歌の、『真夜中のメリーゴーランド』ですよっ!

……いえ、『わんわん忠臣蔵』の、『わんわんマーチ』もアリかも……)

そして、どんな時でも、わけのわからないことを考えているマイル。

「……よォ。相変わらず、予想の斜め上を行きやがるな、お前達は……。

面白そうなことをやる時には、声を掛けろって言っただろうが!」

「『ミスリルの咆哮』の皆さん……」

「あはは……」

もはや、驚くことのないマイル達。

そして、歩き続ける『赤き誓い』と仲間達。

「……俺達、この戦いが終わったら、幼女だけの孤児院を作るんだ……」

「『邪神の理想郷』と、『炎の友情』の皆さん……」

「何という盛大な死亡フラグ!」

「死ねばいいのよ……」

「そして、『炎の友情』の皆さんは、魔物に殴り殺されないように気を付けてくださいね……」

「あなたは、私を楽しませてくれると思っていたわよ。

退屈とは程遠い、スリルと興奮に満ちた日々!

やはり、私の眼に狂いはなかったわ!!」

「あなたとは意見が合わないけれど、その点に関しては、まあ、同意するわね」

「クーレレイア博士! エートゥルーさんに、シャラリルさん!!」

大通りの各所で、 軒先(のきさき) に腰掛けて。

そして、交差する道から現れて。

次々とマイル達に合流する、懐かしい顔触れ。

「よう、相変わらず、ぶっ飛んだことやってやがるな」

「おかげさまで、メンバーが増えて順調にやってるよ!」

「『ドラゴンブレス』と『炎狼』の皆さん!」

アムロスの盗賊退治の時、商隊の護衛任務を合同受注した2パーティである。

「真祖様!」

「え?」

今度は、頭上から声がした。

「あ……、妖精の村の……」

「ミーレリナです! 村のみんなも来ています。伝令役として、皆さんの連携のお役に立ちますよっ!」

40人近くに膨れあがった、対異次元世界侵入者迎撃隊。

こっちの戦力が10倍近くになったならば、色々とやり方もある。

Bランク以上の魔物を一掃すれば、いったん退いて仕切り直してもいい。

遅滞防御で時間を稼ぎ、合同軍がオーブラム王国から戻ってくるのを待つということも……。

……生き残る。

生きて、平凡で幸せな人生を歩む。

「皆さん、行きますよっ! そして、生きて戻ります!」

「「「「「「おおっ!!」」」」」」